第17話 演奏禁止の曲?

2年生の春は、またまた激震で始まる。


少人数であるが中心的な存在であった3年生部員の全員が退部してしまったのである。これで、ついに2年生のみの部員構成になってしまった。

もちろん1年生は、入部してくるんだろうが、1年前の自分達を思い返せば「あてにはできん」とすでにいっぱしのプレイヤー気取りである。

今年の「コンクールは、銀賞だって危うい」という噂がチラホラし始める。

自由曲は「フィンランディア」という曲らしい。北欧のフィンランドにまつわる曲らしいのであるが、それよりなにより譜面を見るなり


「これ、どうやって吹くんだ?」


という状態である。

32分音符の同音程の連続・・・・。

「天ぷらを食べると、タンギングが早くなる」

という伝説を信じて、せっせと天ぷらを食べてみたが、いっこうに変化は無い。


ケッカン

 「ダブル・タンギングだと、吹けるぞ」

 「ダブルはダメだって言われてるけど」

オレ

 「でもなあ・・・」


この年は、明けても暮れても、この問題のフレーズばかりを練習することになる。


20世紀に入る時代、フィンランドは、当時の帝政ロシアの圧政に苦しめられていた。議会民主制と資本主義経済を維持しつつも共産主義国の勢力下におかれるという、混沌とした状態に陥っていた。こういう状態をフィンランド化という言葉がある位です。フィンランドへの愛国心を沸き起こすとして、帝政ロシア政府がこの曲を演奏禁止としていた。それほど感動的な曲です。


https://www.youtube.com/watch?v=D8DxmUutTgc

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