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津波はすべてを奪っていった
街が消え、人が流され
何万人も死んだ
そして、津波は原発を襲った
すべての電源が切れた原発は
制御の効かない魔物となった
原子炉の温度は上がり
現場の混乱は頂点に達した
海水を入れようとする現場に
電力会社の本部は平然と言った
海水を入れたらもったいない、と
現場は本部に背き海水を注入し続けたが
嘲笑うかのように原子炉は溶け落ちた
もうどうにもならなくなっていた
放射能汚染の恐怖から
人々は逃げるしかなかった
二度と帰れぬと知っている土地から
時の首相は言った
死んだっていい、俺も行く
だから社長も会長も覚悟を決めろ、と
そして首相は原発を止めた
それから社長や会長は何をしたか
彼らは何の責任も取らなかった
自分たちだけは守りながら
津波がすべてを奪った後
ひとりの男がこんなことを言い始めた
それは嘘だった
だが新聞社はこの嘘を流した
国民は嘘を信じた
怒りと悲しみから逃れるためには
嘘を信じるしかなかった
すべては首相のせいだと言い出したのは
アベという男だった
嘘によって虐げられた首相は
その座から引きずり降ろされた
この頃からだった
どこからともなく
食べて応援、という
奇妙な言葉が出てきたのは
放射能は危険だ、と言うと嘲笑われ
原発は危険だ、と言うと排除される
人々は嘘を信じるようになっていった
そして嘘を人に押し付けるように変わっていった
すべては「絆」の名の下に
同じ頃、戦後最悪と呼ばれる首相が選ばれた
彼は自分をドジョウだと言った
彼は国民との約束を反故にした
そして自分の党を破壊した
絶望した国民は
アベを選んだのだった
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