殺られたいほど貴方が好きです

彼方の空

第1話そんな貴方が大好きです。

人も草木も眠る夜の2時ごろ。彼は突然やって来る。


ピンポーン


家主の男性は、インターホンの音に気付き玄関に向かう。


「はいはい。どちら様ですかー」


まだ眠気から覚めていないのか、警戒心無く玄関の扉を開ける。

玄関にいたのは、若いひとりの男性でした。

彼は不気味に笑うと、背中に隠していた何かを振り上げる。


「夜分遅くにすみませーん。そして、さようなら!」


彼が背中に隠し持っていたのは、1本の包丁だった。

男性は彼が手に持っているのが包丁だと気づくと、一気に覚醒いたのか悲鳴を上げ尻餅をつく。


「やっやめてくれ!君は私に何の恨みがあるというのかね!」


「は?恨みなんかこれっぽっちもねーよ。ただよ、俺は『 殺人鬼』なもんでさ人を殺したくてたまらないんだよ。楽しいから人を殺す。簡単な理由だろ?」


そう言うと、彼・・・『 殺人鬼』は 男性の首筋に包丁をあてると、一気に包丁を引いた。

男性は、小さく悲鳴を上げながら首から血を流し息絶えた。


「あなた!一体どうしたの?!」


どうやら、ここの家は夫婦で住んでいるらしく夫の叫び声で玄関までやってきたのは妻らしき女性だった。

女性は、血塗れで倒れている自分の夫とその傍らに凶器らしき包丁を持った男が居るのを見つけると、すべてを察したかのように全身を震わせていた。

男は、そんな震えている女性にゆっくりとした足取りで向かって行った。

女性は逃げようと後ろに下がっていったが、震えている足ではバランスを保てなかったのであろう。その場に崩れ落ちてしまった。


「なんだよ。ココの家2人だったのかよ。ちっ!めんどくせーなったくよ」


「やっやめて・・・お願い、命だけは助けて・・・」


命だけは助けて欲しいと懇願する女性に対して、彼はしゃがみこんで女性と同じ目線になってからこう言い放った。


「やーだ♪」


そういった彼は、女性の心臓を持っていた包丁で刺した。

刺された女性は、しばらく身体が痙攣していたが1分もしない内に痙攣は止まり、それは女性が死んだことを示すサインでもあった。

男は立ち上がると辺りを見回し、人の気配がもうないことを確かめた。


「さーて、本日の殺人も終ったことですしこの家の有り金持っていきますか!」


男は別に強盗のためにこの家に押し入った訳では無い。

理由は、『 殺したいから』

お金を持っていくのは、今お金が無いから。

殺しても必ずお金を持っていく訳では無く、困ったら持っていくだけなので2~3週間に1回程である。

およそ15分ほどで20万位が手に入り、これでしばらくの間は過ごせると思い男は満足していた。


「よーし。証拠隠滅のために、この家燃やしちまうかな。今回は血を出しすぎたしな」


そう言うと、懐からマッチ箱を取り出し1本のマッチに火をつけた。

火をつけたマッチを女性の遺体の上に落とすと、服から引火し炎が上がった。

男は炎が大きくなるのを見届けてからこの家を出ていった。

男が出ていってから5分後に近くの住民が炎に気付き道路に出てきたが、既に男の姿は何処にも見当たらなかった・・・



「うーん、今回は70点ってところか?もう少し叫び声を上げながら殺したかったぜ」


殺人鬼の男は、人が滅多に通らないようなトンネルを愚痴を吐きながら歩いていた。

このトンネルは、さっきの現場から歩いて20分程の場所にある旧トンネルである。

この男、走って7分でここまで来たので相当足が早い。

灯りが少なく、長いこのトンネルをひとりで歩いていた男は、後からついてくる気配を感じた。

男は徐々に歩くスピードを上げていくと、後ろの人もスピードを上げてついてくる。

男が突然後ろを振り返ると、後ろの人は止まった。


「おい。誰だ、出てこい」


男は包丁を手に持ち、相手の反応を伺う。

相手は、灯りがあるところまで歩いてくると再び止まった。


「・・・やっぱり、貴方って素敵!」


後からついてきていたのは、ひとりの少女であった。

年齢は16歳ほどであろう、黒い髪に黒いセーラー服を身にまとい、赤くなった顔に手を当て恍惚としていた。

男は、この少女に見覚えがあった。


「またお前かよ。昨日あんだけ引き離したのになんでここにいるんだよ・・・」


「それは、私のあなたに対する愛が深いからです。あなたのためなら、何処へでも共に参ります」


その言葉を聞いた男は、深いため息をついた。

少女がついてくるようになったのは2週間ほど前からであった。

彼女の家に押し入り、両親を殺した。物音で起きて来た少女も殺そうとしたが突然、「貴方に一目惚れしました!」と少女が叫んだので手がとまってしまった。

少女は、「貴方が好きです」や「私も共に参ります」だのついていく発言をし、なぜか怖くなった男はその少女を殺さずにその場から逃げたしてしまった。それからというもの、少女は

男がどれだけ包丁で脅そうが、夜道で彼女をまこうがついてくるストーカーとなってしまった。


「殺人鬼さん、私と付き合う気にはなっていただけましたか?」


「何度言われようが答えはノーだ!そもそもなんでついてくるんだよ!」


「あら、そんなの前々から言ってるじゃありませんか。両親を滅多刺しにする貴方に一目惚れしたんだと」


「それがわけわかんねーって言ってんだろーが!」


男の叫び声は、暗いトンネルの中に響きわたりました。



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殺られたいほど貴方が好きです 彼方の空 @kanatanosora

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