小生小説講座『小説を学ぼう 上級編』

 完成した物語を遡る『二度読み』

 未完成の物語を完成させる『先読み』


 後ろと前。

 こう来ると次に何が来るかと言いますと、


『横』


 です。

『ナナメ』とか考えた奴はぶっころ。


 では完成した物語を『横読み』するとどうなるでしょうか?

 

 前回の復習です。ここで一旦『先読み』をしましょう。

 ヒントは『マルチエンディング』です。


 さて、しばらく考える時間を与えるために世間話でも。積んでいる小説を減らすためにせっせと読んでいるのですが、読みたい本が少しも減らないという不思議。読んだ分だけ買っているので無限ループに突入です。WEB小説も読んでいる時間がありません。まあ、アニメとかも見ているせいですけど。同情するなら時間をくれというのが現代でしょう。ちなみにこの文章は先読みしようとしても無駄だと思われます。答え:何も考えていないから。終わり。


 さて、本題に戻りましょう。

 

『マルチエンディング』というのは『一つの物語が複数の結末を迎える』ということです。正確に言うならば『複数に分岐する物語が複数の結末を迎える一つの作品』なのですが、ややこしいので今回は前者ということで。


 つまり、『物語』というのは本来『複数の結末(展開)』を考えることができるわけです。これを最大限に活かしているのが『マルチエンディングゲーム』であり、簡単に言えば『横読み』というのはこれのことです。


 小説というのは基本的に『一つの物語に一つの結末』です。『完成した物語』というの作者が『複数に分岐する道筋から選んだ一つの結末』になります。読者が眼にしているのはそれです。


 ですが、『マルチエンディング』からも分かるとおり、物語というのは『分岐点』で登場人物が別な選択肢を選んだりすれば、『別の結末』を迎えるというのも珍しくありません。


 ここではその『別の結末を考える』わけです。『先読み』と共通している部分もありますが、『先読み』はあくまでも伏線などから先の展開を想像するのに対して、『横読み』は全体像を眺めてそこから別の展開へと分岐させる作業です。


「この物語を別の形にすることはできるだろうか?」


 これを考えるわけです。

 上級編なのでちょっと分かり難いかもしれません。

 

 例えば『バットエンドを迎える物語』があったとしても、『横読み』をすることによってその物語を『ハッピーエンド』に変えることも可能です。


 この場合、もっとも手っ取り早い方法は『登場人物の選択肢を変更する』ことです。物語と言うのは『登場人物が選んだ些細な分岐』で大きく変化しますので、ほとんどの物語でこの『選択肢分岐』が可能となっています。


 稀にどんな選択肢を選んでも、必ずバットエンドになるという完璧なバットエンドも存在しますが、その場合は『設定そのものに介入する』必要があるでしょう。新しい登場人物を一人追加するだけでも『ハッピーエンドへの道』が切り開かれることもあります。


 以前も語りましたが、一つのテーマを描くにしても『様々な角度』からそのテーマを描くことができます。この手法はその書き方を学ぶためのものでもあります。


 それと同時に『どのような要素が物語にどんな影響を与えるのか』ということを探るという意味もあります。


 これらの手法は『二次創作』と呼ばれる『パラレルワールド展開』などでも使用されていますし、『メディアミックス』などでは細部を変えるというのはよくあることです。中には結末自体を変化させる作品もあったりします。


 発展系としてこの『横読み』は自分の作品にも適応することが可能です。

 これは少しだけ『完成形の外』にも関係する内容です。


 読者に見せる完成形は一つですが、その一つを作るために作者は無数の形を考えなくてはなりません。物語は常に分岐し、その見せ方も一つではありません。初めから一つの完成形を目指せる作者はあまりいないわけです。


 その物語にとっての『正解』があるならば話はもっと簡単なのですが、完璧な作品というのはこの世界にほぼ存在せず、多くの作品は『他の面白さ』を捨てながら『一つの面白さ』を追求しなければなりません。


 これは創作というものが常に『横読み』をしている状態であるということです。

 だからこそ作者は自分自身に問い掛けなければなりません。


『果たして自分の選んだ分岐(要素)は良かったのだろうか』と。


 たぶん答えなんて出ません。

 それでも作品を完成させなくてはならないのが『小説家』です。


 創作というのは終わりの無い『無間地獄』です。

 一度面白さを見失ってしまえば、そこから抜け出すことは難しいです。

 

 だからこそ、学ばなければなりません。  


 今回の小生小説講座で学ぶべきことは三つです。


『物語の完成形』

『物語の展開』

『物語の分岐』


 これらを学ぶことは『物語を作るためのの指針の一つ』となるでしょう。もっとも一つの小説からはもっと多くのことを学べますが、学び易いのがこの三つということで。


『物語の分岐』は小説を読むよりも『ゲーム』をプレイする方が感覚的には理解し易いでしょうね。その物語を味わい尽くすという意味ではゲームという媒体の『マルチ展開』はかなり強みとなっています。


 まあ、『一本道のゲーム』も多いですけど(汗)

 学びたい場合はきちんと『分岐するゲーム』を選びましょうねー。


 というわけで、『小説を学ぼう三部作』でした。

 

 ちなみにこれを学んだからといって『物語を作れる』というわけではありません。やはり重要なのは『完成系の外』だと思われます。


 但しこの部分は小生が説明できる部分ではありません。

 なぜならば『完成系の外』というのは、


『物語を作るための過程。その全て』


 だからです。

『自分の作品の分岐を考える』というのもその一つに過ぎません。


 根本的な問題として『小説家がどうやってアイディアを考え、それを物語として組み立てるのか』ということを説明するのが不可能という理由もあります。


 例えば『お風呂に入っていたら突然良いアイディアが浮かんだ』と小説家が語るときがありますが、その発言はあくまでも『完成形』であり本来それを『言語化できる過程』があるはずなのです。


 ですが、おそらくその発言をした小説家ですら『なぜそれができたのか』ということは理解できていないでしょう。それが教えられないからこそ物語を作るということを教えられないわけです。

 

 もっとも今回学んだことも無駄ではありません。

 これらの作業は『小説家の引き出しを増やす作業』だからです。


『良いアイディアが浮かんだ』というのも、この『引き出し』が無意識に組み合わさり一つの形となった場合が多いと推測できます。


 まあ、それを組み合わせる作業はガンガレとしか言えませんけど(汗)


 読んでみれば『何でこの発想が思いつかなかったんだろう』と不思議に思うような『アイディア』もありますし、誰でも思いつくはずなのに思いつかないという不思議な現象も起こったりする世界です。


 それでも学ぶということはどの分野でも『基礎』であり、学ぶだけなら多くの人間ができる行為です。それを実際に使ったり、発展させるのが難しいのですが、今回はそこまでは知らんので一安心。


 では、終わりです。

 次回からはしばらく商業作品の感想でも書きます。


『Fate/EXTRA Last Encore』の感想もまとめて書く予定です。

 

<よてみて> 

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