漫画感想文『ワールドトリガー』 18巻まで(ネタバレ)

 うーむ、再読ですがやはり面白い。

 でも、最初の頃は『打ち切りライン』ぎりぎりかなーとも思います。


 何というか地味だよね(汗)

『これは面白い』というはっきりと分かるような面白さではない。

(むしろ最初の展開で切る読者もけっこういそう)


 ただこの頃から丁寧ではあります。

 面白さの片鱗もあちこちに見受けられますし。


『オサム死ぬぞ』と二回繰り返すとこにセンスを感じます。

 この辺りの会話で『この漫画はちょっと違うぞ』と思った記憶がありまぬ。

(台詞回しのセンスが良い作品はだいたい面白いです。伏線)


 早い段階で戦闘が『理詰め』になっていったのも面白い。

 何となくじゃなくて、勝つ方にも負ける方にもきちんとした理由がある。


 少年漫画だとこの辺りがわりと適当な作品も多いです。

 その中で『情報』にまで拘った戦闘シーンは好みが合えばかなり面白い。


 ただやはり『地味』ではありますけど(汗)

『熱血』という感じではなくて、『複雑』って感じです。


 でも、そこがいい。


 この作品がヒットした最大の理由は『総力戦(団体戦)を早い段階で決行した』ことだと思います。普通はやらないし、できない。


 なぜなら『キャラ数』と『読者の思い入れ』が足りないから。

(他にもいろいろ)

 

 だから、幾つものエピソードを展開して、多くの『キャラクター』を立ててから『総力戦』を決行する。そうすることによって今までの積み重ねが爆発して、一気に面白い物語を作ることができる。それは『ワンピース』も同じ。


 でも、この『ワールドトリガー』は物語の下地を固めた後、いきなり『総力戦』を展開させるという恐ろしいことをやりました。敵も味方も多くのキャラクターを一気に投入させ、怒涛の展開を読者に見せました。


(たぶん普通なら人型を一人か二人。もう少し段階を踏むと思われ)


 それが見事成功し、路線を一気に確定させたわけです。そのうえ多くのキャラクターを確立させたことにより、その後の展開がやり易くなりました。


 本来なら『B級ランク戦』と『大規模侵攻編』は逆にやるべき展開です。身内同士の訓練でキャラクターを立ててから、実践をやるというのが普通のやり方。


 でも、それを逆にやった。

 逆にやったことで『B級ランク戦』の面白さが跳ね上がった。


 この感覚が怖いですな。

 言ってしまえば『博打』ですから。


『一気に増えたキャラクターと複雑になった展開に読者が付いていけるか』


 そもそも作者がそれを『書き切る力量』があるかという問題もあります。

 だからこそ普通は少しずつ積み上げてから、一気に爆発させる。 


 まあ、結果だけを言えばこの『複雑さ』が読者に受けました。

 そして、この作品の大きな『売り』となったわけです。


 もともと設定自体もけっこう複雑な物語です。

 作中でも匂わせていますが、ボーダーという組織自体が


『ゲーム感覚を利用して少年兵を育成する組織』


 という恐ろしいブラック企業です。

 一般人の記憶も操作しますし、情報の隠匿なんて当たり前。


 所属している隊員ですらその多くに危機感がありません。同じ仲間をライバルと思っている人がいたりしますし、軍隊ほど組織だっていない。


 でも、そうやって戦力を育成しないといつ侵略されてもおかしくないというのが『ワールドトリガー』の世界観です。それを守るために大人たちが何とかしている。記者会見のやり取りもその一つですね。


 この辺りは『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』との共通点も多いです。どっちも設定だけを見ればかなりヤバイ。でも、その悲壮感を感じさせない作りになっている。


 もっとも『近界』の成り立ちを考えると更にキナ臭くなってきました。

 先の展開のネタバレになるかもしれないので詳しくは書きませんけど。


 まあ、まだ明かされていない設定が多過ぎるのであれですががが。

『ボーダーの成り立ち』ですら謎が多いですし。

  

 なんか全体的に『構成』が上手い作品だと思います。

『台詞回し』とか『戦闘の流れ』辺りはトップレベルの作品かなーと。


 ただ全体的に地味なだけで(爆)

 戦闘シーン自体はそんなに派手じゃありませんし。


 画力もそこまで高いという印象はありません。

 でも、その派手じゃない演出が逆にこの作品に合っている。


 新しい話も読んでますが、今のところは凄く地味です(笑)

 状況説明に二話も使ってますし、再開後にこれで大丈夫かと逆に心配になります。


 でも、ファンにとってはこれが面白い。

 ちゃんと状況を説明する。キャラクターが何を考えているかはっきりさせる。


 そして、それぞれの『思惑』がどうなるかという所が面白い。

『B級ランク戦』が面白いのもその辺りがしっかりとしているからです。


 これが今後の実践にどう関わってくるのか今から楽しみです。

『香取隊』とか今後絶対に活躍すると思いますヨ。


 そういう伏線の生かし方も上手い作品なので参考に読め読め。

『キャラクターが生きてる』という良い例でもあります。


 いろんなところから勉強して吸収するのが職人の鉄則なのです。

 パクパク。


 もっとも小説だとこういう『チーム戦』とか『総力戦』というのは書くのが難しいんですけどねー。『境界線上のホライゾン』が頭のおかしい理由の一つです。


 あれ毎回のように『総力戦』みたいなことやってるし。

 まあ、あれができるのもきちんと『読者を育てた』からでもありますが。


 初見の人はなかなか付いていけないとも聞きますし。

 やはり『総力戦』は難しいわけです。書く方も、読む方も。


 でも、使えるようになると『切り札』になりますので、プロを目指す方は何とか習得しましょう。敵だった相手が『総力戦』で味方になるとか、定番の定番です。燃えー。あるいは萌えー。


 

 まあ、青春小説とかはあまり『総力戦』とか関係ありませんけど。

 WEB小説も『主人公最強系』とかだとあんまり使いませんね。


 ただ『主人公最強系』でもこの『総力戦』が書けるともっと面白くなります。

 今まで嫌味なキャラクターが男気を見せるとか、よくあるよくある。


 いろいろ工夫はあるので自分で考えるがよろし。

 でわでわ、忙しいのでさらばだー。


<続きが楽しみ>

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