2 反射板/月末

反射板/月末


 ああ、きみの身体 青いワイン 薄くなる

 ああ、きみの世界 赤い夜空 透ける

 ああ、きみの仮面 白いレモン 寒くなる

 ああ、きみの背中 黒い蒸気 欠ける 


 悪戯が過ぎたから 公園が宙を舞う

 退屈が重なって 釣橋が海に咲く

 運命が尽きたから 内臓が波に乗り

 天才が絡まって 校庭が夢になる


 不思議さが病気を拗らせた芋虫のように

 ぼくの頭の後ろから幼女の声で呼びかける

 災厄が田舎に逃げ帰る国境のように

 ぼくの外側から自分の声で死ね!と云う


 ああ、きみの向こう 重い胎児 本棚の

 ああ、きみの頭蓋 甘い醤油 翳る

 ああ、きみのウワサ 緩い髑髏 金庫に

 ああ、きみの外皮 軽い夕日 化ける 


 追憶が消えたから 星空が血を吐いて

 永遠がダダ漏れし 揺籠が雲丹を喰う

 生命が炊けたから 電流が心砕かれて

 祝日が編み込まれ 猥雑が絵馬になる


 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ

 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ


 不思議さが病気を拗らせた芋虫のように

 ぼくの頭の後ろから幼女の声で呼びかける

 災厄が故郷に逃げて帰った国境のように

 ぼくのすぐ近くからぼくの声で「おまえ死ね!」と云う


 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ 厭だ

 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ


外宇宙/石鹸


 ぼくの瞳の中のきみの瞳の中のぼくの瞳の中のきみは他人

 きみの瞳の中のぼくの瞳の中のきみの瞳の中のぼくは誰?

 庭に干された死体は空中で溺れたきみの群れ

 岸のお洒落な市街の階段に浮かんだぼくの化石

 時の流れが違うからぼくときみが会えるのは一昨年

 ズレてしまったのは再来年に蝦を食べてしまったから……


 窓の外から聞こえるのは演歌かまたはフォークソングになり損ねたムード歌謡で

 あなたの頭の中は文字で一杯になって破裂して

 そこから時間はスパイラルを一回か二回半くらい下降して

 等身大の蝦が素揚げされる匂いが聞こえてきて

 

 ハキソウデハケナイムカシハミライヲイクラダッテスキナダケハケタトイウノニ……


 船の底から撒かれえるのはカツオかまたはカジキマグロに成り損ねた生命体で

 あなたの身体の外は液で一杯になって嘔吐して

 そこから光子はスパイラルを一回か二回半くらい誤魔化して

 宇宙規模の蝦が消化される景色が聞こえてきて


 ぼくの瞳の中のきみの瞳の中のぼくの瞳の中のきみは他人

 きみの瞳の中のぼくの瞳の中のきみの瞳の中のぼくは誰?

 庭に干された死体は空中で溺れたぼくの群れ

 岸のお洒落な市街の階段に浮かんだきみの化石

 時の流れが違うからきみとぼくが会えるのは一昨年

 ズレていったのは、「ああ、何てこと!」あなたを食べてしまったから……


 ハキソウデ ハケナイ ムカシハ ミライヲ イクラダッテ スキナダケ ハケタトイウノニ……


 吐けそうで吐けない 昔は未来を、いくらだって好きなだけ 吐けたと云うのに……

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