第262話 二人の出会い【クエスト【火山艇空編①】】

 「さて、火山艇空にむかうのじゃが、どの方法で向かうかのう~」


 「えっと、馬車じゃ駄目なんですか?」


 「馬車でも良いのじゃが、途中から火山灰が酷くて、馬で行く場合行ける所が、山の三分の一くらいまでしかいけんのでな?」


 「その場合は、歩いて登ると言う事ですか?」


 「ロリーよ?」


 「はい、何ですか?」


 「火山艇空に、向かおうとしておったが、どのように行こうと思ったんじゃ?」


 「そうですね……」


 「馬車で、行けると思ってましたし、流石に身体を強化しても限界がありますから、馬を借りて乗っていくか、神浪様に乗せてもらって行こうかとも思ってました」


 「お、お主……」


 「神浪と知合いなのか?」


 「はい、小さい頃に出会ってから十年程の付き合いですね」


 「なるほど……」


 だからあ奴は、孫が出来たような話をしとったんじゃな? 奴の旅の話で出てくる少女は、ロリーだったとは、世の中狭いものじゃな……」


 「ダイト様どうしました?」


 「いや、何でもないなら神浪でいくか?」


 「そうですね、神浪様に乗せてもらえれば、行きたい場所までいけそうですしね」


 「ちょっとお待ちください、この手振りの鐘を鳴らしますね!」


 森の中で、鐘を鳴らす少女……


 チリィ~ン チリィ~ン チリィ~ン チリィ~ン チリィ~ン



 何処から大地を蹴って走って来る音が聞こえてくる。


 「どうした何かあったのか?」


 「ロリーキャメロンよ?」


 「神浪様お久しぶりです」


 「相変わらず良い笑顔じゃ」


 「すみません御呼びしてしまい」


 「かまわんよ、儂とお主の長年の仲じゃないか、それに儂もお主の調合で、助けられているから大丈夫じゃよ?」


 「いつもの薬等を分けてくれるから仲間達が喜んでおるぞ?」


 「そうでしたか、良かったですお役にたてて……」


 「それで、今回何処かに行くのか?」


 「火山艇空まで行きたいのですが、宜しいですか?」


 「討伐でも行くのか、お主だと厳しいぞ?」


 「月華草(るなかそう)を取りに行こうと思ってます」


 「なるほど、漢方や薬草に使われている物じゃな?」


 「そうみたいですね」


 「最近どんなものなのか知ったので、びっくりしてます」


 「そうか、色々と勉強して、良い薬剤魔法師にでもなれると良いの~」


 「頑張ります!」


 「それで、出発は、これからで良いのか?」


 「はい、私ともう一人乗せて頂けたら問題ないです」


 「お主に、知合いが出来たと言う事が、良い話じゃな」


 「それで、どんな娘じゃ?」


 「穂樺(すいか)久々じゃのう~」


 「…………」


 「ま、まさか……」


 「穂樺様?」


 「神浪と聞いてまさかと思ったが、やはりお主だったか……」


 「フォルト殿!」


 「お、お久しぶりですね……」


 「穂樺よ、人と話す時は、きちんと顔を見て話すようにと教えたはずじゃが?」


 「お二人ともお知り合いですか?」


 「こいつの親父と知合い繋がりでな、知ってると言った方が早いかな?」


 「それに、変化して、親父のようにしておるが、元に戻って、接してもこの娘なら問題ないじゃろう?」


 「えっと、何の話をしていますか?」


 二人の会話に、上手くは入れずただ耳を傾けるだけの事をしていたが、気になって口にだしてしまった。


 「この神浪は、穂樺と言って、皇楼(おうろう)と言う親父が居て、その娘にあたる神浪なんじゃよ?」


 「それに、先ほど十年と言っていたが、多分七年だと思うぞ?」


 「その後三年間は、穂樺がロリーと会っていたはずじゃよ?」


 「フォルト殿の言う通りですね、親父は、最近歳で、昔以上に動けなくなってますから……」


 「えっと、それって、病気とかじゃないですよね?」


 「病気だったら、真っ先に、ロリーキャメロンを連れて行くかな?」


 「連れて行かないと言う事は、お元気なんですね……良かったです」


 「それより、元の姿に戻って、本当の姿を見せてやると良い」


 「そうですね、ばれてしまったなら仕方ないですね」


 ゆっくりと、青白い煙が辺りを覆うと穂樺が見えなくなっていく…… そこから電流の様な物が中心に落下するように、光り出して、大きな爆風が噴くと生暖かい風が頬にあたる。


 その姿は、金色に染まり、足には、靴下の様に、白くなっており、背中には、一本の白銀の線が引かれている。


 「お待たせしました」


 「やっぱり、穂樺は、その状態が一番良い」


 「フォルト殿は、本当に心から褒めますね」


 「お前は、親父殿と違うのだからそれでよいのじゃよ?」


 「そうですね」


 「ロリーキャメロン様これが私の本当の姿です」


 「今まで、だますような事をしてしまって、すみませんでした」


 神浪様が、私に頭を下げている……


 「あ、頭上げて下さい!」


 「今までお世話になってる方に、そんな顔をされたくありません!」


 「いつもの様に、接してくださると嬉しいです」


 少し赤らみが入った顔で、うつむきながら答えるロリーキャメロンだった。


 「私の事は、ロリーで構いません」


 「穂樺さんて、呼んでもいいですか?」


 「儂……じゃなくて、私の事も穂樺で、構わないからそうよんでね」


 「はい、これからも宜しくです」


 二人は、抱き合って、新たな絆を結ぶのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る