☆創作検証計画

☆検証「端的に言って最低です」感想

 前回に引き続き、芳賀さんから頂いた感想(「我想う故にカンソウ」https://kakuyomu.jp/works/1177354054880945837)を見ていく。

 という訳で、まずは概要。


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「端的に言って最低です」

■ジャンル:現代アクション

■連載期間:2016年5月22日~2016年6月1日

■総文字数:30,174文字


□キャッチコピー

 違和感に気付けたら、君の勝ちだ。


□あらすじ

 『魔女』がいるとの噂がある山中の洋館・幽月邸。

 噂の真相を探るために訪れた高校生の久路人は、途中で出逢った少女の乙木と共に館へと向かう。

 彼らが辿り着いたのは、本人すら思ってもみなかった結末だった。

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 「プロットの成長を見守ろうプロジェクト」企画提出作品。

 先日、このエッセイの戯言でも書いたが、実は自作のスピンオフに当たる作品でもある。


 今回この作品を依頼したのは、カクヨム掲載作品の中で『完結』していて『最近』書いたものであり、自分の中できっちり『終了』した話だったからだ。


 元がある作品ではあるが、『端的に言って最低です』(以下、『端的』と記載)自体の話はこれにて完全に終わっている。

 最近書いた作品では『エトワールは逃げられない』もあったが、こちらは後に続きが書きたくなってしまったため自分の中では完全に終幕している作品ではない。

 なので、今回は『端的~』をお願いすることとした。




 以下、頂いた感想である。


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 改めて見ても、文章にも大きな問題はなく、読みやすいし、また内容も好みのジャンルだ。(中略)……が、どうもスッキリしない。

 何度か読みなおしても、やはりひっかりり、最後にもやっとしてしまう。

 でも、原因がなかなか掴めなかった。


……


 何度か読みなおして、やっと気になる点を2つまで見つけることができた。


 まずは構成だ。

 アウトラインをかるく見てみると、たぶんなのだがこんな感じではないだろうか。


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●起:久路人が乙木と出会い、館に調査へ向かう。

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青年クロトは後込をする

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●承:久路人が館を調査する。

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シツジ篠宮は懸念を示す

少女オトギは記憶を辿る

トワコ奥様は笑顔を弄す

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●転:深月が登場し、事実を暴露する。

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○○○○○は全てを語る

洋館幽月邸は幸福を見る

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●結:幽月邸と決別し、日常に戻る。

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館のあるじは永久を望む

そして彼らは未来を願う


 見出しは適当にかなり簡易化している。

 見て欲しいのは、「承」の分量が多いことだ。

 ざっとカウントすると、「承」で11,000文字ほどある。

 全体で30,000文字ということは、1/3を「承」が占めてしまっている。


 あくまで適当な基準値だが……


起15(10)%

承15(20)%

転40%

結30%


 ……ぐらいを自分的には目安にしていて、そう考えすると「承」が30%以上というのは、「展開が遅い」というイメージがある。

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 構成については、ほとんどご指摘の通りだ。

 厳密に言えば2話目の前半部分は『起』に当たるイメージで書いたのだが、そこまで大きな違いではない。


 因みに私は、どちらかといえば起承転結より三幕構成や乙一先生式のプロット作成法を意識してアウトラインを作成している。

 (もっとも起承転結も三幕構成も、手法が違うだけで目指すところは同じようなことではあるが、その辺りは長くなるので省く。)


 ただその場合でも、起承転結で言えば『起』の部分のラストにて『ターニングポイント』となるイベントを起こし展開を進めなくてはならないのだが、上手いこと次に繋げるための盛り上がりが書けていない。

 いずれにせよ、平坦な部分の分量が多すぎることは違いなかった。



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 実際、部屋を探すシーンは、確かにいくつかの伏線が張られている場面でもあるのだが、割合を考えると長すぎる気がする。

 じゃあ、ここで削れるかと言われると、削れることは削れるが、伏線の関係上、大幅なカットは難しいと思う。

 つまり、「承」が重いことが避けられない事になる。

 これが何を意味するのか……というと、実は次の問題に繋がる。


 それは「詰めこみすぎ」である。


 たぶん、本作の問題は、これに集約される気がする。


(中略)


 3万文字の台詞が割と多いタイプの小説で、これはたぶん詰めこみすぎなのだ。

 下手すれば、10万文字クラスの要素が組み込まれてしまっている。


 そのため、いろいろとたらなさがでる。


(中略)


 ……うん。

 どれも、中途半端すぎる!m9( ゚Д゚) ドーン!

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\(^p^)/



 ぐうの音もでない。



 そうなのだ。

 確かに私はこの作品に書きたいことを好きなだけ詰め込みまくって満足した……が、それは裏を返せば、キャパに見合わない要素を闇雲にぶっ込んで無理矢理に収めているということでもある。



 かつて学生時代、短編の批評会では必ず決まって言われた言葉がある。

 それが、


「もっと長いものが読みたい」

「短編ではなく長編として書いたほうがよかったのではないか」


 ――だ。



 それは上辺だけ単純に捉えれば、(褒めるニュアンスで言われたものなので殊更)私の性質として「長編を書くのが向いている」が「短編を書くのは向いていない」という意味合いに思えた。


 けれど、更にその言葉の根底にある原因を汲めば、それは、

「この要素ならば書くべきは短編でなく長編」であり、

「短編ならばこの要素はそぐわない」ということに他ならない。




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 そのために、どれもが不完全燃焼になっている。

 たとえば、組織の設定……本当に必要だったのだろうか。

 これがなくても成り立つのではないだろうか。

 それだけで、起承転結のバランスが取れて、もっとスピーディーな展開が楽しめる作品になったのではないだろうか。

 要するに、詰めこみすぎでバランスが悪くなり、ヨロヨロ運転しているトラックみたいなものである。

 荷物を減らすか、トラックを大きくしないと危険運転致死傷罪である(笑)。

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 前回の話として、目標に『スリム化』を上げたが、そちらに通じるものがある。


 自分は基本、どうしても書く話が長くなってしまう傾向にある。

 なので、最近とりわけ意識していたことが『文字数を意識し、一定の範囲内に物語を収めること』だった。

 けれども、根本的な問題はそこではなかったのだ。



 そもそものだった。



 私は、まあとにかく要素を盛ることが好きだ。

 長くなる傾向はすなわち、結び付けられる面白そうな要素をこれでもかと詰め込んでしまう悪癖に因るものであり。

 その結果が、10万字の器にも入れられそうだった3万字の中編『端的』であり、80万字を超えた『乱舞』である……。



 今回の『端的』は3万字に収めたことで『短い話を完成させること』には、一応、成功している。

 が、その実、根っこの部分の詰め込みは何ら変わっていない。


 もう少し、『要素』の上乗せに頼らず、シンプルな材料だけでも物語を魅せる技量を身につけなければならない。




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 それから、タイトルが気になる。

 「端的に言って最低です」だが、なぜ「端的に言って最低だよ」ではないのだろうか。

 台詞から言うなら「だよ」で、「です」というと別の人……つまり、作者が言っていることになる気がする。

 「キャラクター(たち)or物語が――」ということになりそうで「え?」となる。

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 タイトルについて、は。

 確かに、立場が微妙なところだ。が、まあ流せる範囲内だろう、と判断してこのタイトルを設定している。


 元々。大枠の物語を考えた後、細かい設定よりはタイトルの方が先に思いついて、そこから口癖&『最低』たりうる要素を付け加えたのがこの物語である。

 ……それ故か。


 リズム、というか、響きという観点から、どうしても「端的にいって最低だよ」にはしたくない、のだ。


 なので、タイトルの部分については、『本人が客観的に見た時に自分に対して言い放つ言葉』、ということで。

 つまるところ、さらっと流していただきたい。



 うーん、読者が気になるというならそこは考慮すべき部位だし、そもそもタイトルは重要で然るべきなのは承知してはいる、のだが……。


 ……これだけは、響きの都合、譲れない。


 なまじこの短さだけに、尚更リズムを取る。長編だったら多分このタイトルにはしていなかったが。

 主人公ながら神の視点にて、自分で自分を揶揄しているという、一種のメタ的表現というか、遊びでもある。



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 それから、キャラクターたちがわざとらしく使うのも気になる。

 たぶん、深月の口癖が移ったからなのだろうが、「端的に言って」というのは、言い方を変えれば「ハッキリ言って」「要点を言うと」である。


(中略・台詞引用)


 上記は端的台詞集だが、この中で「ハッキリ言って」「要点を言うと」に置換すると、シーン的に意味がおかしいのがある。

 いや、おかしいというより、しっくりこないものだ。


 むしろ、作者さんは「簡単に言うと」というような意味で使っている部分がある気がする。

 「端的」の意味をまちがえていないだろうか……。

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 この部分については、意図的だったりする。

 『確信犯』よろしく『端的に言って』も結構、最近では誤用が多いフレーズなので、誤用しているという設定でもって書いている。


 けれど、確かに誤用を広める一助になってしまうおそれもあるので止めた方が良かったかもしれない……。

 多分、ら抜き言葉や確信犯ほど、許容されてはいないし。

 ちょっと検討してみよう。




 ……とまあ、これは良い悪いは別として、意図していたことではあるのだが。

 続く指摘が本当に間抜けで、ちょっと穴を掘りたくなる。



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 乙木の台詞の「知ってるよ! でも、現実に魔女なんていないでしょ。ママが言ってたもん。端的に言って、ヒカガクテキだって」だが……記憶がないのにママが言っていたことを覚えているの?……と疑問になった。 

 伏線の推理みたいな楽しみを提供している作品なので、私はこの時点で「あれ? 記憶あるんじゃね?」と感じてしまった。

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 ウワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

 記憶あるじぇねえかーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!




 速攻で 訂正を させてもらった 次第。



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『両脇からは伸びた樹木の枝が迫り、道幅を狭めている。かつては小型の車が行き来していた形跡があるが、その轍は草いきれに覆われて判然としない。』


 推理的な要素という意味で、ここも細かいが気になった。

 轍は草にきれいに(「草いきれ」は熱気のことだから誤字だと思う)覆われて判然としないのに、かつて(つまり昔)小型車の行き来した形跡はどうやって見つけたのだろうか。

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 ワーーーーーーーーーーーーーーー!!!

 すみません、これは完全に『草いきれ』自体を間違えていました!!!!!


 草むらくらいのノリで使用していました!!!



 速攻で 訂正を(略)



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『時の経過を感じさせる黒い壁に、今なお褪せぬ赤い屋根。ぱっと見の雰囲気からは煉瓦造りかと思えたが、近くでよく見れば木造である。ところどころ塗装が禿げた外壁は、否応なしに年月の経過を感じさせる。』


 こちらには単なるまちがいだと思うが、壁の年月の描写が重複している。

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 ギャーーーーーーーーーーーーーーー!!!

 重複してます間違いですーーーーーー!!!!!



 速攻ry






 ……いえね、これら3連続の馬鹿な間違いを指摘していただいただけでも、本当に読んで頂けて良かったと思います。

 今後の反省のためにここで晒しているわけですがね!!!



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 全体的に面白みのある内容であり、非常に私の好物だった。

 それ故にひいき目で曇るため、悪いところが見つけにくかったのかもしれない。

 ただ、読んでいて「なんか腑に落ちない」と感じさせられたのは、やはり展開が急すぎるのだろう(……あれ? 最近、どこかで聞いた台詞www)。

 詰めこみすぎ感が否めないのが、本当に残念である。

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 図らずも芳賀さんの好みの内容だったにも関わらず、率直に楽しませることができなかったのは、実に悔しい限りである。





 さて。2作品の感想を頂いて、見えてきた部分が色々とある。

 ありがたいことに、単純な文章の書き方や読みやすさについては(さっき盛大に3連続阿呆な間違いをしたのは棚に置くけれども)、一応の及第点だったのではないかと思われる。


 改善すべき部位は、もっぱら物語の組み立てにある。


・地の文のブレの修正

・構成のバランス

・要素を盛り込み過ぎない

・冗長すぎない適度な分量


 まあ、最初の一つを除き、とにかく『バランス』だ。



 これらの感覚を覚えこむため、短編で構成の修行をするというテもある。が。

 自分は、どうしても人と人との関係が絡みあい、ある種ミステリのように過去や思惑や関係が解かれていく、大きな入れ物を必要とする物語が好きだ。

 だから、やはり私は短編ではなく長編を書きたい、のだ。


 いずれ修行に書くこともあるかもしれないが。

 ひとまず当面は、連載作の執筆と修正に力を入れようと思う。



 あとは、私が何もお願いせずとも、芳賀先生にレビューを描いて頂けるような作品を書き上げるのが当面の目標。

 ……と書くと、すごくハードルが上がりそうなので、やめておく。(書いてるけど。)



(2016/06/05)

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