パラドックス
箕園 のぞみ
00.異変
『どちら様?』
寝起き一発そう言われて、完全に思考が停止した。
何を言われたんか分からんかった。勿論、言葉そのものの意味やない。
なんで、そない言われたんかが、分からんかったんや。
やって、ありえへん。
自分の母親が、自分の息子の事を知らへんやなんて。昨夜まで普通に、一緒に暮らしとったのに。
ワケが、分からへん。
とにかく、パニクりながらも懸命に"母さん"と揺すぶった。
けれど、返答は全く無い。ただ不思議そうな顔をして、首を傾げるだけ。
(ほんまに、分からへん…のか?)
向かい合い続けて、半時。少しだけ冷静さを取り戻して分かったことは、彼女が
嘘や冗談で"どちら様?"と言ったわけやないっちゅー残酷な現実やった。
頭でそう気付いても、気持ちが追いつかんで、とてもいきなり認知症になったんか?
なんてあんま現実的やないこと考えて母親を何とか病院まで連れて来ることに成功。
俺を知らんて口にしながら、俺の事を不審に思ってる節のない母親は、正しく異常。
(俺が寝てる間に何かあったんや…)
回転せぇへん頭で、祈るようにそう自身を言い聞かせとったのに。
行き先の病院でも、また同じ言葉を聞く羽目になった。
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