めぐる季節からのラブレター
日捲 空
さくら
薄桃色が舞う季節に
僕はキミと出会った。
ハート型の花びらが
キミの長い髪を滑り落ちた。
新しく同級生になった仲間と
縫い目の綺麗な制服
新しい生活を歩き始め
キミはキラキラ輝いていた。
薄桃色が緑になった頃
横にいる友達も定まってきた。
キミはあの子と仲が良いんだね。
教室でも登下校でも
キミはあの子と一緒だ。
おしゃべりしている笑顔がまぶしかった。
太陽がジンジンと照りつけるようになると
キミとは会えない時期がやってきた。
僕はキミが笑っているか太陽に聞きながら
会える日を楽しみに待った。
長い休みが終わると
キミは運動場でよく見かけるようになった。
その間に暑さは落ち着き
暖かな日差しに見守られて
キミはゴールテープを切った。
枝から葉が離れ
コンクリートの地面に茶色の絨毯ができた。
キミと話していたのはあの子じゃなくて
あの人だった。
その日からキミは幸せそうな笑顔を浮かべて
あの人と帰るようになった。
あの子といる時は楽しそうな表情で
あの人といる時は豊かな表情だった。
怒ったり泣いたり笑ったり
そんなキミを見るのが好きだった。
花が葉に変わり黄緑の虫が付く頃
キミは僕の前であの子と一緒に泣いていた。
キミと抱き合って指を絡めて約束をして
あの子はここから去っていった。
キミは寂しそうな顔から穏やかな顔になり
別の子と笑い合うようになった。
あの人がそばにいたのも
キミにとっては大きかったのかもしれない。
たまにキミは華やかな柄の封筒を持って
僕の横を通り抜けて行った。
教室で本を見ながら
キミは真剣な目をしていた。
色のついた下敷きでノートを見たり
単語帳をめくりながら歩く時もあった。
ここを出ていく準備だね。
僕も準備をしよう。
出会った時と同じ薄桃色で
キミを送り出せるように。
キミと出会って3回目の春がやってきた。
ひとまわり大きくなったキミは
あの時キラキラしていた仲間と
笑いながら泣いている。
その涙の理由を僕は知ってる。
もうキミはここには来ない。
さぁ、新しい季節がやってくる。
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