闇の中へ

扉の前にあるセキュリティシステムに自らの生徒証をかざして本人認証を行う。機械からピーッという音が鳴ると武器倉庫への扉が開かれる。


以前から武器倉庫にはときどき立ち寄ることがあった。その目的は様々だが主に武器の実戦演習や狩猟をするために武器を取りに来るのである。


サンダル大学の武器倉庫には如何にも武器らしいものから一見これは果たして武器なのか?と目を疑うようなものまで数多く揃っていて、100種類以上の武器があると聞いている。


ただ100種類の武器があると言ってもそれらを全て使いこなせる達人などおらず、結局のところ無難な剣やら銃やら槍なんかに収まるのである。


多いのは種類のみに限らず、その数も他の大学と比べると群を抜いている。たしか約1万個に及ぶのだとか。

そんな中からどうやってお目当の武器を見つけるのかと言われたら武器の種類がフロアごとに分け隔てられていてその入り口にあるタブレットを操作すればすぐに場所を特定できるのである。


「カンナはなんか武器取っとくか?」


俺はフロアの入り口で先にカンナに尋ねた。


「んー、私じゃどんな武器を使ってもヴァンパイアには勝てないと思うんだけどなぁ〜接近戦はあまり得意じゃないし‥‥」


そういえばカンナの唯一の弱点は接近戦を苦手とすることだった。座学や魔術はトップクラスでも武器を使った演習のある日だけは憂鬱そうな顔をしていた。


「あっ、私図書室に行ってくるよ!武器は使えなくても魔術なら使えるし!ヴァンパイアに効く魔術書を読んで1つか2つ覚えてくる!」


図書室か‥‥武器倉庫からはかなり近い。エレベーターで2階から地下1階に降りて少し歩くと図書室の入り口だ。


「ヴァンパイアの弱点って日光だよね!それ系の魔術覚えてくるよ!」


「1人で大丈夫か?」


さっきはだいぶビビってるご様子だったけど平気なのだろうか。


「大丈夫だよ!それくらい1人で行ける!」


さっきの暗そうな顔つきからは一変して彼女は太陽のように明るい笑顔で武器倉庫を出ていった。


「さてと、じゃあ俺はオプションに日光属性の銃と剣を1つ探しに行きますか」


そう呟きながら俺も武器倉庫の奥へとずんずん進んでいった。


「サンライトバスター‥‥‥あ、これだ」


銃のあるフロアのタブレットを操作しながら武器を特定する。


「3642〈サンライトバスター〉拳銃のような形をしたブラスター型のバスター。小さい割にはロックオン機能が付いていて日光で充電するタイプだ。基本的には近距離で扱うがロックオンをうまくできるなら遠距離攻撃も可能。なかなかの代物だ」


サンライトバスターの説明を確認し、表示された武器ナンバーのある引き出しからそれを取り出す。充電ゲージは100%を示している。


次に剣を取りに行く。これで接近戦も可能だし、間合いを取られても銃で応戦できる。


「5926〈太陽剣〉特殊な製法で太陽の光を剣全体に帯びるように作られた剣。暗いところでは光を放ち辺りを照らす。対ヴァンパイア用。す、すげー‥‥こんな剣俺が使っていいのか‥‥バルダーノさんが使えば最強じゃねーか。ってかよくこんなもん大学にあるな!」


だがやはり、どんなに強い剣を装備していようと当たらなければ意味はない。これもティーチャー、バルダーノから学んだことである。


さっきの戦闘でも結局俺は一撃も相手にくらわせることができなかった。それでは意味がないのだ。


「よし、今の状況で護身用としては上出来の装備だ。ティーチャーもいる。武器もある。隠れる場所もある」


考えつくだけのことはすべてした。あとはカンナと合流して戻るだけだ。今夜はそれで終わる。


武器を探したり見たりして時間をくっちまった。20分ぐらい経っただろうか?カンナもそろそろ図書室で魔術書を読んでいる頃だろう。もしかしたら、何かいい魔術を覚えてるかもしれない。


魔術については必須魔術と推奨魔術などに分かれていて、役に立つ魔術は基本的に全員が覚えなければならない。クエンなどがその例だ。

しかしその精度には個人差があり、一流の魔術師と二流三流の魔術師とでは同じ魔術でも天と地の差がある。


個人的に覚えたい魔術があれば図書室なんかで自主的に覚えて、それをマスターすることも可能だ。今、カンナがしていることはそれである。彼女ほどの資質があればそんな魔術の1つや2つ、簡単にマスターできるだろう。超高等魔術となれば別の話だが。


武器倉庫の扉から出て、カンナのいる図書室へ向かおうとしたその時だった。


「え?」


目の前が真っ暗になっていた。目はしっかり見開いている。校内の電気が消えた、即ちブレーカーが落ちたのだ。


このタイミングでブレーカーが勝手に落ちる意味‥‥‥それもサンダル大学という名門大学で。夜だから消灯したということも考えたが、それなら廊下に一定の間隔で光が灯されているはずだ。ありえない。


勝手に落ちたのではない、人為的に落とされたのだ。


誰に?そんなの決まりきったことではないか。


電力室、地下1階。地下1階?心当たりがある。カンナのいる図書室の隣じゃないか!!

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