第124話 苦戦

 さすがに、船の上から海生竜を狩るガリアをもった者たちだったが、なにせ数が多い。しかも、全長三百五十キュルト(約三十五メートル)はある、この船よりも長い巨大な蛇のような肢体が波間に現れる。


 「大海蛇が来たよお!」

 錨のほうが大声を張り上げた。


 ぐうん、と船が三角波の頂点から一気に下がり、さしものアーリーも重心が浮き上がってバランスを崩す。遅れて甲板に上がってきたマレッティとカンナはそこらの物体にしがみついたまま、動けなくなった。


 さらに、ドオッ、と轟音がし、波といっしょに海の主戦竜である海戦竜の「大海蛇竜」が体当たりをぶちかます。


 「うああ!!」


 甲板の上を押し流す津波めいた大波をかぶって、三叉銛のほうのガリア遣いが流される。マレッティとカンナの眼前を通り、名前も知らないガリア遣いはカンナの伸ばした手も届かず、そのまま流されて船縁に叩きつけられ、いやな音を立てて血をふりまき、まっさかさまに海へ落ちた。


 瞬間、海騎竜が一頭、飛び上がった。口にいま落ちたガリア遣いの上半身をくわえている。


 カンナはその竜と目が合って、思わず背筋が震えた。まったく勝手がちがう。


 さらに、大海蛇がもう一度ぶちかましてくる。狙ってやっている。船を攻撃する方法を心得ているのだ! 


 竜のおこした横波に、タータンカ号が大きく横倒しになる。ぎりぎり転覆する寸前で復原し、その反動で甲板上はしっちゃかめっちゃかだ。


 「おのれ!!」


 アーリーがガリア「炎色片刃斬竜剣えんしょくかたばざんりゅうけん」を出した。そのアーリーの背丈ほどもある巨大な片刃で火色の剣から、雨と波飛沫を蒸発させて炎が吹き上がる。


 「お、おおい、火は、火はだめだ、船が燃えたらどうするんだ!!」

 船長ががなりたてた。

 「なんだと!?」

 「油も積んでるんだぞ!!」


 アーリーは舌をうち、炎を消した。ただの剣としても主戦竜級など細切れにできるが、なにせ相手は海の中だ。


 「マ、マレッティ、あたしたちも……」


 カンナもガリア「雷紋黒曜共鳴剣らいもんこくようきょうめいけん」を手に出す。マレッティも震えながら、ガリア「円舞光輪剣えんぶこうりんけん」を出した。とたん、また船が反対側へ大きく揺れ、波が襲ってきた。マレッティが流され、甲板を転がった。


 「マレッティ!」

 「うわあああああ!」


 マレッティが聴いたこともないような叫び声をあげ、ガリアも何もなく手足をばたつかせる。波が引いて、マレッティは甲板の真ん中で倒れたまま、いつまでも絶叫をあげてバタバタ暴れていた。


 カンナが走り寄る。

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