ようじょたちのきっく・うぉー 1


「みづきー!」

「……ひーちゃ」


がしっ、ぎゅー!ぎゅ、ぎゅー!


「……あんたたちなかがいいよねぇ」


るなが呆れた顔でこちらを見ていた。


みづきと友達になってから、るなにも紹介して3人で遊ぶようになっていた。

まずは水槽の魚に餌をやってから、それから3人で遊んだりお手伝いしたりと、割と充実した日々を送っていた。

3人で手を繋いで並んで歩く。真ん中がみづきで、両端に俺とるなだ。


「みづきがちいさいから、まるでとらわれのうちゅうじんみたい」


るながそう言った。今時の幼女はそんなネタ知らないだろう。


「……ちいさくない、これは、あばたーがたまたまちいさいだけ」


いやいや、みづきさん。自分で小さいって認めてるじゃないですか。

とことこてくてく歩きながら、今日は何をしようかと話していると、突然目の前を何人かの幼女集団が立ちふさがった。


「おーほっほっほ!ここからさきは、わたくしのりょうちですのよ!」


ローズゴールドの髪をふわぁっとなびかせて、青と白のエプロンドレスを着た幼女が高らかにそう言った。

ちなみに目の前には公園があり、その入り口を幼女の集団が塞いでいる。はっきりいって邪魔だった。


「そこはみんなのこうえんだから、だれかのものじゃないよ?」

「……そーだそーだ」


俺とみづきは、その幼女たちの主張を否定する。……るなの後ろに隠れて顔だけをひょっこりと覗かせながら。


「……あのさぁ、いってることはりっぱなんだから、ちゃんとでてきていいなさい?」


だって人見知りですし!俺もみづきも初めて会う人とか怖いですし!向こうの人偉そうだし!


「まぁ、わたしたちはこうえんであそびたいだけだから、ふつうにとおしてよ」

「ここをとおるなら、つーこーりょーをはらってもらおうじゃない!」


取り巻きの1人、ピンクの髪のツインテールが偉そうにそう言った。ちなみにこのゲームにお金を譲渡するシステムはない。


「いや、それできないし」


るなは冷静に言い返した。

取り巻きの1人の赤い髪の子が俺たちの後ろを指差した。あるのは自動販売機だ。


「それでじゅーすをかってくれればいい」


あ、教えてくれるんだ。優しい。

ってそうじゃない。それじゃあカツアゲと同じだ。

ふと見ると、ローズゴールドの幼女がこちらの顔をジロジロ見ている。なんだろうか。


「あなたたち、るなにひな?そうでしょう?」

「え?」

「なんでなまえを?」


俺たちは特に名乗ったりはしていない。そもそも友達自体が少ないから名前がばれてる方に違和感がある。


「えーっと、なんでなまえしってるの?」


るながローズゴールドの幼女に尋ねる。


「あなたたち、けっこうゆうめいよ?いつもなかよしでてをつないでほほえましいって」


そういう方向で有名なの!?攻略とか情報共有の掲示板とかがあるのだろうか。


「それはともかく!このこうえんであそびたかったら、このわたし、ありす・しゃるりゅ……しゃるるど・ふらんそわーずをたおしてからにしなさい!」

「かんだ」

「……かんだ」


せっかくこっちに指差してびしぃ!っと決めたのに台無しであった。るなにみづきは、あんまり指摘してあげないほうがいいと思う。

ローズゴールドの幼女、ありすはこちらに指をさしたまま、顔を真っ赤にしてプルプルと震えていた。取り巻きの子達もおろおろしだした。メンタル弱いな!


「とりあえず、わかったよ。で、どうやってたおせって?」


るなが片方の手をもう片方の手にパンチをしてぺちぺち音を鳴らしている。

迫力のない音だけど、向こうの取り巻きの子が1人、なぜかひどく怯えていた。


「しんぱいはいらないわ!れいのものを!」


そういうと、取り巻きの1人がありすに何かを手渡した。あれは缶コーヒー?

ありすは缶コーヒーを受け取ると、それを口に含んだ!


「うえぇ……」


そして心底苦そうな顔をした。


「にがいぃ……あとのんでぇ……」


なんだこの茶番。本当に何がしたいんだこの人たち。

取り巻きの子が、順番に一口ずつコーヒーを飲んだ。全員が「うえぇ」って顔をした。って誰も飲めないんかい!


「ちょっと!あんたたちもてつだいなさい!」


なぜかぷりぷりと怒り出したありす。

取り巻きの子から、コーヒーを手渡された。仕方がないので、一口飲む。こ、これは……


「にがぁ……」


なぜかすごく苦かった。本来の俺であれば、ブラックコーヒーも飲めるのだけれど、やたら苦いコーヒーだった。

るながそんなばかなと言わんばかりにコーヒーを飲むと、同じく苦い表情になった。

どうやら、味覚も子どもの味覚になっているらしい。たしかに昔はコーヒーなんか飲めなかったなぁ。

そうしみじみ感じていると。

ごくごくごくごく。


「……ん、おいしかった」


この場にいる中で、一番小さい子が、一番大人の味覚を持っていた。


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