8 閉回路/遁走

閉回路/遁走


 音のない世界があったら ぼくはきみの無音を聞こうとするだろうか?

 色のない世界があったら きみはぼくを無色に塗ろうとするだろうか?


 中空に塊が現れて タンシチューの味を ぼくらに触れさせたとき

 もしも世界が無数の死骸の上の烏の髑髏に映された毒ニンジンなら

 台風がヘリコプターを回しながら 奈落の上に昇ってくる

 明日が発狂した女の子宮の奥の惜しみない快哉の叫びならば

 ぼくはそれを飲み干そうとしながら 躊躇しつつ きみに恋の歌を捧げよう


 愛している 愛している でも、もういない

 愛している 愛している きみ、いしのなか

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