才能選び

@mizuba

第1話

「ようこそ天国へ!」

 目覚めると、そこは何もない真っ白な世界だった。真っ白な世界というのは本当に真っ白な世界で、景色が全くない。地面も空も壁もなかった。いるのは私と目の前にいる若い女性だけであり、唐突に彼女に出迎えられた。

 「えーと…どちら様でしょうか?そしてここは…」私は戸惑いながら聞いた。

 「はい!私は来世相談係です!そしてこちらは天国でございます!あなた様は生前いわゆるいい人であったと認定されたため、こちらで来世の依代を選んでいただきます!あっもちろん私もご相談にのりますので心配は無用です!」彼女は元気よく言った。

 ああ…思い出した。確か私は病に倒れて死んだのだ。いい人生だったと思う。若干残された子供たちが心配ではあるが彼らならうまくやっていけるだろう。しかし、なぜ今の私の体は青年期のものになっているのだろうか。

 「こちらではあなた様が心身ともに健康な状態で来世を選んで頂くため、最も健康な体をご用意いたしました!」彼女は察したように言った。

 なるほど、だから今の体は健康だった青年期のものなのか。

 不思議と私はこの真っ白な世界やら彼女の言う天国やら自分が若返っていることには疑問を抱かなかった。それは多分、私が死んだから思考が麻痺しているのかもしれない。私は今の状況をすべて受け入れた。

 「一つ聞いてよろしいですか?」私は彼女なら全て把握していると思い聞いてみた。

 「はいなんでしょう?」

 「来世の依代を選ぶとはどういう意味でしょうか?」

 「いい質問ですね!あらゆる生命は生まれ変わる前にどのような体に生まれるかを天国で選んでもらっているのです!残念ながらどの動物や植物に生まれ変わるかはこちらで選定させてもらっていますが、どのような体、つまりどのような能力または才能を備えた体に生まれるかは、あなた様が前世で貯めた徳ポイントに応じて自分で選ぶことができるのです!あなた様の徳ポイントはなかなか多く貯まっているようですので、より多くのより優れた才能をもって誕生することができると思います!」

 「ふむ…」私は話を大体理解した。

つまり私はここで、次にどんな才能をもって生まれるか決めるということか。自分でそんなことが決められるなんてなんて世界はありがたいんだと、私は感動した。

 「よし!じゃあ選ばせてもらいましょう!」私は彼女のように元気よく言った。

 「はい!それではこれから来世依代相談会を始めさせてもらおうと思いまーす!」彼女は一層張り切って声を上げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る