第3話 解決です、一件落着

清らかな春の光に、桜のつぼみも膨らみ今日は平日の木曜日、現時刻は1:25、現在地どっかの道路、さぁここまできたら気づく人は気づくと思いますが平日の1:25は普通に学校で眠たい時間を過ごしているばずなのだが。

おかしい、おかしいな何故俺は道路を信号待ちなんてしているのだろう、しかもコイツと一緒に。

ジー

『何か顔についてる?』

『特に何もついてません』

何故こんなことになったかというと、昼休みにさかのぼる

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『あなたはこのままだとその思念殺られる可能性がある』

『はっ?何故?』

『簡単に説明すると唯一の存在になるため、ドッペルゲンガーって知ってる?』

『一応は、見たら死ぬとかいうやつだろ』

『まぁだいたい正解、ドッペルゲンガーや心霊現象の原因は思念なの、そう強く思うことによってそれが現実になる。』

『もう話が壮大だな』

『そしてあなたは自分の代わりになって欲しいと強く思った、マインドロストはその感情だけがすっぽり抜けて形になる』

『ということはどういうことだ?』

『あなたを消して代わりになろうとするかもしれない』

『は、はぁぁぁぁぁ!?いや別にそう言うこと思って願い事したわけじゃないし、あぁなんでだよ』

『と言うことで午後の授業サボり決定!』

『え?』

『ドッペルゲンガーを倒しに行きます』

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ということでいま現在進行形である。

『こんなことで見つかるのかよ』

『大丈夫、おそらく神崎君のことちゃんと殺しにくるから』

『いやそれ大丈夫じゃないから』

平気な顔で怖いこと言う、なんかをもうちょっと緊張感持ってくれないかな、こっち命かかってんだから!

『流石に人少ないな、平日の昼間っていうこともあるけど』

『こっちとしてはあまり人目につかないから助かるけどね』

信号を超えてトンネルに入る。ちょっと暗くて薄気味悪い。

『なぁ、なんでお前は退治屋なんかになったんだ?』

気味が悪く無音だととても参ってしまうので会話をしたい、それだけで少しはマシになるはずだ。

だが乙坂はすぐに立ち止まってしまった。

『私の姉は、姉自身が生み出したマインドロストに殺された』

この瞬間俺は聞いてはいけない、踏んではいけないものを踏んでしまったような気がした。

『もうあんなことになるのはいやなの、だから私自身が強くなって守ろうと思ったから、それが理由』

とても悲しい声で、虚しい声でそう話した。聞いてしまったことに罪悪感を感じる。

『だから私が君を守るから安心して』

突然笑顔になりそう言ってきた、でもそれは心から笑ってるんじゃないとすぐにわかる。

『お願いするよ』

俺も笑顔で答える。

だがもう乙坂の顔に笑顔はなく真剣な眼差しに変わっていた

『ごめん神崎君!』

乙坂がペットボトルを取り出し中身を空中にばらまいた

『なにしてんだよおまっ』

最後まで言う暇なく乙坂に引っ張られる。その勢いで振り返るとそこにいたのは

『俺?』

確かに俺だがいろんな色を混ぜたような色をしていた。

『くらえっ』

乙坂の掛け声と同時に空中の水が無数のナイフと化しそれに突っ込む。

『グギャ』

見事全弾命中、だが押しきれていない、まだピンピンしている俺がいた。

『神崎君は下がってて、ここは私がやる』

そう言うともう一つペットボトルを取り出し刀の形に圧縮

(マインドロストは思念の塊、ならより強い思念で砕くのみ)

乙坂が一撃をそれに叩き込もうとしたその時。

キィーン

何かに防がれた

『こんなとこで仲間が見つかるとは』

声の方を向くとそこには女の人が立っていた

『完全に自立した思念体!?最悪のタイミングに』

女の人の顔がパラパラと崩れ、なんとも言えない色をした中身があらわになる

『おい、あの人どうなってんだよ』

『あれは人じゃない、思いを抱いた本人から自立して行動している思念体』

簡単に言うとこうらしい、思念を作った本人を殺したもしくは、自己的に人として生きることを決めた思念体らしい

『仲間が困ってたら助けるのが人間と本には載っていた、ならば人間のやり方といこうか‼︎』

人という原型をとどめず、その女は腕を伸ばしムチのようにしならせ乙坂に叩きつける。

『くっ』

間一髪でそれをかわし反撃に移る

『融解』

そう言うと刀状になっていた水が元通り液体に戻る

『当たれぇぇ』

元に戻った水が何本もの針になり相手を襲う

『ちょこまかと』

数百本あった水の針を全部弾かれた

『化け物にもほどがあんだろ』

『神崎君、逃げて』

『‼︎』

乙坂に逃げろと言われた、でもここで逃げたら乙坂はどうなる。助かんねぇに決まってんだろ、でもどうすりゃいい

『ウギャ』

考えてる間に俺が突進してきた

『ガハッ』

喉元を掴まれる、強く締められまともに息ができない

『な、なんで逃げないのよ!?』

『女の子一人置いて男が逃げられるか、俺のために頑張ってくれてるお前を見捨てられるかよ』

『えっ?』

乙坂の頬が少し赤くなる

『べっ、別に私はこれが仕事だからいいの‼︎』

『余所見とは余裕だな小娘』

乙坂が向きかえるよりも早く女は乙坂の首をつかんだ

『このまま首をへし折ってやろうか』

『…ッ』

乙坂は声を上げられずに苦しんでいる

『や、やめろぉぉぉぉ』

『ははは、やはり人間は脆い』

ミシミシと乙坂の体が軋む音が響く

(くそっ、俺のせいで、俺のせいでこんなことに)

目の前にいる俺もだんだんと力を強めて首を絞めてくる。

『確かに、俺は俺の代わりになって欲しいと願ったよ、でもなぁ俺は俺を助けてくれる存在が欲しかったんだよ』

そう、俺は代わりになって助けてくれる存在が欲しかったんだ、ワガママかもしれない都合がいいかもしれないけど。

『お前は俺の思いから生まれたんだろ、だったらお前は俺のはずだ、なら貸せその力、今は自分を助けるために必要としてるんじゃない、あいつ(乙坂)を助けるためにその力をくれよ!』

乙坂を助けるんだ。

『ガ…ア…』

もう一人の俺が光を放ち俺に吸い込まれていく。

マインドロストは思念の塊、ならその思念により強い思念で上書きをすればいい。

『なん、だと』

『まさか神崎君』

助ける、必ず、それが俺の想いだ!

『おい、いつまで掴んでんだ、乙坂を離せ』

『マインドロストと同化しただと!?』

ありえないとばかりに女は顔を引きつらせる

『何驚いてんだよ、元は俺の思いの一部だろ。』

視界が広く体が軽い、これが思念体の力か。

『舐めたマネを』

怪物女の腕がしなりながら襲ってくるが、遅い

『疾い、これが神崎君?』

今なら見切れる。

『いい加減にしやがれ』

怪物に一発蹴りを打ち込む

『グハァ』

続いてアッパーを入れ、追撃に水月に一発

『人間じゃねぇから効くかわかんなかったけど結構効いてるみたいだな』

『人間の分際で』

『お前もその人間から生まれたんだろうが‼︎』

顎に回し蹴りを入れ怯んだ隙に乙坂を救出する

『大丈夫か?』

『う、うん、あり、がとう』

少し咳き込んでいたが問題なさそうだ、ちょっと待ってろと乙坂に一言いい向き直る。

『思念は想いによって強くなるんだよな』

俺は拳を握りしめ全力で振りかぶった

『まっまて、早まるな』

『俺の全力想いくらっとけ』

本気の一撃が顔面にクリティカルヒットする。

『バカ、な』

女はその言葉と一緒にパラパラ崩れ、消えた

『本当は逆の立場のはずなのに』

乙坂がふてくされたようにつぶやく、だがすぐ

『でも、本当にありがとう神崎君』

とても綺麗笑顔でそう言った、今度は心から笑えてるみたいだ。

『こちらこそありがとな』

なにはともあれ一件落着、だと思ったのだが

翌日

『ごめん、今なんて言った?』

『だーかーらー、一緒に退治屋してくれない?』

今日は平日の金曜日、現時刻は7:49、現在地は俺の教室、珍しく朝早く登校しようと張り切ってきたのだが狙われていたように教室には乙坂さんがいました。

『いや、それは』

無理だ、もうあんなエライ目にあいたくない

『悪いけど、無っ』

『お願い、神崎君しかいないの、自分を思念化できる君の力を貸して』

上目使いでめっちゃ見てくる、くそーめっちゃ可愛いじゃねぇか反則だろぉぉ

『わっわかったよ手伝えばいいんだろ』

しぶしぶだよ、なんで断んねぇんだよ、俺

『ありがとうよろしくね、祐介くん』

いきなり下の名前か、まっ、別に悪い気しないけどね

『あっそーだ、部活入ってないよね?』

『んっ、あぁ入ってないぞ』

『ならオカルト研究部に入ってね、そこが拠点になるから』

『はぁー、了解』

どうやら俺の退屈は終わるようだ




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