お隣さんの妖しい事情~七じゃ語れない不思議な恋物語~

夏葵(なつき)

猫神様に会いまして?

(1)

 春。

 心機一転と思って引っ越しをしたが、引っ越してきた所は、だいぶ寂れた田舎町だった。


 スーパーまで車で十五分。

 最寄りのバス停まで、歩いて十分。

 最寄りの駅までは、バスに乗ってさらに十分。

 ちなみにバスが来る時間は一時間に一本から三本。

 多いのか少ないのか……。

 いや、少ないよね。


 近所に関して言えば、向かいと右隣は空き家だそうだ。後ろは森だか林だかで木々が鬱蒼と茂っている。

 左隣にある一軒家にしか人は住んでいないらしい。

 引越しそばならぬ引っ越し和菓子を予備(という名目の自分用)含めて五箱用意したのが馬鹿らしいほどに、近隣住民が居ないらしい。


 まあ、うるさくないなら、良いか。


 都会の喧騒から離れたくて引っ越してきたのだ。

 人付き合いでクサクサした心を癒やしたくて来た。

 だからご近所さんが少ないのは良かったと思う。

「よーし」

 それでは、これから。

 唯一のお隣さんである左隣の誰かの元へと行こうか。

 私は鼻歌交じりで包装されたお菓子を脇に抱え、家を出た。

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