濁流

橋の上、台風が過ぎた夕方、あふれるほどにかさを増した茶色く濁った川の流れを見る。もう少しで危険水位。

ここに落ちたらひとたまりもない。絶望が堰を切って流れ来る。

ごうごうと、

複雑な無数の渦を作りながら。

見ていると、上流から、赤い小さい何かが流れてくる。思わず目で追いかける。

橋の下に入ってしまう瞬間、それを確かに見た。

薔薇。一輪の赤い薔薇。

急いで反対側の欄干から覗き込んだが、どこまでも濁流が続いているだけだった。

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