第4次【黒き覇者】2節【壮絶なる争奪戦】

《魔水晶の聖杯》イベントについての運営メールが届いた後、しばらくして各街の市場では何故か凄まじい雰囲気が満ち満ちていた。

理由は、市場に当該イベントの水晶と、本当に何故だか不明だが、【星闇金属キメラダイト】製の武器防具が相当な量出回っているかららしい。

「…………キメラダイトって、扱える奴そんなにいないと思うんだが…」

星闇金属キメラダイトは、ゲーム内に存在する金属類の中でも最高峰の硬さを誇り、それから作った防具は傷1つすらつかないとされているほどだ。

勿論非常に希少レアであり、扱える鍛冶師も少ないと思われ、1つでも持っていれば有名になれる程である。

カイン(現在Lv,621)の愛剣【ダーククォーツ】他、魔皇剣諸々は、約9割ほどがキメラダイト製であるという異常な反則デタラメ仕様であることは言うまでもなく。

そして彼自身も、鍛冶系スキルについてはある程度成長させている。


(水晶とアイテムの交換は、永久の島の特定NPCしかしてくれないということだったが…売買はどこでも可能だからな)

凄まじいを通り越してもはや壮絶な殺気すら感じられるその騒々しい市場を遠巻きにしばらく眺め、あまり眺めていても飽きるだけだと思い、クリスタリアの街道を歩く。

余談だが、カインの実力のほどは既にエレメンタリィ・オンライン全プレイヤーに知れ渡っており、付けられた異名が【漆黒の戦神】。

実際、歩いているカインの姿を見た一部プレイヤーがないしょ話をしている。

         *        *       *

第50の島【永久とこしえの島】のフィールドを疾駆する黒の戦神の姿。

彼の目的は降霊の森近くにある第2の街【ファルトラーク】にたどり着くこと。

彼の見たところ、古代級エンシェントランク確定のガチャ券等、非常に魅力的であろうアイテムは最低限、水晶数百個程必要だったはずである。

「俺の役目は島のクリアだけ。……それでいいはずだ……」


この頃、彼は自らの行動に自信が持てなくなってきていた。





次回→3節【超難関ダンジョンと蹂躙の覇者】        END






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