第8話

 人狼を十匹くらい倒した日のことだ。また魔王が攻めてきた。また一人だ。

「今日は、貴様らに特別の恩恵を与えてやろう」

 魔王はいった。なんだかよくわからないが、魔王はバカ長い先端の尖った一本の棒を持っている。

「魔界の秘槍で貴様の命を奪ってくれよう。喜ぶがいい」

「ふざけるな。今日こそがおまえの命日だ、魔王」

 女勇者は魔王に立ち向かって突っ込んでいった。おれも戦いに参加する。魔王は、おれと女勇者二人を相手にして、まったく付け入る隙を与えない。持っている長い棒で、おれと女勇者を軽くあしらう。

「ぬるいな。貴様らで遊ぶのもこのくらいにするか」

 そう魔王がいうと、魔王は長い棒を女勇者の腹に突き刺した。

「女勇者あ」

 おれは思わず叫んだ。

「死ね。この魔王に逆らう愚かものどもが」

 魔王は勝ち誇っている。

「女魔法使い、女勇者を連れて逃げろ。ここはおれがなんとかする」

 おれはそういって、魔王に単身立ち向かった。

 女魔法使いは、棒を女勇者の腹から抜き、逃げて行こうとしている。女勇者はぐったりしている。

 ここで勝てなくていつ勝つというのだ。女勇者に死なれたら、おれは野たれ死ぬだけだ。死ぬのは怖くない。女勇者を失うのが怖い。魔王に、なんとか魔王に一太刀浴びせることができたら。

 この魔王は傷を受けると逃げる。それは以前の戦いでわかっている。なんとか、魔王に一撃を加えることができたら、女勇者は助かる。

 おれの剣撃を魔王は素手で剣を指ではさんで、防ぐ。魔王に勝てない。

 あきらめるな。女勇者が死にかけているんだ。

 はあはあ。疲れているんじゃねえ、おれ。疲れているのは魔王も同じはずだ。気合いを入れろ。集中しろ。

 ぐさっ。おれの一太刀がついに魔王の体に傷をつけた。

 魔王は高笑いして笑った。

「ははははははっ、面白いやつらよ。良い。今日のところは見逃してやる。また遊びに来るからな、刺客どもよ」

 魔王はそういうと、宙を飛んで逃げて行った。

「大丈夫か、女勇者」

 おれが駆けつけると、女魔法使いの回復魔法で多少傷を回復したらしき女勇者は、

「ありがと、戦士」

 といってから、眠りに入った。

 女勇者が心配で、一晩寝ずに女勇者の様子を見守っていた。

 翌日、目を覚ますと、女勇者は元気なようだった。安心したおれは朝から眠った。

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