第227話 もう二人のガリア遣い
一人は黒髪を短く切り上げた、中背の若い女で、たれ眼がちの瞳は茶色、肌は白かった。そばかすが多く、こざっぱりという印象を持っており、肩幅があって厚着の下には筋肉質な身体が隠れていそうな雰囲気だった。名を、ライバといった。歳は二十二だという。
もう一人は、金髪を後ろでお下げにした、やけに痩せた背の低い女で、瞳はマレッティに似た青だったが、逆に日焼けした肌は浅黒い。歳は二十七でライバより上だったが、ライバの部下だという。物静かな、無口な女性だった。名を、タルメターラという。
「サラティスで云う、バスクとセチュみたいなもんなんだわ、きっと。それに、スターラじゃ、食べ物が悪いから貧乏人はチビで痩せてて、金持ちはでかくて太ってるから。分かりやすいわよお」
マレッティがカンナへサラティス語でささやいた。
アーリーが、二人と握手をした。
「よろしくたのむぞ。私はアーリー。サラティスのバスクだ。こっちがマレッティで、こっちがカンナ。二人とも、強力なガリア遣いだ」
「よろしく」
それぞれ、握手しあうが、タルメターラはまるで口をきかない。軽く、会釈するだけだ。
「しかし、盗賊が相手とはいえ、もう三人はガリア遣いがほしいところだな……いや、盗賊だからこそ、か。竜の一頭や二頭なら、私一人でも充分だが、盗賊が十人二十人となると、そうはいかないからな」
アーリーが、だいたいそろい始めた隊商を眺めてつぶやいた。
「そうですね。……ちょっとこの規模で五人じゃ、もてあましかねませんね。アーリーさん、隊列は、どのように配置しますか?」
ライバがしっかりした口調で指示を仰ぐ。タルメターラはあくまで無言だった。カンナは、ますます、バスクの会話に立ち入ることを許されないセチュを思い出した。
「そうだな」
アーリーは、隊列の左右に三人と二人でガリア遣いを分けた。進行方向へ向かって右側にカンナとライバ。左側にマレッティ、タルメターラ、そしてアーリーだった。
「それにしたって、大型の荷馬車十二台じゃ、距離があるわあ。竜を相手にするより、難しい仕事かも」
マレッティが口を尖らせる。
「ですが、盗賊団といいましても、相手の全員がガリア遣いというわけでは。人間相手なら、この数の衛兵でなんとかいけるかと。向こうのガリア遣いも、我々と同じくらいの数だろうと思います。同じ数なら、カルマのみなさんの強さなら……」
「なんとかなるってえのお? あんたたちは高見の見物う?」
「い、いえ、そういうわけでは……」
思いも寄らない返事に、ライバが面食らってひるむ。マレッティは鼻を鳴らして、深いフードをかぶって顔を隠し、向こうへ行ってしまった。
「……何か、悪いことを云ったかな……」
ライバが困ったように髪をかきあげる。タルメターラが、じっとりとした目つきでマレッティを見すえていた。
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