飴のち、×××

雨が降る前に

授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。ああ、ようやく今日最後の授業が終わった。やっぱり七時間目に古典は辛すぎる。先生の話す理解できない言葉達が、子守唄となって私を夢の世界へ誘おうとするから。

「ふわぁ……」

欠伸を一つし、眠たい目を擦りながら、教科書やノートなんかを鞄に詰め込んでいく。クラスメイトの騒々しい声に顔をしかめつつ。なんだかいつもより騒がしい気がするけれど、それは今日が金曜日だからなのだろう。明日はどこに遊びに行くとかそういう話があちらこちらから聞こえてくるから。まあ、私には全く関係の無い話なのだけれども。


「あ、そういえば今日返却日だったっけ」

机の中から取り出した一冊の文庫本を見て呟く。それからはみ出した細長い紙に書かれている文字は、確かに今日が返却日だということを示していた。……仕方ない、返しに行くか。期限を過ぎると色々と面倒なことになるしね。私は文庫本を鞄に入れると、喧騒から逃れるように教室を後にした。


「……雨降りそうだな」

図書室へ向かう途中、ふと目を向けた窓から見えたのは雨模様の空。天気予報は一日中晴れって言っていたから傘持って来なかったのに。昼すぎから急に曇って来て、今ではこの様だ。大体、夕立があるかもしれないなら、ちゃんとそう言って欲しいんですけど、お天気お姉さん。本当、当てにならない。……早く本を返して帰ろう、雨が降る前に。そう思った私は図書室への道を急いだ。

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