無事に終わりました
甲羅は固いので、その場で分割する事が出来ずその場に放置と言う事になった。ついでに、ここを野営の拠点とする事にした。ウィードタートルが寝ている場所と言う事か、今の所他の魔物と遭遇しない。
ウィードタートルの甲羅を壊せる魔物はこの湿地帯には存在しない。一つ目マイマイの溶解液は背中の植物で防ぐし、甲羅に直接当たっても溶けないとか。なので、襲っても無駄と分かっているんだろう。多分。
と、言う訳でそろそろ陽が傾いてきたので早めの夕飯を作る事にしよう。夜はアンデッド狩りを行うので、今のうちに腹ごしらえだ。
俺はリュックから調理器具を取り出し、鍋を吊り下げる器具も準備する。レグフトさんが掘ってくれた浅い穴の上に鍋が来るように吊り下げる器具を置く。穴の下には枯れ木が敷いてあり、水分はあまりないからそのまま着火する事が出来る。
「我が指先に火を燈せ、レッドバーナー」
俺は人差し指を枯れ木に向け、その先から火を出して着火させる。
つい先日、俺の魔力がE-になったので、漸く魔法を習得出来るようになったのだ。俺はクロウリさんに頼み込み、赤、青、黄、緑の四属性の魔法を習得出来るようにしてもらった。
魔法を習得するには、魔法を扱える者にその属性の魔力を流して貰い、その上で目の前で魔法を使って貰う事で条件を満たす事が出来るそうだ。一属性に特化していても、別の属性の魔法を使う際にはその属性を帯びた魔力が生み出されるので黒魔法使いのクロウリさんからそれぞれの属性の魔力を流して貰う事が出来た。
白と黒を覚えなかった理由は、今は黒はクロウリさんが、白はレグフトさんがいるから他を補う為にそれらは覚えなかった。あと、単純にポイントが足りなかったのだ。
『名前:宇都宮卓海
性別:男
年齢:十五
レベル:29
体力:D+
筋力:D+
敏捷:C
耐久:E
魔力:E-
幸運:C
ポイント:29
習得可能スキル:【白魔法Lv0】(消費ポイント50)【黒魔法Lv0】(消費ポイント50)
スキル:【卓球Lv2】【殴打Lv1】【斬撃Lv1】【精密向上Lv1】【精神安定Lv1】【気配察知Lv1】【料理Lv1】【反応Lv1】【逃走Lv1】
魔法:【赤魔法Lv0】【青魔法Lv0】【黄魔法Lv0】【緑魔法Lv0】
称号:【異世界からの流れ人】(隠蔽中)』
魔法はスキルとは違い、最初はレベルが0だ。その明確な理由はよく分かっていない。あと、魔法はレベルが低い程詠唱の長さも短い。
あと、Lv0でもこの四属性に限り、俺はクロウリさんよりも上を行っている。それはクロウリさんの一点特化型な体質と、それにプラスして彼女が【黒魔法使い】と言う称号のマイナス補正を受けているからだ。
クロウリさんの持つ称号【黒魔法使い】は黒魔法の効力が増大する代わりに他の属性の魔法の効力が下がり、唱えられる他属性魔法の種類も減ってしまう。
なので、クロウリさんはレッドバーナーを使えず、同じレベルが0の時に覚えるレッドヒートだけしか赤魔法は使えない。しかも、レッドヒートは俺が使った場合は髪を乾かせるくらいに熱くなるけど、クロウリさんの場合は人肌くらいの温もりしか発生出来ない。
また、魔法の効力に関しては魔力のランクは一切関係ない。Lv0の魔法だけは魔力によって効力の増幅が見られないそうだ。なので、魔力ランクがB+のクロウリさんのよりも魔力ランクE-の俺のレッドヒートの方が温かくなるのだ。
「我が掌に水を生み出せブルーウォーター」
俺は鍋に手を翳して綺麗な水を生み出し、鍋の半分くらいまで注ぐ。その鍋を器具に吊り下げて火の上に置く。その後、ブルーウォーターで取り出した野菜を洗う。
そして用意したまな板の上に野菜を置いて包丁でザクザクと均等な大きさと厚さになるように切る。野菜は人参にキャベツと玉ねぎだ。
切った人参と玉ねぎ、キャベツの芯をまだ指が入れれるくらいの温度の鍋の水に投入し、沸騰してきたらキャベツの葉の部分を投入。味付けは塩と胡椒。
で、煮てる間にベーコンを取り出してざく切り。それを鍋に投入。ことこと煮てベーコンに火を通しつつスープに旨味を出して、これでスープ完成。
それぞれの器にスープをよそって、保存の利く固いパンを添える。後はデザートに林檎一個を用意すれば本日の夕飯の準備が出来た。
「「「いただきます」」」
鍋を囲むように、用意した簡易椅子に座って夕飯を食べ始める。スープはきちんとベーコンの旨味が染み出ており、野菜も火がきちんと通っていて柔らかい。固いパンは引き千切れなかったのでそのままスープに突っ込み、ふやけてきた頃合を見計らって口に運ぶ。
「結構美味しい」
「どうも」
クロウリさんはスープを口に運び、サムズアップを俺に向けてくる。
「ベーコンの旨味が出ているな。塩加減も丁度いい」
と、スープを口に運びながら何度も頷くレグフトさん。
因みに、クロウリさんとレグフトさんの二人は一応料理が出来る……らしい。らしいと言うのは、その現場をこの目で見た事がないからだ。まぁ、クロウリさんは魔法使いで魔法薬とか作る手解きも受けていたらしいから、そつなく出来ると思う。
レグフトさんも見習いとは言え騎士だ。なので、野営とかの経験もある筈。そこで温かくなる料理を作った事があると思う。
ただ、【料理】スキルが習得可能になっていないので、そこまで料理をした事無いんだろうな。俺は二週間ほど料理をし続けて習得条件を満たしたんだけどね。
今回は【料理Lv1】を持っていると言う事で俺が料理をしたけど、今度は二人に作って貰おう。まぁ、今度があればだけどさ。
夕飯を食べ終わり、器を綺麗に洗ってレッドヒートで乾かしバッグに仕舞う。それから完全に陽が沈むまで小休止を挟む。
アンデッドは陸地にも出現するが、ぬかるみや沼の方が多く出現するらしい。なので、夜はぬかるみのある方へと移動する事になる。その際に必然的に視界を確保する為に明かりを用意する事になる。
灯りはランタンと【発光珠】、クロウリさんの白魔法ホワイトライトがある。それに、レグフトさんの【白剣】でも明るくなるらしいので視界で困る事はない。
しかし、光に誘われて他の魔物もやって来るので、戦闘の忙しさは昼間の比じゃない。
「ホワイトライト」
暗くなってきたので俺はランタンに火を灯し、クロウリさんは杖の先に光の玉を出現させる。
レグフトさんも剣を抜き、刀身を白く光らせる。
準備も整ったので俺達はカンジキを履いてぬかるみへと向かう。
ぬかるみに入るとクロヤンマが次々と襲い掛かって来て、それを主にクロウリさんと俺が撃退する。レグフトさんはヤゴとジャンスネークを相手する。
少し進むと、アンデッドがうろうろとうろついているのが視界に入ってくる。
この湿地帯に出てくるアンデッドはゾンビっぽい人型の魔物だけど、死んだ人が甦った訳じゃないらしい。あくまでアンデッドと言う種族の魔物で、死体を元に発生する者ではないそうな。外見は緑青っぽい色にドロドロの皮膚で白目をむき、服は着てない。
正直言って、気持ち悪い。なので、早々に倒す事にしましょう。
「レグフトさん、お願いします」
「引き受けた」
レグフトさんは臆する事なくアンデッドへと切り掛かる。アンデッド話す術もなく切り伏せられ、一瞬で土色となって崩壊する。その際にごつごつした黒い石が落ちる。
これがアンデッドから取れる素材で、名前はアンデッド核。これが無傷の限り、アンデッドは部位が欠損しても再生していく。
アンデッド核を傷付けるように倒すか、白属性で攻撃する事で核の効果は無くなり、再生する事は無くなるらしい。アンデッド核の効果が失われたか否かの確認は黒い靄を纏っているか纏っていないかで判断出来るそうだ。
今し方落ちたアンデッド核は黒い靄を纏っていないのでもう再生する事はない。
「ゲット」
落ちたアンデッド核をクロウリさんが素早く拾い上げてバッグへと仕舞う。
で、次々とアンデッドがこちらへと向かってくるのが見える。そして、クロヤンマもジャンスネークも襲い掛かってくる。
俺とクロウリさんがクロヤンマとジャンスネークを、レグフトさんがアンデッドを相手に戦う。
空中にいるクロヤンマにはバッグハンドサービスやブラックショットを、地上を這うジャンスネークには顔面に向けてドライブスイングやスマッシュスイング、ブラッククロウで切り裂く。
迫り来るアンデッドは次々とレグフトさんが屠っていく。落ちたアンデッド核は倒す毎にレグフトさんが回収していく。
レグフトさんがアンデッドを三十体屠った段階で切り上げ、陸地へと戻る。その際もアンデッドやクロヤンマ達が絶えず襲い掛かってくるので、移動しながら攻撃して沈黙させる。
アンデッド核はしめて三十四個手に入れる事が出来た。クロウリさん曰く、当面はこれくらいあれば足りるそうだ。
クロウリさんがアンデッド核を欲していた理由は、【黒魔法Lv5】のレベル上げに利用するからだそうだ。普通に魔法を発動させるよりも、触媒を用いて魔法を発動した方がレベルを上げやすいそうだ。
少なくとも【黒魔法Lv7】にまで上げる事を目標にクロウリさんはトラストの町へと来たそうだ。【黒魔法Lv7】以上になり、クロウリさん自身のレベルもいい感じに上がったら別の街へと向かう予定だとか。
陸地に戻って来た俺達は枯れ木を集めて火を熾し、鍋にブルーウォーターで水を入れて人肌くらいまで温める。
それでタオルを湿らせて、各々身体を拭く。女性陣を見ないように、俺は一人離れた場所で身体を拭く。
夜も更けて来たので、就寝する事に。野営と言う事なので、見張りが必要。順番はクロウリさん、俺、レグフトさんの順だ。
野営は特に問題も起きず、無事に朝を迎える事が出来た。
朝日と共に俺とクロウリさんは起き出し、朝食を改めて作って食べる。朝はベーコンエッグに炒めたキャベツと玉ねぎを付け合せたもの、それに固いパンと林檎一個。
朝食を食べ終えた俺達は町へと戻る。ウィードタートルの甲羅は背負う事が出来ないので引き摺って行く。道中襲い掛かってくる魔物も難なく打ち落とし切り払い、昼前に町へと着く事が出来た。
まずは冒険者ギルドへと言ってウィードタートルの甲羅とアンデッド核以外の魔物の素材を換金。その後にドールンさんの工房へと赴いて新しい球を作って貰う事にする。
更に、この甲羅を元に新しいハンドアックスを作って貰う事になった。これくらい上質の甲羅なら、ちょいと加工する事で鉄以上の強度を持たせる事が出来るらしい。
出来上がりは二日後だそうで、ちょっと楽しみだ。
「じゃあ、今日は各々自由行動で」
「うん」
「分かった」
ドールン工房を後にした俺達はそこで別れる事にする。今日は一緒に魔物を倒しに行くんじゃなくて、個々で好きに過ごす日にした。クロウリさんとレグフトさんは二人一緒に宿の方へと向かって行った。俺も今日は寝ていたいから馬小屋へと向かおう。
馬小屋へと向かう道中で、人々の会話に耳を傾ける。勇者は既に東門から出て行ってロンリーウルフを相手にするそうだ。で、レベルは9まで上がっているらしい。
なら、今日は町にいれば勇者と遭遇する事はないな。
俺は軽く伸びをして、惰眠をむさぼる為に馬小屋へと向かう。
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