セブンスブリッツ ~二列目の騎士~

@razor

下位争い1

「二列目ですか?」


「そうだ」


「嫌ですよ。今までずっと一列目でやってきたんですよ」


「ああ、知ってる」


コイツは、ここまで、ずっと一列目のアタッカー、所謂アサルト呼ばれるストライカーとしてやってきた。昨シーズンも一つ下のグレードだったが、優良選手として表彰されている。


「それに、何の実績もない監督の指示なんて聞けません」


「悪いが、このグレードではお前の実績もないと同じようなものだぞ」


「ぐっ」


痛いところを突いたので、苦々しそうに黙り込んだ。実際、コイツの今シーズンの出来はボロボロだった。好成績でこのグレードに上がってきて、先人たちの洗礼を受ける。よくある話だ。


「あと俺は本来、技術スタッフだ。一応監督の資格をもってるからチーム事情により兼任しているだけだ。実績なんてあるわけないだろうが」


俺はデバイスチューナーであって、監督ではない。就職に有利だと思って資格ライセンスを取っておいたに過ぎない。こういうやつは結構いる。俺が特別なわけでもない。チームにはそれぞれ様々な問題がある。素人の俺が監督をやることになったり、チームに不要と切られたりと。


「まぁ、どうしてもというなら紹介するが、正直ベンチウォーマーかグレードCのチームぐらいだぞ。受け入れてくれるのは」


残酷なことだがしっかりと伝える。うちのチームへの移籍も出場機会を求めた結果なのだから。正直、今のレベルではうちのエースが復帰すればコイツの居場所はなくなる。上位チームに比べ選手層が厚くないから、ローテーションなり調子の良し悪しで完全に出番がなくなることはないだろうが、ベストメンバーを考えたらおそらく落選する。実際、うちに来る前は、後半戦に入ってからほとんど試合に出ていなかった。


「ああ、お前の古巣はどうだ? あそこは、移籍が決まってからも熱心に誘ってるぞ」


「私じゃ、このグレードでは通用しないってことですか?」


「ああ、通用してないのは痛感してるだろ」


「ううっ、そんなはずがないんです」


「認めろ。お前程度の速度と魔力じゃ、グレードBでは通用しない」


才能がないわけではない。技術もしっかりあるし、状況判断も悪くない。ただ、素の馬力が弱い。単純に力押しされると押し負ける。グレードCならセンスと技術で圧倒出来てたが、グレードBではそうはいかない。そういうやつらが鎬を削っている世界だ。本当に才能がある奴なら一期目から駆け上がっていく、コイツの同期で昨シーズン、グレードCの最優秀選手に選ばれたミューゼみたいに。アレは、来シーズンにはグレードAに上がっているだろうな。


「でも、リラには測定値で勝ってます」


「アホか、そういうことはせめて一対一で勝ち越してから言え」


今は、だいたい3対7ぐらいか、ちょっと前までは4対6ぐらいだったが大分差が付いてきたな。実際、能力値的にはコイツの方がリラより高い。でも、それだけだ。だから大きく負け越している。


「次こそは、ちゃんと」


「どっちにしろ、お前はしばらくお休み」


「えっ?」


「ケガでパフォーマンスが落ちてる。痛いの我慢すれば出来てるとか勘違いしてるが、チームに迷惑だ」


「なんで?」


すごい、困惑した顔でこっちを見ている。これは、もしかして。


「ばれてないとでも?」


さすがにそれは、俺の事見くびり過ぎだろ。監督業に興味なんてないからどうでもいいが、デバイスチューナーとしては、それなりと自負しているぞ。選手の体調ぐらいは見てればだいたいわかる。


「ということで、お前は明日病院な」


「わ、わかりました」


「まあ、お前の起用法については、また今度、ノルイエも交えてだな」


「はい、失礼します」


意気消沈して部屋を出ていくエンリ・ノーラン。彼女は、グレードCでの活躍を評価され、鳴り物入りでグレードB上位のチェスカトットに加入するも戦果振るわず、シーズン半ばで放出された。グレードCのチームからは引く手数多だったが、グレードBに拘りを見せた彼女はグレードBで唯一手を挙げた我らがコルクゥスターに移籍してきた。しかし、こちらでも戦果は振るわず、チームも安定の下位争いに突入している。

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