第五夜

彼女の死が私に関わっているとは思わない。


彼女は勝手に死んだのだ。

彼女は勝手に焼け死んだのだ。

彼女は勝手に氷上で焼け死んだのだ。


今一度知って欲しい。彼女の死に私は関わりがない。


彼女の塵が在る部屋。

眼前には冷たく冷たく鋏が立っていた。私に『頚動脈を切れ』と唆すように。

背後には無数の誘蛾灯が私に厭な視線をぶつけてくる。

左右には退路はなく、燃え盛る炎が私に何度も何度も話しかけてくる。

そして幼児期の公園が迫ってくる。

無罪を主張する私の醜さに向かって。

少年期の林檎が殺気立ってやってくる。

無罪を主張する私の醜さに対して。


全ての季節が私を食べようと謀る。


腐った紅茶のような匂いを発する私の罪。



いつか 絶対に

彼女の子宮だけが許してくれよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る