酔生夢死

ガジュマル

第1話

 不惑も半ばを過ぎたというのに惑ってばかりの日々。

 思い返せば、大半の時間を酒と酒にからんだ場所で過ごしてきた。

 二日酔いは数知れず。

 記憶をなくし、朝起きると路上に転がっている自分を見つけることも数知れず。

 救急車に血だらけで乗った事もあった。

「俺、いいから。本当に必要な人を……」

 だが救急隊員は、結局俺を病院まで運んでくれた。

 怒り、憐れみ、職業的責任、そういったものを含んだ隊員の瞳が今でも忘れられない。

 分かっている。

 酔っぱらい特有の被害妄想だ。

 ウマレテゴメンナサイ。

 本当にろくでもない人生。


「お前は人間が犯し得る最も恐ろしい犯罪を犯したのだ。では改めて起訴する。人生を無駄にした罪で」


 俺は映画パピヨンの主人公と同じように視線を下に落として呟く。


「有罪だ」


 だがもしも最終意見陳述が許されるなら、遺しておきたい言葉がある。

 数編の短いエピソードを。


 ゲラゲラゲラ。


 深淵の底から嘲笑の声が聞こえる

 狂ったソクラテスの声だ。


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