おせっかい妖精モモ

まよなかちわわ

愛の手

「食えよ 、ほら!」


おかっぱの小さな女の子が、男の子たちに囲まれている。1人の男の子の手には、えんぴつ。


女の子は、泣いている。


もー、ガマンできない。


私は、男の子たちの上空に姿をあらわし、ポケットから、妖精の粉を取り出し、粉を男の子たちにふりかける。


「眼が!眼が!」


私は、女の子の肩の上に乗り、耳元でささやく。


「今のうちに逃げて!」


「私を助けてくれるのは、誰?」


女の子は、そう言って、肩の方を見て眼を丸くさせた。


「私は、妖精。名前はモモよ」


女の子は、小さくありがとうと言ってランドセルを揺らして走りだす。


私も 再び上空から女の子の後を追う。



女の子は、走るのを止めて、ひとけのない小さな公園に、入っていく。


女の子は、ジャングルジムを登っていき、てっぺんで止まった。


「モモ、いる?」


私は、女の子の肩に舞い降りる。


「いるわ。上空から追いかけてたの気がついてた?」


「ううん、追いかけてくれると思ったの。だって妖精さんでしょ?心の美しい人にしか見えないはずの」


「そっかぁ!妖精はね、実はすべての人間には見えるの。ただ、気がつかないだけ」


「そうなんだ。モモの姿よく見せて!」


「いいよ」


私は、女の子の肩から降りて、女の子が伸ばした手のひらに止まる。


「モモは、キレイな羽が四枚あるのね。マカロニのような緑の髪もステキ。あとは、人間の姿でとても小さいだけなのね」


「マカロニ?巻き毛のことね。それにしても手のひらが暖かいのね、えっと?名前は?」


「ごめんなさい。まだ言ってなかったわね。私は、朝比奈詩乃あさひなしの、12歳。モモは、何歳?」


「私は、妖精年齢だと、2歳ちょっとね。人間歳は、7の倍数で換算するから17歳くらいかな?」


「ところで、モモは、なぜここにいるの?」


「それはね……」


私は、話を始めた。







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