甲羅を加工してもらいました。
今日も勇者は東門から抜けてロンリーウルフを相手にレベル上げを行っているらしい事を冒険者ギルドで知る。
なので、今日はスライムの森には行かずに町中の依頼だけをこなして行こうと思う。
クロウリさんとレグフトさんとは別行動だ。二人はそれぞれ黒魔法のレベル上げの為に黒魔法を連発する為に東門から外へ出ている。レグフトさんが同行している理由はクロウリさんが放った黒魔法を白剣で切り伏せる為だ。そうする事によって、白剣のレベル上げも行う事が出来て一石二鳥だとか。
その場に俺がいても役に立てる訳じゃないし、東門の外には行きたくなかったので別々に行動する事になった次第だ。
倉庫の片づけを行ったり、荷物を届けたり、迷子の子猫を見付けたりして、今日一日は終了。今日も勇者と遭遇する事無く過ごす事が出来た。
ただ、危うく冒険者ギルドで会いまみえそうだったんだよね。俺が依頼完了の手続きをする為に赴いた数分前に勇者がギルドに来て換金して出て行ったそうだ。
その際に「もう少し早く来ていれば勇者様に会えましたよ」と受付の人に言われた。うん、ぎりぎりで出会わずに済んでよかったと内心で呟き、小さく安堵の息を吐いた。
ある意味で綱渡りのような一日を終え、次の日。昼を少し過ぎた頃に俺はドールン工房へと足を運ぶ。ウィードタートルの甲羅で出来た新たな球とハンドアックスを受け取りに行く為に。
一応、今も使っているハンドアックスはそのまま続投する。愛着を持ってるし、ウィードタートルの甲羅を使用した方が壊れても攻撃手段を失わずに済むからね。
あと、単純に鉄製のハンドアックスの方がウィードタートルの甲羅を用いた奴よりも重量がある。つまり、重い分スマッシュ攻撃の威力が上がるのだ。単純な攻撃力では鉄のハンドアックスに分があり、振りの速度はウィードタートルの甲羅の方が速い。
スペアと言うより、ここぞと言う時の一撃を繰り出す為の必殺武器と言う名目で温存する事になる。なので、これからは基本ウィードタートルの甲羅で出来たハンドアックスで攻撃し、強烈な一撃を入れたい時は鉄のハンドアックスをぶちかますスタンスで行く。
「おぅ、出来てるぞ」
ドールン工房に入ると、ドールンさんが新しいハンドアックスと球を工房の奥から持ってくる。
ウィードタートルのハンドアックスは形状こそ今のものと同じだけど、刃がある金属部分がまるまるウィードタートルの甲羅に置き換わっている。色は淡い青色で、何層も積み重なっているような波紋が浮かび上がっている。柄の中にも芯としてウィードタートルの甲羅が使われている。
球の方もハンドアックスと同じ色合いと波紋が浮かんでいて、鉄の球よりもかなり軽い。手に持った感じ、だいたい二分の一くらいの重さかな。それを計四個作って貰った。
ウィードタートルの甲羅はかなり大きかったから、これ以上多く作って貰う事も出来たけど、俺だけだとハンドアックス一本と甲羅の球四個が限界だった。
加工にお金がかかるし、そのお金を作る為に大部分をこのドールン工房で買い取って貰った。で、買い取って貰ったお金で加工して貰い、それらの差額はクロウリさんとレグフトさんに渡した。
「どうもありがとうございます」
俺はウィードタートルのハンドアックスにスライム皮を貼り付け、ドールンさん達に礼を述べて早速試し打ちに行く。
何時も通りスライムの森へと向かい、ブルースライムを相手にする。勇者は今日は湿地帯に赴きそこで一泊するそうなので、遭遇する事はない。あと、今日もクロウリさんとレグフトさんはそれぞれの魔法、スキルのレベルを上げる為に別行動を取っている。
スライムの森に入り、早速遭遇したブルースライム相手に甲羅の球をバックハンドサービスで放つ。
甲羅の球は鉄球よりも速く、そして回転数も多くブルースライムへと向かって行く。甲羅の球を直撃したブルースライムは例の如く球が貫通してしぼんでいく。その際に球の回転に飲まれてフォアハンド三球目攻撃と同じように回転した。ぎゅるぎゅると錐揉み回転を受けたスライムは中身を辺りにぶちまけた。
バックハンドサービスでこれくらいなら、フォアハンド三球目攻撃はどうなるのだろうか? 気になったので、襲い掛かってきた二匹目のブルースライムに試してみる。
ハンドアックスの振りが素早くなり、総じて攻撃の出も早くなった。
それに加えて、三球目攻撃のスピードドライブを受けたブルースライムは球の回転に巻き込まれなかった。代わりに、球の回転でその身体を削られると言うか抉られると言うか、がりがりと体の表面が飛び散って、ついでに中身も勢いよく飛び散って行った。
鉄のハンドアックスの時より、悲惨度上がったなぁ。ブルースライム相手にはオーバーキルだな。
その後は一度だけスマッシュスイングでブルースライムを倒し、残りはドライブスイングで倒していった。
スマッシュスイングを受けたブルースライムはやはり爆散したけど、鉄のハンドアックスの方が僅かに悲惨度が高かったな。ドライブスイングの出が速くなったので、ブルースライムを倒す時間が短くなった。なので、少し多めにブルースライムを倒す事が出来た。
陽も暮れたので、俺は町へと戻る。冒険者ギルドへ赴いてスライムの皮も換金して、懐が少し温かくなった。
「さて、今日は何を食べようかな」
俺はギルドの喫茶コーナーへと向かう。今日は絶対に勇者と会う事はないから、ギルドでゆっくりしてても問題ない。
「あ」
「いた」
席に案内され、メニューを見ているとクロウリさんとレグフトさんも喫茶コーナーに来た。彼女達と相席になり、メニューを選び終えると互いに近況報告をする。
「まだ【黒魔法Lv5】は上がらない。で、アンデッド核が尽きた」
「私の方は【白剣Lv3】に上がったぞ。アズサ殿の黒魔法を切るとここまで上がりやすいとは思わなかった」
クロウリさんは少し肩を竦め、レグフトさんは少し満足そうに語る。で、二人曰く黒魔法は主にLv5で使えるブラックグラビティソードと言う闇と重力を纏った剣を作り出し続けたそうだ。詠唱時間はブラックグラビティエリア以上で、一日に十発が限度だそうだ。
なので、クロウリさんとレグフトさんは互いに黒と白の剣で鍔迫り合いをしていたそうだ。ブラックグラビティソードは【白剣】でもそう簡単に切れず、何合か斬り合って漸く切れたそうだ。
あと、斬り合う際にレグフトさんは力を弱めていたそうな。そうしないと筋力が無いクロウリさんを吹っ飛ばす危険があったからだとか。それもあって直ぐにブラックグラビティソードを斬る事が出来なかったっぽいな。
「俺の方はウィードタートルの甲羅で作って貰ったハンドアックスと球をスライム相手に試したよ。まさか、悲惨度が上がるとは思わなかった」
俺も今日の試し打ち試し切りの出来事を二人に伝える。そしたら二人は少し引いてた。うん、その気持ちは分かる。
で、その後は夕飯を食べながら明日の予定を話し合う。まぁ、話し合うと言ってもアンデッド核が無くなったからまた取りに行く段取りを確認しただけだけど。今回はウィードタートルの甲羅が必要ないから、この前の時より少し遅めに町を出ても余裕がある。
明日は陽が傾いてきた頃合に湿地帯へと向かう事にし、夕飯を食べ終えた俺達は解散してそれぞれの寝床へと向かう。
……まぁ、明日の夕方前なら今湿地帯にいる勇者に会う事はないだろ。明日町に戻るらしいし。入れ替わりで湿地帯に向かう事になるから、大丈夫……かな?
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