Expiation of Heaven's vengeance people

松竹梅

1ー1 仕事

ほとんど何もない砂漠道の少しだけ舗装されている道路を小さなオープンカーが走っていた。


「何時になったら街に着くんだよ、アルフレッド!」


小さなオープンカーには二人の男が乗っている。

運転しているのはアルフレッド。一見すると髪も目も黒い地味な印象を受ける優男だが、整えればそこそこの顔だ。しかし、今は汗だくのため見る影もない。 隣で暇そうにタバコを吹かしつつ、たまにアルフレッドにちょっかいを出しているのがデイビッドである。髪は銀髪で顔はかなりの強面だが、無精髭をはやしているため怖さを半減させていると言えなくもない。

二人ともヨレヨレののシャツにジーパンと言う傍目からするととてもだらしのない格好をしている。


「黙れ、このクソ野郎が!さっきまで寝てた奴に言われたくねーんだよっ」

「お前が道を間違えなければとっくについていたんだよ!だから車じゃなくて蟲車雇っていけばよかったんだ!」

「あんなのとうちの愛車ちゃんを比べるんじゃねーよ!そもそも車ってのは車輪が付いているから車って言うんだよ。あの気持ちの悪い足で走るのは俺は車と認めない」

「そんなことどうだっていいんだよ!問題は速さだ、速さ!何だよこのオンボロなのはよ。俺らが生まれる前の奴じゃねーか」

「それがいいんだろ。お前はわかってねーな。これでゆっくりと旅行するなんて最高じゃねーか」

「俺たちはここに仕事しに来たんだよ!旅行じゃねーんだから速さを優先にしてくれよ!」

「じゃあ蟲車雇う金はお前にあったのかよ?」

「……」


急にデイビッドは黙り込んだ。それもそのはず。蟲車はそんじょそこらのタクシーとは違い、三日かかる道を一時間とかからず走る規格外の乗り物だがそれに合わせてとてつもなく運賃が高い。

それにデイビッドという男は金を貯めると考えもしない奴で、住んでいるマンションにはいつも飲み代のつけの請求書が山のようにある。


「そ、それは経費として……」

「あの社長がそんなことで金出してくれると思うか」

「無理だな」


二人の社長は金のことにはかなりうるさい。

この前の仕事の終わりに酒を飲みまくって経費として落とそうとしたが社長にばれこう言われた。


『今すぐにゲイバーに転職しな。嫌だったらこの仕事を受けろ』


結果、今回の仕事はほぼタダ働きでありそんなことに経費は落ちないのは目に見えていた。


「お前の口車に乗せられて飲みになんか行かなければこんなことには……」

「それを言うか。お前だって口説き落とした女と最後までいけそうになった時に男だって気づいて」

「あーあーあー!聞こえない何も聞こえない。———ん?おい、あの看板」

かなり遠くにあるがそこには看板があり、こう書いてあった。

『ゴウイラッドへようこそ』

「ヨッッッッシャーーーーー!てっきりこのまま野宿だとばっかりに思ってたぜ!早く急げボロ車!」

「暴れるな!マジでこれから俺の車にお前を乗せないからな!」

看板を車が通り抜ける。これから降りかかる不幸にまだ二人は気づかない。

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