本で戦う異世界戦線

夢嵐

三人の目覚め。

序章 ~扉~

第1話

この世界は残酷だ。大人は皆、「永久の平和のために!」とか言って戦争に行き死んでいく。

力無き女、子供は攫われて、奴隷にされたりする。運良く奴隷にならなかった者達も結局は飢餓や戦争に巻き込まれて死んでしまう。

俺は妊娠している妻を置いて戦場ここに来た。その選択は間違っていたのかもしれない。さっき敵の怪鳥に毒を吐かれた。全身が麻痺していき、冷たくなって、感覚がなくなってきた。ああ、もうすぐ死ぬのか……あいつ等が平気だと良いがな。

……敵兵が来てしまった。もう何もできない。ハハッ、もう一度会いたかったなぁ。


「ッグゥ!?ゲハァ……ゥッ!」


俺は、俺の役割を終えたのかな。悪あがきとすれば、神頼みだ。

俺が最後の力を振り絞って、手をむき出しの心臓の前で合わせたその時、俺の生涯が終わった。


~少年達の戦いの始まり~

俺が母親に産まれてから早くも12年が経った。父親は東西戦争に行って戻って来ていないらしい。何故らしい、と言ったかというとだ。俺が産まれる前に戦争に出兵したからだ。俺は名前しか知らないから、どんな人間か気になったこともあった。でも今は興味が湧かなくなった。母親は毎日のように俺に惚気話を聞かされているが、心底どうでもいい。だが毎日聞いてやらないといけない。母親が壊れてしまう。

そんな事を思っていると、二人の男女が歩いてきた。

「よう、またお前らか」

「お前らって。赤の他人じゃ無いんだから、僕たちは親友で幼馴染み。でしょ?」

少し日焼けしている肌を見せる、白色でショートカットの髪型の少年は赤桐 龍孤あかぎり りゅうこ。自称俺の親友で幼馴染み、らしい。

「そーだよ。いつもボーッと空を見て、考え事なんかしないで私たちと遊ぼ?」

シミ一つ無い白い肌を大胆に出し、胸がまあまあ程度の少女。綺麗な黒(青混じり)の髪で、腰近くまでの髪をポニーテールにしているのは蒼井 春香あおい はるか。こいつも自称(以下略)である。

「で、遊ぶっても何するんだ?また鬼ごっこか、それともかくれんぼか?」

俺的にはもっと遺跡探索とかがしたいんだが。

「う~ん、じゃあ前に見た遺跡に行ってみる?案外面白いかも」

「よし、それで決まり!じゃあすぐ行こう!」

「ちょっと待て!」

「「え、何で?」」

はぁー、こいつら分かってねぇな。ここはちょいと教えてしんぜよう。

「まず、遺跡に行くなら準備が必要だ。最低でも水、食料、武具、地図が必要だな。出発は明日だ。準備にも時間が必要だからな」

「了解です」

「なんかよく分からないけど分かった!」

「おう……じゃあ、また明日。午前三時五丸分にⅨ号寒帯広場集合で」

「「オッケー!」」

今日はよく寝よう。明日の準備も早く済ませないとな。

さあ、明日が楽しみだ。

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