大怪鳥チャモを討伐せよ
−−マナ−−
翌日
クエスト
密林の暴れん坊
難易度 normal
報酬 200クラン
依頼主 研究家
内容 私の生態調査に関する論文を提出するため、そしてチャモ肉の調達のために密林で目撃されている怪鳥、チャモを狩ってその血肉をよこしてほしい。
奴らは怒らせると凶暴で攻撃性が増すから気をつけてな。
あの後、応急処置として回復魔術と止血はしたものの
気絶してしまったレオトをダンゾウが背負ってペルーまで帰還した。
今頃病院で眠っているだろう。
レオトを除いた3人は彼抜きでクエストを進めようと集会所に集結していた。
「ほんまはな、軽装で動きが素早いレオトをそこまで前に出して戦わせるべきではないと思ってたんや。でも初心者の君らの戦い方、戦闘スタイルやな。それが見たかったし、新参者のユノが口出しするのもアレやと思ったから敢えてしやんかった。でも結果としてレオトがああなってしまったのはユノに責任あるから謝っとくわ。ゴメンな」
そんなこと‥‥ない。
「そんなことないよユノ!あなたがいなかったらきっとあれでは済まなかった!全滅していたかもしれないのに!」
「そうだよ。あのバカが1人で作戦考えて1人で自滅しただけなんだから深く考える必要はないって。今頃天国で笑ってるはずだよ」
ダンゾウもフォローのつもりで言ってくれたのかは知らないけどもう少し言い方があるでしょ‥‥
「ありがとう2人とも。レオトが目ぇ覚ましたらお見舞い行こなぁ。あと、前回のミスを踏まえて今回はあらかじめ作戦立てとこな」
スナイパーライフルのグリップあたりからマガジンを取り出して弾を確認したり弾づまりしていないかいちいち分解してチェックしながらユノが言った。
「まずはダンゾウな。ダンゾウはタンクの役割をしてもらうねんけど、あっ、タンクってわかる?専門用語やねんけど。要するに殴られ役って意味な。君が一番体力ありそうやから」
マジか〜ダンゾウ可哀想だな‥‥
「えっ?前に出てやられたらいいってこと?」
なんか少しばかりニヤつきながら聞き返すダンゾウ。
Mなのか‥‥?
「そーそー。できたら倒してほしいけどなぁ。スキ作ってくれたらユノが撃てるから。当たったら堪忍かんにんしてな〜」
当たったら死ぬでしょ〜!堪忍する前に死んじゃうよ〜!
「ユノちゃんへの好きを作ったらアタックしてくれる‥‥これは恋か?恋なのか!?」
何を言っているんだ彼は‥‥
「ありがとうございます!」
!?
触れないでおこう‥‥。
「で、マナは回復。あと敵見つけた時にマーキングとかステータスアップとかで援護してほしい。いける?」
「うん!任せて!」
攻撃系も多少はできるけど今は2人に任せよう。私の出る幕じゃない。
「じゃあ、そろそろ行こか!」
◇◇◇◇
チャモーD〜Cランク
ネクターでも生息地が限られている怪鳥。その肉は高級料理に使われ、血に含まれる物質は薬学などでも重宝される。普段は大人しいが刺激を与えると目標を仕留めるか、捕獲するまで止まることはない。
ちょっと初心者が受けるクエストにしては難しすぎじゃないかな‥‥?
でもまぁユノがいるし、作戦立てたし‥‥きっとうまくいく!
3人はまたもやサマリン密林に向かうためにソニック平原を進んでいた。
「ねぇマナちゃん」
珍しくダンゾウが私に声をかけてくる。しかも小声でユノに聞こえないくらいの声で。
銀色に輝く重そうな甲冑がカチャカチャと動くたびに音を鳴らし声を掻き消しているからかもしれない。
「何よ?」
「なんかユノちゃん臭くない?」
言われてみれば確かに臭い。というか意識したらめちゃくちゃ臭い。なにこれ昨日はこんな臭いしなかったのに‥‥え、えええ〜‥‥
クエストに対する緊張感の種類が一気に変わった。
「ダンゾウ。あんた空気読めないから言っとくけど、レディにそーゆーこと直接言うんじゃないわよ」
なにが原因かはわからないが、兎に角ここでは口は災いの元だと思っておこう。
ダンゾウは手でグッドを作って快く了解してくれた。
「この辺かなぁ‥‥」
しばらく進み続けて見通しの良い畑でユノは立ち止まり、ポツリと呟いた。
「ユノ、どーしたの?」
「ああ、言い忘れてたな。チャモは珍しい鳥やから密林で探すのは苦労するんや。しかも密林でそんな大型モンスターと戦ったらどっから横槍飛んでくるかわからんやろ?やから、これを使うんや」
そう言ってユノはミリタリーバックから紐がきつく縛られた大きな布袋を取り出した。
ナイフでそれを切って中から何やら青色の薬草と酒瓶、魚と生肉を取り出した。
袋を切った瞬間に辺りに充満する悪臭。ダンゾウは鼻をつまんでいる。臭いの元はこれだったのか!
「ユノ、これ何‥‥?」
「臭かったなぁ、ごめんごめん。これは海の中に生えてるカマクラ草、ジャム酒にタチ魚、最後はバーバリアンの肉の一部な。これをまとめて燃やしたらチャモを臭いでおびき寄せれんねん」
ユノは鍋ぐらいの大きさの穴を掘ってそこに材料を一気に投入した。ベテランはこんな情報もしっているのかと感心させられる。
「燃やしたら今より臭うから2人とも離れときな」
ユノは魔術を唱え、小さな炎の玉を穴の中に放り込んだ。カマクラ草と呼ばれる草が徐々に燃焼され始め、魚や肉を巻き込んで煙が上がっていった。
私とダンゾウは10メートルくらい離れて鼻を手で覆って見ていたがユノはそこから動こうとはしなかった。
「臭くないのかなぁ‥‥」
私はその様子を伺いながらそう呟いた。
「鼻でも詰まってるんじゃない?それか嗅覚に異常があるとか。どっちにしろ病院行った方がいいよ」
「あんたのものの考え方も病院レベルでおかしいと思うけど‥‥」
慣れているのか、モンスターがいつ来るか見張ってくれているのか‥‥
しばらくするとユノはこちらの方に向き直って笑顔で走ってきた。
「慣れへんなぁ。臭くて死にそうや〜」
ユノははぁはぁと少し息を切らしながら辛そうに言った。
「何してたの?」
「ああ、罠設置してたねん」
「罠?シビレ罠とか落とし穴とかそんな感じ?」
マナがそう言うとユノは腹を抱えてケラケラ爆笑し始めた。何かおかしいことを言っただろうか‥‥
「シビレ罠はともかく、落とし穴はいまどきないやろ〜あははははははっ!」
なんか恥ずかしくなってきた。
「じゃあ何なのよ!あの罠は!」
「あれは設置型の爆弾やで。C4爆弾とか呼んでる人もおるなぁ。まぁセンサーが反応して自動で爆発してくれる便利アイテム!」
すげ〜。何そのチートアイテム。敵一発で吹き飛ぶんじゃない?
「ねぇ、それって報酬よりも罠の方がお金かかるんじゃない?」
ダンゾウが鋭い質問を投げかける。確かに少しばかり高そうな罠だ。
「いや、3つセットで10クランぐらいやで。コスパアイテムやからよー使ってんねん。おびき出しも一式で5クランぐらいやな。これだけで一気に難易度下がるから初心者にはもってこいのアイテムやで」
そんな感じで話をしながら数分が過ぎた頃、遠い空から二頭の大きな影が迫っていた。
「来たなぁ!あれ?‥‥‥二頭‥‥‥?」
さっきまで余裕の表情で話していたユノの表情が焦りに変化した。
黒に覆われた鱗と翼、白い剛毛がびっしりと生えた3メートル程の体躯を持ち、足から伸びた爪と翼の先に鋭い翼爪がナイフのように尖っていた。
もう一体はその一回り大きな体を持って地上に降臨した。
チャモの想像していたイメージと全く違う‥‥。
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