Dolphin kicks

星丸

第1話 日本も住みずらくなりました。

夜道を和服姿の幼い女の子がとぼとぼ歩いている…

この女の子の名前は[百孤ももこ]という。

焦燥感を漂わせながら何かを探している。

時間は夜の22時、幼い女の子が出歩く時間ではない。

そこは閑静な住宅街。百孤はどうやら建物を探してキョロキョロしている。

百孤「どうしよう(ノ_<。)もう時間が無い…」

泣き出しそうになりながらも百孤は早足になりながら探す。


百孤「あ…♪あった(*´ω`*)やっと見つけた」


百孤が探していたのは、築20年以上経っているであろう古ぼけたアパートだった。


百孤「優しい人だといいなぁ(///ω///)♪」


二階建ておんぼろアパート

[草利荘くさりそう]の一階角部屋の前で軽く深呼吸して、ノックもせずにおもむろにドアを開け部屋に入っていく。


その部屋の住人はビール片手にテレビを見ている。

百孤は住人の後ろにちょこんと座る。

百孤「あ、あの…すいません、今日一晩だけこの部屋に憑いてもいいですか?」


男は無反応でテレビを見ている。


百孤「あの、すいません!」

やはりまだ無反応である。

百孤「じゃ、勝手に自己紹介しますね?」

「あたし、座敷わらしの百孤っていいます。

最近は古い日本家屋が少なくなってきてて、今どきの座敷わらしは、マンションやアパートにも憑かなきゃ駄目みたいなんです!」


男(……勝手に入ってきて、なんか言ってるゾ……?)(恐いわ、何この娘?こんな時間に……まだ幼児じゃないの?)


百孤「あの?聞いてます?ひょっとしてあたしが見えてないのかなぁ……?今日は満月だから、普段見えない人でも多少は見えるハズなんだけどな…(ノ_<。)」

男(……なんだ?見えるとか見えないとか、だいたいドア開けて入ってきたじゃねえか)

百孤「まあいいや、続けるね?今日一晩だけでいいんです!この部屋に憑く事を許可してください!」


男はテレビを見ながら、聞こえてない素振りでテーブルの上のパンに手を伸ばして食べる。

百孤はしびれを切らして、男の目の前に出た。百孤「あの………」

男はビックリして食べてるパンを吹き出す。

ぶばっ!!!百孤「うひゃあ」

百孤の顔に直撃である。

百孤「や〜〜〜ん、べとべとぉ〜〜」

男はしまったと思い、タオルを差し出す。

男「……ほい。」百孤「あ、有り難うございます」百孤「………!!」

百孤「あの…もしかして見えてます?」

男「あぁ。」


百孤「酷い〜〜〜〜〜!!なんで無視すんですかぁずっと呼んでるのにぃぃ」

百孤は激昂しながら男に馬乗りで掴み掛かる。

男「いや、ほっとけば帰ると思ったし、誰なんだおまえ」

百孤「さっきから言ってるんですケド、あたしは……………」



カチンッ シュボッ

男は煙草に火をつけて深く吸い込み言う。

男「ふ〜〜む……座敷わらしねぇ……初めて生で見るぞ。まあ確かに、今どき古い日本家屋なんて、ここいらにゃねえだろうな……しかし、

どう見ても普通のガキだなおまえ」

百孤「あの…駄目でしょうか…」

男「ここに泊めてくれ ねぇ……まあ、いいぜ今日だけじゃなくても好きなだけ居ればいい。」

百孤「!!有り難うございます(*´ω`*)」

男「今どきの妖怪も大変なんだな…」

百孤「そうなんですよ…あたしの事、恐いとかないんですか?これでも妖怪のはしくれなんですよ?」

男「いや、おまえの見てくれじゃ、[恐い]というより[可愛い]にはいるぜ?いいじゃねぇか(笑)」

百孤「(///ω///)♪有り難うございます」


男は時計をみる。午後11時を過ぎている。

男「おっと、もうこんな時間か……じゃぁ明日も早いから俺、もう寝るけどどうする?」

百孤「あ、気にしないでください!普段と同じようにしてもらって構いませんよ?」

男「じゃなくて、電気消すから真っ暗で何も見えないぞ?いいのか?」

百孤「あ、大丈夫です♪あたし暗くても平気なんです!」

男「ふむ、じゃぁ静かにしててくれよ?」

百孤「はい♪おやすみなさい(*´ω`*)」

男「おぅ♪おやすみなさい!」



男は寝息を立て始めた。百孤はすっと立ち上がり、キョロキョロ辺りを見渡す。玄関の横に台所が有ることに気づき、ニッコリ微笑んだ。

流し台の中には、夕飯の食べ残しの食いかけの魚等があった。それを見てさらに百孤は笑顔になる。


台所から、ガンッゴンッと音が聞こえてきて男は目を覚ます。

男「……………なんだよ、うるせぇな(# ゜Д゜)」台所へ向かい、電気を点けると台所の残飯を漁っている百孤がいた。

男「何してんだ?うるさいぞ?」

百孤「あ、ごめんなさい…お腹空いちゃって」

男「………何もそんなもん食わなくたって、そこの冷蔵庫に食いもん入ってるぞ?」

百孤「………うん、でも[ざしわら]は残飯しか食べちゃ駄目なんです(;つД`)」

男「そういうもんなのか……?」

百孤「………はい」

男「ふむ……じゃ、なるべく静かにね?」

百孤「はい♪」

男は台所の電気を点けたまま、ベッドに戻った。

百孤((///ω///)♪優しい♪電気つけていってくれた。)

しばらく台所から物音が聞こえていた。


男がふたたび寝息を立て始めた頃、百孤が部屋に入ってきた。目線が宙を見つめている。明らかに様子がおかしい。

百孤は男の枕元まで行くと、勢いよく枕を引き抜いた。男は頭をベッドの柵に強打した。

男(………なっ?なんだ?)

男は枕が引き抜かれた方を見た。

その瞬間、百孤は正気に戻りハッとした。

男「何してんだ?おめえ(# ゜Д゜)」

百孤(はっ‼またやっちゃったんだ)

「ごめんなさい!」

男「……イタズラするんじゃないよ?明日早いんだから寝なきゃヤバイの!!」

百孤「はい………」


男はそれ以上言うのを止め、眠りにつく。


男が寝息を立てはじめると、ふたたび百孤の目線が宙を泳ぐ。そしてまた枕を引き抜いた。

男はガバッと起きて百孤ににじり寄る。

百孤は正気に戻り、枕で顔を隠す。

男「(# ゜Д゜)だから、何してんだおめえ?

確かに繰り返すのは、お笑いの基本だけどな…

明日朝はえぇって言ってんだろ!!次やったら追い出すからな?」「枕返せ!」

強烈に睨み付けながら言って、ベッドに戻った。

百孤(良かった、許してくれた)


百孤はベッドの横にちょこんと座り、正気を保とうと頑張っていたが、午前2時……妖怪の妖気がもっとも強まる時間に、やはり正気を失ってしまう。おもむろに男のベッドに上がり、男に股がると、男の鼻の穴に指をぶちこみ反対の手で男の顔をパーンッパーンッと平手打ちをかました。

当然、男はガチギレで目を覚ます。

百孤(はっ‼(゜ロ゜)こんな事までしちゃった)

男「(# ゜Д゜)てめぇ、なんの真似だ?もう許さねぇ!!!」

百孤「あ、あうぅ、ごめんなさい、仕方ないんです、こういう事するのは、[ざしわら]だから(。´Д⊂)」

男「(#`皿´)なにが仕方ねぇだコラッ?とっとと出ていけーーーーッ!!!」

そう叫ぶと、男は百孤を玄関に引きずり、ドアを開けて強烈なdolphin kickをくらわせて、外に叩き出した。

男「二度と来るな!」

男はそう叫んで、強めにドアを閉めた。


百孤「………ふえぇ…しょうがないんだもん…座敷わらしだから……ああいう事するの……」

「また、駄目だった(。´Д⊂)早く次を探さないと………ひっく…うぅ……」

百孤は泣きながらとぼとぼ歩き出した。


座敷わらしが住み憑いた家は裕福になるが、その座敷わらしが出ていってしまうと反対に貧しくなる。


男は裕福になるいとまも無く、極度に貧乏になってしまい、1ヶ月後に餓死してしまう。


百孤は、24時間以内に憑くところを探さねばならない種族の掟がある。24時間を過ぎても憑く場所が決まらないと消えてしまうという過酷なものである。

百孤に限らず、妖怪には種族や出身地によって様々な[宿命的]な掟(決まりごと)が存在する。


次に百孤が訪れるのは、貴方の部屋かもしれない。


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