十二話 相棒が出来たそうです
「うまいな…」
俺はあまりの美味しさにつぶやいた
「おう!たまたま採れたんだが
これは今朝採れたばかりの旨牛だからな!」
鼻を手でこすりながら
父さんは言う
旨(うま)牛(うし)とは
名前の通り旨味を閉じ込めた最高級の牛で
数が少なく人族の間では
超高額で取引されるとか…
この時俺は産まれて始めて旨牛を食べたが
旨すぎる!なんだこれ!
日本でもこんなの食ったことがないぞ!
俺は目の前の料理に感動する
すると隣に座っていたルミリアが
「あっセラフィ!ほっぺについてるよ!」
そう言うと俺の頬についた肉のソースを
人差し指で絡め取り自分の口へと運ぶ。
「ん〜‼︎おいし〜い!」
ソースのついた指をしゃぶりながら
ルミリアは笑顔で言う
指についたソースを味わった後
俺の皿に盛り付けられた
肉を眺めながらヨダレを垂らしている
「ルミリア?食べてもいいよ?」
ルミリアの方に皿を差し出す
「えっ⁉︎本当に?もらっていいの?」
ルミリアはジュルリと口の中に
ヨダレを回収する
「うん!もちろん!」
そう言うと満面の笑みで
「ありがとう!セラフィ大好き!」
余程気に入ったのだろう
無我夢中で旨(うま)牛(うし)を
口に運んでいる。
するとさっきまで大人しくしていた
父さんがちょっかいをかけてきた
「よかったなセラフィム!ルミリアが大好きだってよ!モテモテだなセラフィムは!」
父さんは楽しそうだ
だが癪に触るので一言
「父さん?(怒)」
すると父さんは
用事があったとかなかったとか言って
その場から離れていった俺の勝ちだ
そんなことを考えていると
ルミリアの声が聞こえてきた
「へはひぃはーんひへ」
モゴモゴしていて何を言ってるか
全くわからない
「ルミリア?なんだって?」
俺がそう言うとルミリアはごっくんと
食べ物を飲み込みもう一度言う
「セラフィあーんして」
するとルミリアはジリジリと
スプーンの様な物に乗せた旨牛を
俺の口に近づける
「ほらっ!」
そう言われて
慌てて口を開ける
「どう?おいしい?」
ルミリアは顔を斜めに傾けて聞いてくる
「んっほいひい」
ルミリアがあーんしてくれるんだ
美味いに決まってる
俺はルミリアがあーんしてくれるなら
毒でもゲテモノでも食える
そう思えるくらいにルミリアはかわいかった
「そう?よかった!」
ご機嫌の様だ
口角が上がりっぱなしである
そんなことをしていると
いつの間にかパーティは終わっていた
楽しい時間は過ぎるのがはやい…本当に
その日はルミリアとまた明日特訓をする
約束をしてわかれた。
家に帰り俺はすぐ自分のベットに入り
眠った
「おい!起きろって!」
どこか聞き覚えのある男の声がする
目を覚ますとそこは
一面青々と茂る草で埋め尽くされた草原
頭上には青空が広がっている
もちろん村もなければ寝ていたはずの
ベッドもない
「やっと起きたか」
ハッと俺は声の方向に顔を向ける
するとそこには赤髪で赤い目をした
少年が立っていた
「えっと…君は?」
みたところ俺と同い年くらいか…
っていうか俺に似てんな…
ん?俺じゃね⁉︎
「俺はもう一人のお前さんだ」
あぁーやっぱり
俺だもん絶対
違うところ髪と目の色だけだもん…
「で?もう一人の俺…こんなところに
呼び出してどうした?」
するともう一人の俺は不思議そうに
聞いてくる
「驚かないんだな」
「まぁ色々声とか聞こえてたから今更だよ」
俺は本心を口にする
「まぁそれもそうだな」
納得した様に頷くと続けて喋り出す
「なんで呼び出したかっていうと簡単に
いえば自己紹介だ。
まぁそう警戒するな俺はお前さんの仲間で
敵ではない」
両手をヒラヒラとさせ笑いながら言う
「そうだな…で自己紹介は?」
俺は訪ねる
「そうだったな…俺はメアに頼まれて
お前さんの中にいるわけだが」
「メアの⁉︎」
その言葉を聞いて俺は安心する
なぜなら俺を転生させてくれた
神様なのだから
「あぁお前さんの事が心配だから
助けてやってくれって言われてな」
「そうか…メアがそんなことを」
するともう一人の俺は草原に座り
あぐらをかきながら喋り出す
「まぁ立ち話もなんだお前さんも座れよ」
促されて俺は草原に腰を下ろす
「まぁぶっちゃけいうと俺はお前さんが
嫌いだった」
もう一人の俺は体を前かがみにして言う
「だがまぁあのルミリアってやつが
やられた時は最高だったぞ!」
笑いながら言う
「そういえばあの時が始めてだったな
俺の頭の中にお前が話しかけてきたのは」
俺は軽く笑いながら言う
「そういえばそうだったな
まぁそうだろそれまで俺はお前さんが嫌いだったんだから」
「今は?」
俺は訪ねる
すると笑顔でもう一人の俺は言う
「あぁ過去は過去 今は今だ
俺は好きだぜお前さんの事」
「野郎に好かれてもな」
俺は半笑いで答える
すると
「ハッハッハッハ ちげえねぇ!お前さんは
あのルミリアってやつが大好きだもんな!」
知っていて当然の様に言う
「ハァ?バッ、バカ ち、ちげえし」
よくある言っちゃってる奴の言い訳にしか
聞こえないような言い訳を言ってしまう
「いや好きだろ?お前さんルミリアに
キスされてすごい喜んでたじゃねぇか」
「な…なんで?分かる」
もう一人の俺の解答は100パーセント正解だ
「そりゃお前さんが見たもの聞いたこと
感じたことやら全部供給されるんだから
当たり前だろ?」
さも当然の様に言う。
「まじかよ…」
「まぁ別にいいんじゃねぇか?俺はお前さんでお前さんは俺だ、俺だってあのルミリアって子
結構好きだぜ?」
「ルミリアはやらんぞ!」
俺は慌てて口にする
「いやっ冗談だけど…てかお前さんは
やっぱり好きなんじゃねぇか…
まだ話し足りないがそろそろ時間だ
あっちでも話すからちゃんと返事しろよ?
俺は暇なんだ」
「えっ?ちょっとまっ」
すると光に吸い込まれていく様な気がした
「あぁ最後に…これからはよろしくな相棒」
その言葉を最後に
俺の体は光に包み込まれた
ハッと体を起こすとそこはいつものベッドの
上だった
「まじかよ…」
こうして俺に初めての相棒が出来た
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