くどい!
弱腰ペンギン
第1話 俺の周りの残念な奴ら
ある朝、いつも通り自分のベッドで目が覚ますと、
「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!」
兎になっていた。
正確には着ぐるみを着ていたのだが。
平凡な一般家庭のピープルに生まれた普通の日本男児。
……言ってみて虚しくなってきたが、それが波戸志那乃――はと しなのと読むが、俺の人生だった。
どこかの有名人から取ってきた名前らしいが、あだ名は『ぱっとしない』という雑なものだった。
「オハヨー、アサダヨ、コンバンワ」
隣でけたたましく騒ぐのは九官鳥型目覚まし。
母親から送られた16歳の誕生日プレゼントだ。
以前、電池を入れようと蓋を開けたら『これで、とってもやらしいオカズでも買って下さい(はーと)」と書かれた手紙と、1480円が入っていた。
やけに具体的な数字だったが、手紙を読んで理解した。
追伸:スマホで購入して視聴するのが、お父さん、オススメです。
その後、俺が非行に走らなかったのは奇跡だと思って欲しい。
そんな俺の家族と『幼なじみ』はサプライズが大好きな人達なので……。
「おはよう、起きたんだねッ! 17の誕生日オメデトウ、しなのん! はい、私をプレゼントッ!」
と、バニーガールの衣装で俺のベットにだいぶしてくる幼なじみとか、
「ついでにお母さんもプレゼントするわ!」
母親も同じ衣装でだいぶしてきたり、
「お父さんはコスプレ物のDVDを送ろう。なぁに、お下がりじゃない。布教用のDVDだ」
と、息子にムスコを元気にするアイテムを送る父親なんかがいるんだ。
「お前等ふざけんなよ。毎度こういう誕生日は止めて下さいって本当におねがいしているんですからどうか、どうかしずかなまいにちぉぉぉぉ」
最後の方は自分でも何を言ってるのか解らなくなってしまった。
……俺、卒業したら絶対一人暮らしするんだ。
「ねーねーしなもん。私のバニー、どうかなっ。元気に、なるかな?」
ならない。ハッキリ言うとならない。
どうしてって、俺はおっぱい星人であって、目の前のツルペタ絶壁トリプルAは興味の対象外なんだ。
バニーの胸の部分がどうしても余ってしまってタオルで誤魔化していたり、陸上でほどよく引き締まった太ももは、まぁばっちりだけど。
寝癖のついたショートヘアーとか、えくぼとか、まぁ好みの部分はあるが、
「見慣れてるし?」
達観します。
俺の幼なじみの木梨ゆうこは、こうやって毎日お越しに着てくるのだから。
「やっだ、この子ったら。明日には孫が出来るかしら、お父さん!」
「うーむ。ゴムはなくても良いって、向こうからもいわれているしな。頑張れ、息子とムスコ!」
「頼むから出てって!」
いい加減、着ぐるみを脱ぎたかった。
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