第四章・涙9
電話を切り、また制服に着替えた僕は、一度、寝室に戻った。疲れからか、深川は裸のまま、いびきをかいて寝ていた。年齢を無視した格好ばかりしていた深川のそのいびきが、いかにも年相応に思えて、初めて自分よりずいぶん大人の彼女を可愛く思えた。暖房が利いているとは言え、季節は冬だ。布団をしっかりとかけて、最後に頬に触れる。家出する時のエンに倣ったつもりだ。姉に倣ってばかりの弟。僕。そんな風に思うのも、状況も初めてだった。あの時の僕と違って、深川が起きている様子はない。だけどあの時のエンのように、気付かないだけかも知れない。もう、どちらでもいい。さよなら、先生。ありがとう。完璧な男の子になれなくて、ごめんね。
殆ど手ぶらの僕は、そのまま深川の部屋を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます