第14話家族会議
次の日。
シュウトはいつ眠ることが出来たのか全く記憶にないが、どうやら寝ることが出来たらしい。だが頭もまぶたもやけに重いことを考えると…間違いなく寝不足だ…。
では何故起きてしまったかというと、さっきから耳元で携帯端末が、ブゥゥゥゥ…ブゥゥゥゥ…っと振動していたからである。なんだろう?と思い画面を見てみると、シュウトの母親から不在着信が二十件以上入っていた。え゛っ?何?っと思って画面を操作していると、メールも来ている事が分かった。
――一刻も早く連絡しなさい
……なにこれ、怖い。
飾り気のないド直球のメール。今まで母親からここまでエグいメールを貰ったことは無かった。不安な気持ちに不思議と目が覚める。……ツゥー……っと、胃の辺りに何か冷たいものが走った気がした。何かがまずい。
とりあえず早く連絡しよう、とシュウトはベッドから起き上がる。
横を見ると、まだミルは眠っているようだ。きっと疲れているのだろうと思い、シュウトはそっとしておくことにした。
シュウトは部屋から出ると、廊下で母親にリダイヤルをかける。
……トゥルルルルルル……トゥルルルルルル……トゥルル、ピッ。
「シュウト。……何してたの?」
電話越しに母親の冷たい声が響く。
「あっ、うん。ちょっとまって」
シュウトは携帯端末のビジョンモードのスイッチを押し、携帯端末を地面に置いた。するとそこには正座をした母親が立体的に映しだされる。
そのただならぬ雰囲気に、シュウトも携帯端末の前に正座をした。
「えっと……なにかあったの?」
シュウトは恐る恐る聞いてみる。
ちょうどその時、携帯端末の前にシュウトの父親も映し出された。
出発したのが日曜日だったから、あちらは今日は月曜日のはずだ。そして今は朝の9時頃。なぜこの時間に父親がまだ居るのだろう……っとシュウトが思っていると、
「あっ、あなた。シュウトがやっと電話に出ました」
あぁうん、っと言ったシュウトの父親は、母親の隣にあぐらをかいて座った。
「……で、シュウト。……何かお母さんに言うことはないの?」
また冷たい声でシュウトに問いかける。
……え゛っ。僕何かしたっけ?
「えっと……旅に出る前の話かな?」
「…………」
違うらしい!
……えっ、何?
「う゛っ……っと。……旅は今のところ順調だよ!安「順調?」」
話している途中に被せられた……。
……順調では無いのだろうか……。
すると母親がやっと話しを進めた。
「はぁ。……シュウト。……昨日アサンドから連絡があったわよ」
そこでシュウトはやっと気づく。ミルの事かな?
「あっ、あぁ。……もしかしてミルの事かな?」
「……その子、ミルって言うの?」
「うっ、うん……」
考えてみれば、奴隷を買うなんて確かにマズかったかもかもしれない。
「……まっ、マズかったかな?」
「当たり前でしょ!あんた何考えてんの!!」
母親の怒りが爆発する。
「いやっ、その……成り行きで……」
「成り行きじゃないでしょ!!」
一気に制御不能にまで陥った母親を、父親が制した。
「まぁ、ちょっと落ち着いて。シュウトにも言い分があるはずだから聞いてあげないと」
「でもあなた……」
「……で、シュウト。アサンドが性奴隷を買ってきたって連絡してきたんだが、本当なのか?」
何の事だ?
「……えっ?性奴隷って何の事?」
「いや。まぁ父さんも男だから全くわからない訳では無いけどな「あなた!」」
「……いや。気持ちの問題だよ気持ちの」
「……あなたまさか、他の女に手を出したりしてないでしょうね?」
「そんなことしてないよ!」
電話越しにも気まずい空気が伝わる。
「シュウト。ちょっと待っててもらってもいいか?」
「あっ、うん」
……プツッ…………。
通信が切れた。
お父さん、やってないよな……。
いや、今までそんな時間は無かったはずだ。
にしても、ミルを性奴隷って……アサンドはいったい何て言って伝えたんだ?
…………。
約10分後。
ブゥゥゥゥ……ブゥゥゥゥ……。
また電話がかかってきた。
シュウトが電話を取ると、先ほどと同じく母親と父親が並んで座っている。解決出来たのだろうか。
「……で、シュウト。……あなたはなぜ性奴隷なんか買ってきたの?」
「いやだから違うん「言い訳しないで!」」
言い訳じゃないだけど……。
「……なんで性奴隷なんか買ってきたの?」
もう一度聞いてきた。
「だから性奴隷じゃ「シュウト!!」」
全く話を聞いてくれない母親に、シュウトはついカチンときた。
「少しは僕の話しを聞いてくれよ!!」
怒鳴ってしまった。
母親は黙り込んでいる……。
父親はオロオロしている……。
僕は……ミルとの出会いについて、両親に説明を始めた。
その説明を全て聞いた時、父親は納得したようだった。
「まぁ、そんなところじゃないかとは思っていたけどな。アサンドはちょっとそそっかしいから」
そして頭をポリポリとかく。
「状況はわかった。シュウトの思うようにやってみなさい。もう子供じゃないんだし、やっていい事と悪いことの判断はつくだろう」
そこに目を覚ましたのか、ミルが部屋から出てきた。
目を覚ましたらシュウトが居なかったから怖かったのだろう。不安そうな顔をしている。シュウトを見つけると走り寄って来て、自分も座るとシュウトの服の裾を強めに掴んだ。
「あっ、おはよう」
シュウトがミルに声をかけると、ミルも挨拶をするように頭を下げた。でもまだ不安そうな顔をしていたため、ちょっと頭をなでてみる。
「ごめんね。ちょっと用事があって」
何回か撫でていたら、次第に顔が穏やかになってきた。もう大丈夫だ。
せっかくの機会だからと、シュウトは両親にミルを紹介する。
「彼女がさっき話しをしたミル。ミル・キーウェイ、16歳。しゃべれないから挨拶は出来ないけど……」
するとミルは電話に気付いたのか、シュウトの横に並ぶと丁寧に頭を下げた。
「ミル。えっと、これが僕の両親。ミルが心配で連絡をくれたみたい」
それを聞くとミルは少し驚いた顔をして、さっきよりも深くもう一度頭を下げた。
「おぉ~、彼女がミルちゃんか。可愛いじゃないか。私はシュウトの父親だ。ふつつかな息子ではあるが、よろしくしてやってくれ」
父親がミルに挨拶をする。
するとようやく立ち直ったのか母親も挨拶をする。
「……はぁー、まったく。私がシュウトの母親よ。シュウトに何かされそうになったらすぐに連絡をちょうだいね。私がシュウトの事を叱ってあげるから」
ミルはいちいち頭を下げた。
ハァ……。なんとかなったみたいだ……。何か最近ため息ばっかりだな。
そんな事をシュウトは思ったが、その前に一つお願いしなければならない事があった。
「お父さん。アサンドに説明をしてもらってもいいかな?僕から何か言っても……信用してもらえない気がするんだけど……」
「あぁ、そうだな。私からしっかり伝えておくよ。それよりもシュウト。後でアサンドが私に送ったメールを転送しておくから見ておくと良いぞ。面白いから」
父親は軽く笑いながらそんな事を言った。
「じゃあ父さんはそろそろ会社に行かないとな。とりあえず午前休を取ったけど、早く行くに越したことはないから。じゃあなシュウト。たまには連絡しろよ」
そう言うと父親はカメラの前から去っていった。
「シュウト。母さんもちょっと熱くなっちゃってごめんね。本当はシュウトを信じてあげたかったんだけど。……まったくアサンドったら!……まぁ無事なら良いわ。元気でやりなさいよ」
「わかったよお母さん。あとさっきは本当にごめん。また近いうちに連絡するから。それじゃあね」
と言うと、電話を切った。
床に置いてある携帯端末を取ると、シュウトは一度ミルの方を見る。そして目が合うと苦笑いをして、「ほんとに……ね」と、ミルの頭を軽く撫でると、部屋に戻った。
部屋に戻るとほぼ同時に父親からメールが転送されてきた。
そのメールの内容を確認すると……これは連絡が来るわ、と妙に納得してしまう内容だった。
まぁこのメールを見るとシュウトにまったく非がない訳でも無い気がしたので、今回の事は綺麗サッパリ水に流すことにする。
……にしても……つっかれたぁー…………。
シュウトは昼過ぎまで二度寝をした。
そしてその後リビングに行ったシュウトは、アサンドに死ぬほど土下座をされることになる。
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