Break Down World(壊す世界)

きしと

第1話終わりの始まり-1

 侵略者、惑星国家エルデン。


 地球人類がその敵と出会ってから、十数年が経とうとしていた。


 エルデンに住む、原住種族である、エルロイドは一定年齢に達すると老化をしなくなるという、不老の特性を持っていた。

 エルロイド達は、余りある時間を用いて、様々な技術を発展させた。

 地球とエルデンの技術力の差は圧倒的だ、それでも地球が十数年に渡って耐えてこられたのは、ひとえにエルデン側の事情により、情けをかけられているだけに過ぎない。


 エルデンが抱える問題。それは人口問題だ、不老と言う特性から、外部的要因以外ではほとんど死なず、さらに発展した技術によって、外部的な要因すら、少なくなったエルデンでは、人口を抑制することができず、星単位で、人口が過密状態にあるのだ。

 結果、人が溢れるという様々な問題が起こるようになり、対策を考えたエルデン首脳部はある方法を思いついた。


 その方法こそが、侵略だ。エルデン首脳部は、惑星エルデン自体を改造し、自由に宇宙を航海できる、一種の宇宙戦艦のようなコロニーへと変貌させた。そして旅だったのだ、エルデンと同じように自分たちの種族が住める星(ばしょ)を探しに。その星を自分たちのものにするために。

 だが、例え、星を見つけたとしても、そのまま全員で移住すればいいと言うわけではない。エルロイドは死ににくい。この根本的な問題は解決していないのだ。

 故に、見つけた星に数多くの者が移り住めば、結局は、直ぐにエルデンと同じ結果になる。それでは意味が無い。


 そこで、エルデン首脳部は侵略に条件を付けることにした。

 

 1.侵略した星に住むことが出来るのは、侵略戦争に参加した者だけ

 2.侵略戦争に参加できるのは、参加の意思を示したエルロイドの中から、エルデンが星の規模を元に選択した、メンバーのみである。

 3.最初に選択されたメンバーを第一陣と呼び、それが一定人数以下になった段階で、新たに第二陣の選出を行い、再度、侵略戦争を行う。

 4.これは、侵略予定の星を、完全に制圧しきるまで行われる。制圧が終わった時点で、その時点の参加者の生き残りに、平等に、星の土地や資源が分けられる。また、最も戦争で活躍したものが、その星の管理権である、【皇の柱】の所有権を得て、統率官(マスター)となる。

 5,侵略が完了した後、エルデン首脳部は、その星の所有権を統率官(マスター)から奪わないことを証明するために、その星との一切の連絡手段を断ち、別の侵略可能な惑星を探すための旅に出る。


 星の所有権を巡って、エルデン内部に戦乱を持ち込まないため。戦争を利用して、合法的に少しでもエルロイドを減らすため。この方式が採用されることになった。エルロイド達はこの条文を含めた侵略計画を、自分たちが住み、守るべき星を決め、住むことから【守人計画】と名付け、実行してきた。


 その触手がついに地球にも、やってきてしまったのだ。


 地球人類は必死の思いで戦った。第一陣を半数近く打ち倒し、やっと希望が見えてきているのだ。だが、彼らは知らない。それは、ただの第一陣であり、打ち倒したとしても、新たな人員が派遣されるだけだと言うことに。


 地球人に、未来は、…ない。


☆☆☆


 エルデンが送り込む、機械兵(ドロイド)と地球防衛軍が、戦いを繰り広げる市街地。その路地裏を二人の少年が駆けていた。


 「はぁ、はぁ、待って! カイト兄さん! 」

 「ソラ、もう少しだ。ここの先にある、マンホールを進めば、安全にこの場所から逃げられる」


 二人で支え合うように生きるこの二人。兄の名を【カイト】、弟の名を【ソラ】と言う。


 「ソラはそっちを持て! 二人で一気に持ち上げるぞ! 」

 「うん、…あ、兄さん後ろ! 」


 ソラがそう注意を促したその瞬間、カイトの後方の建物に撃ち落とされた、地球防衛軍の戦闘機がぶつかり、爆発する。その爆風によって、カイトは吹き飛ばされる、そしてカイトが付けていたフードが外され、その中から、明らかに地球人のもので無い、長い耳が露わになった。


 「…っち」


 短く舌打ちをすると、自身が立ち上がることよりも先に、カイトは素早くフードを被り、弟以外の誰にも自身の姿が見られていないことを確認する。心配そうにしたソラが駆け寄ってきた。


 「兄さん大丈夫?」

 「ああ、無事だ。…くそ、エルロイドの奴ら、こんな市街地まで攻め込みやがって! 」


 カイトが見た、その先、そこはかつて東京の新宿と言われた場所で、オフィス街だったらしい。だが、現在は見るも無惨な姿だ。先ほどから始まった戦闘により、至る所で火の手が上がり、人々はシェルターを目指し、逃げ回っている。

 エルロイド達は、彼らが非戦闘民であることを気にせず、害虫を駆除するかの如く、次々と戦闘機に装備されたビームガトリングで始末していく。

 各地で地球防衛軍の人間が、その人々を守ろうと奮闘しているが、元々、平和的な国で軍事力を持つことに否定的な意見を持つ国民が多かったため、軍事力を増強することができず、この国の軍は、地球防衛軍の中でも特に脆い。

 日本には、現在、次々と打ち破られていく、脆い軍を見た、エルロイド達がこぞって押し寄せ、一番の激戦区となっていた。

 頼りにしていた、諸外国は自国の防衛で精一杯で為す術も無く、平和の心はそもそも価値観が違う異星人には届かない。彼らにとって地球人は地球に居座る害虫なのだ。攻撃を止め、対話をする理由など無い。

 地球という狭い世界の単位で、軍事力の善悪を考えていた、国民達は、話の通じない、異星人という侵略者の前で、守る力の大切さを知った。

 だが、既に時は遅い。今更、軍の必要性を理解したところで増やせるものではない、守る力を放棄したあの時点で、日本はこのまま負け続け、占拠される運命しかないことは、決定付けられてしまったのだ。


 「……!? ソラ、あれを見ろ! 」

 「大きな、釘……? 」


 その時、空から何かが落ちてきた、釘のような形をした、それは、スカイツリーと言われるものがある方向へと落ちていき、地面にぶつかり、衝撃波を巻き起こした。


 カイトはその威力の大きさから理解した。あれは宇宙から落ちてきたものだと。


 大きな隕石が地球に落ちてきたような、大規模な破壊が、大地にいた地球人を襲う。もちろん、カイトとソラも例外ではない。

 彼らが最後に見たのは、様々な物体と共に吹き飛ばされるお互いの姿と、突然開いた、先の見えない大きな穴の存在だけだった。


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