FGO『妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ』感想(ネタバレ)

 楽しいから。

 楽しいからと。


 無邪気な子供たちは笑ってる。


 あはは。 

 あははと。


 そのまま滅びて死んだ。


 なぜ?

 なぜ?


 その疑問の答えすら知らずに消えた。


『奇跡』が起きて世界は続く。

 

 それでも子供たちには分からない。

 

『なぜ世界は滅びるのだろう?』


 楽しくないから目を背け。

 邪魔だからと他人を蹴落とす。  


 そして、世界はまた滅びる。


 行動には結果を。

 結果には理由を。


 あるべきものはあるべき場所へ。

 それこそ正しい『運命』なのだから。


『奇跡』が起きても世界は救えず。

『救世主』ですら子供を正しく導けない。


 全ては無の中。

 無駄の無駄。


 さてさて

 さてさてさてさて。


 それでも『傍観者』は知っている。


 終わりの中で生まれた微かな『奇跡の光』を。

 あるべき『運命』に抗った『死に行く命の輝き』を。


 願いを込めて。

 希望を持って。


 破滅が定まっていた『運命』の中で。

 自分の意思を貫いた者たちの『物語』

 

 例え望む場所に手が届かなくとも。

『明日』に手を伸ばすことはけっして無駄ではない。


 限りある命は儚くとも光輝く。

 それが生命の正しい在り方なのだから。

 

――――


 無邪気で自由でお気楽な子供たちの世界。

 善も悪も無い永遠のネヴァーランド。


 まあ、当然の結果として滅びますわ(爆死)


 いや、『外敵』がいなければここまで酷いことにはなっていないかもしれませんが、敵がいるのに仲間同士でも足を引っ張り合いをしていればそりゃ滅びますよ。


 この世界の滅亡原因は単純です。

 

『力を合わせることができなかった』からです。


 妖精というのは『合理的な判断』というのができない生き物なわけです。

 つまり、『社会全体の利益』というものを考えることができないのです。


 例えば『ムリアン』は妖精の中でも合理的な思考回路を持っている登場人物でしたが、それでも彼女は『自分自身の目的』を優先させてしまい、結果的に世界が滅びるのを早める要因となってしまいました。


 妖精というのは『自分のやりたいことをやらなければ生きていけない生命体』なのです。誰が悪いというわけではなくそういう構造になっているだけです。


 これは『オーロラ』も同じで、ただ彼女は彼女の『目的』のために行動しているだけでそこに善悪はまったくありません。


 むしろ彼女こそが妖精の姿を一番分かり易く表現した形でしょう。

 この在り方が妖精と言う種族の『スタンダート』になります。


『自由主義のディストピア』


 それが今回描かれた世界です。

『個別の目的』しか持てない世界の末路です。


『もし救う人々が救うに値しないとしたら』という『セイレム』の答えでもあります。例え世界を救っても、その世界に住む人々が自分たちから滅びの道へと突き進んでしまうわけです。


『モルガン』の最大の失敗は『妖精を妖精のままにしたこと』です。

『他の異聞帯』のようにもっと徹底的に管理すべきでした。世界の存続を望むなら。


 ただ彼女は『救世主』でしたが、『異聞帯の王』では無かったわけです。

 世界を救う役割を担いましたが、人々を導く存在では無かったのです。


 というより今回は『王』の役割を担う登場人物がいないです。

 その代理がたぶん『アルトリア・キャスター』だと思われます。


 在り得なかった幻想の王。

 全てが終わった後に辿り着いた妖精國の代表者。


 その承認を得たことで『主人公たち』は次のステージに進む権利を得たわけです。

 あるいは『もう一人』の方も『王』の扱いかもしれません。


『彼』の場合は『世界から虐げられた者たちの代表者』と言えるかもしれません。

 彼の行動原理の一つがそれっぽいですし。


 世界は嫌いだけど、その世界から虐げられる者たちを見ていられない。

 だからこそあちこちで『手を貸してしまった』のでしょう。


 ともかく今回のシナリオはあえて説明しない部分が多いです。前回までのシナリオが『表ルート』だとしたら今回は完全に『裏ルート』のお話ですし。


『テーマ』を描くためにわざと王道を外した展開にしてあります。

 こう皆がバラバラに死んでいくみたいな感じも狙った展開でしょう。


 普通ならば物語を一つの流れにするのですが、今回はほんとにバラバラなんですよね。でも、そのバラバラな感じこそ今回の『テーマ』になってるわけです。


 なんか『TRPGのプレイヤーがそれぞれ自由にプレイしていたら世界が滅亡しました』みたいな展開の話だと思いました(笑)


 それぞれの目的が統一されずにバラバラだからこそ余計にそう感じるのでしょう。

 今までならば敵と味方でなるべく分かり易いように二分割にしてましたし。


 群像劇のようで群像劇ではなく、ただ個別のエピソードがパズルのピースのように散らばっていると言いますか、珍しい形の物語構造になってると思います。


 もっと色々感想を書けますけど、大変なので止めます(汗)

 それぞれのプレイヤーがプレイして感じたことが正解でしょう。


 小生は他のプレイヤーほど『妖精はクソ』とは思いませんでした。

 ただ彼らには『奇跡』が訪れなかっただけです。


『怪物が人間を理解してしまうような奇跡が……』


 それを努力で得ようとして得られなかったのが『ウッドワス』で、最後の最後で得たのが『マイク』という感じです。


 他にも『ガレス』のように弱者を守る騎士になろうとした者もいれば、『ハベトロット』のように自分の命を失ったとしても大切な人のために行動した者もいます。


 起こるはずの無い色んな奇跡が『モルガン』の残した最後の時間の中で起きたわけです。例えその奇跡で世界を救えなかったとしても、それは無駄では無かったと思います。


(ちなみに『マーリン』も基本的には人の思考回路を持ってません)

(ただ彼にも『とある奇跡』が起き、多少は人のことを理解したわけです)


 という感じで不思議な読後感のある物語でした。盛り上がるという意味では『5』とかの方が面白かったですが、こっちはこっちでこの『FGO』に必要なストーリーだったと思います。


 ぶっちゃけ『神』とか『妖精』がどうして世界のメインプレイヤーになれなかったのかというお話ですし。単純に滅びるからです(汗)


 滅びるというか簡単に滅ぼしてしまうというべきでしょうか。

 そういう『種族』であるとしか言いようがありません。


 人間の場合は単純に『分岐』が多いという理由もあるでしょう。

 不安定だからこそ『未来に対する選択肢』が多いのだと思われます。


 世界が一本道ならば強固な未来の方が有利ですが、世界のルートを『取捨選択』できるならばそのぶれ幅が大きければ大きいほど、滅びの未来を回避し易いと言えるでしょう。

 

 この『FGO』というのも型月世界の一つでしかないわけですし。

 だからと言ってここで紡がれる物語は無駄では無いということです。


 よし、何か上手く繋がりました(笑)

 結局、どんな未来があろうとも我々は生きていくだけなのです。


 いつか滅びるその日まで。

 あるいは別の誰かが道を引き継ぐその日まで。

 

<誰も知らない自分だけの物語>

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