Vsヴァンパイア

ーーネオーー


カンナが完全に戦意喪失し、今にも意識を失ってしまいそうだったその時、疾風迅雷のごとく凄まじい一筋の閃光がカンナの首根っこを掴むヴァンパイアの腕の関節に走った。


カンナは意識朦朧とする中、両手で切断されたヴァンパイアの腕を自分の首から取り上げ投げ飛ばした。


「ゲホッ、ゲホッ‥‥‥」


咳をしながらも深く息を吸い込む彼女の姿が見えた。


「よかった‥‥‥間に合った‥‥‥」


カンナが太陽剣を握りしめたネオの容姿を見つめ、少しぐったりした表情で微笑む。


「やってくれたな!!」


ヴァンパイアが怒鳴る。


切り落とした腕の断面は激しく燃焼しているが、そんなものはどうでもいいのかヴァンパイアの眼はネオという少年だけを睨みつけていた。


「それはこっちのセリフだ!!」


俺は太陽剣を両手で強く握りしめ、その言葉とともに力任せにヴァンパイアの首を狙う。


眩い光の剣撃が相手の首元のすれすれを通り過ぎていく。光の美しい軌道を描きながら。


焦るな。相手はまだ片腕だ。再生する前に殺す!!


「もらった!」


このヴァンパイアの体軀には似合わないほど大きな腕と同化した大剣が迫り来る。


この狭い本棚の並ぶスペースで躱せる幅などない。


そこで俺は敢えて体を倒れさせ仰向けになった。


自分の体の上に巨大な大剣の影が覆い被さる。


「足元がガラ空きだぜ!」


瞬時に腰にかけていたサンライトバスターを取り出し、照準をヴァンパイアの足に合わせる。


ピカッと目の前が光に包み込まれダークアイの効力もあり、数秒間視力が奪われた。


クッソ!しくじった!こんな欠点があったとは!

グラサンでも取ってくるんだった。


だがそれ以上に光に下半身を照らされたヴァンパイアは窮地に立たされていた。


「な‥‥‥に‥‥‥‥?」


まだ視力が完全に戻っていない状態でも奴の下半身が消滅していることは確認できた。


地面に身体が崩れ落ちる。言うまでもなく大剣ごと。


落下してくる大剣を太陽剣でガードする。重い!


大剣も身体の一部だからと言って太陽光が効かないという道理はない。少しずつヴァンパイアの大剣を火炎が取り巻いていく。灰になりながら。


やっと目が慣れてきた。


俺はようやく立ち上がり、ボロボロになったヴァンパイアを見下ろす。


「動くな‥‥」


太陽剣をヴァンパイアの頭部に構えながらネロは言った。


徐々に身体が再生していくのが肉眼ではっきりわかる。腰から、少しずつ。もちろん切り落とした右腕も。


「やられてたまるか!」


ヴァンパイアは背中から翼を生やし、バサバサと音を立てながら逃亡を試みた。


「甘い!」


双翼を貫通させるように太陽剣を地面に突き刺した。


「目的はなんだ?」


「すべてはグラルダー様のため‥‥」


かすれた声を絞り出すように上司だかボスだかわからない名前を口に出した。


俺は翼に刺さった太陽剣を引き抜いて足でヴァンパイアの身体を踏みつけ固定し、剣を首筋に当てて敵を脅す。


「カンナが狙いか?答えろ!!」


「お前らが嘆き、苦しむ表情を晒すのはすぐ‥‥‥そこ」


「話にならねえ」


俺はそのまま太陽剣でヴァンパイアの首を切り落とし、吐き捨てるように言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る