徒然なるままに

@si-la0

第1話


匿名で呟きができるネットサービスを利用している。


真っ白い画面に、つらつらと自分の言葉が並んでいく感覚が、なんとも言えず、すっきりする。

顔も年齢も性別も身分差も超えて、いろんな言葉が見えるのも、新鮮で面白い。




私は、「さなえ」というペンネームで、その日あったことを加工したり、書き綴ったりしていた。


8月25日

さなえ:朝早く起きた。まだ日の出前。

静かな部屋に、時計の秒針の音が満ちている。

ベランダに出て、胸いっぱいに、まだひんやりした空気を吸い込んだ。

あー、気持ちいい。

これから朝練、頑張るぞー!


10月17日

さなえ:夕方に通学路からちょっと外れて、銀杏並木を見にいった。

夕日に照らされて、銀杏の葉が、一層眩しく輝いていた。とっても綺麗だった。

時折強い風に吹かれて舞い散っていくのが、なんだか切なかった。

…また来ちゃおうかな…。


12月11日

さなえ:今日の月と金星は綺麗だったなぁ…

寒空の下、ずっと見惚れていた。

あんまり長くいたから、体が冷え切っていて、

お風呂のお湯が身に沁みた。




…こんな感じだ。我ながら少し恥ずかしい。


でも、時々コメントや、お気に入りボタンを押してもらえたりするのが嬉しくて、"さなえ"になりきって、日々のいろんな小さなことを、夢中で、書き綴った。



ある時から、芙美(ふみ)というペンネームの人からコメントをよく、もらうようになった。


血圧が安定しない病気で、学校にあまり行けず、長い間、病院で過ごしているらしかった。



私の拙い、何気ない文章を、

芙美はよく、「美しい」「楽しい」と褒めてくれた。

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