恋愛工学

夏秋冬

恋愛工学

 人間が、好きな物事には積極的に行動するという行為は、その行動を行うことによって脳内の快楽中枢が刺激され為である。これにより、快楽を得られることが予想され得るので積極的に作業に向かうという行動が現れる。


 この原理を利用する実験が行われた。人間とロボットにおける円滑な共同作業を行うにはどうすればよいかを模索する為の実験である。


 人型ロボットの人工知能に、特定の人間の容姿、仕草を好ましいとカウントするプログラミングを行った。

 具体的には、人間の顔、髪型、表情といった容姿、その人物の仕草をロボットが判別して特定の特徴を持つ人間には変数に加点し、この変数が高い値を維持するべくロボットが行動するようにプログラムした。例えば、長髪の人物には加点され、短髪の人物には加点されないという仕組みである。これは人とロボットの共同作業においてロボットが共同作業者の人物を好ましいと認識することを想定したものである。

 又、人物の特徴と関係なく喜びの表情、仕草、言葉を確認すると変数が加点されることとした。

 これらの設定によりロボットの自発的かつ積極的作業が行えるか否かを観測した。


 研究員Aの外見的特徴をもっとも好ましいもの、変数が加点される特徴として入力し、このロボットを複数の研究員が作業する現場に投入した。

 当初、ロボットは各研究員の作業補助を均等に行っていたが、次第に積極的に研究員Aの作業補助を行うようになり、作業が必要ない場合でも研究員Aの傍で待機するようになった。

 試みに研究員Bの髪型をAと同じ髪型にしたところ、ロボットはBの作業補助も行うようになったが、基本的にはAの補助を行った。

 次に、研究員Aは作業を手伝って貰っても無言で行い、研究員Bはロボットが作業補助を行ってくれた場合には感謝の言葉を掛けるようにした。すると、次第にロボットは研究員Bの補助を行うようになった。これは単純に、言葉を掛けた回数によって加点が増えたことによるものである。


 この実験を見学した部外者が「ロボットが研究員に恋をしているようだ」と言って笑った。これらの実験が人工知能分野における恋愛工学の発端となり基礎となった。


おしまい

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恋愛工学 夏秋冬 @natsuakifuyu

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