召喚された直後に魔王とご対面して俺オワタ
秋月イネア
第一話 召喚されてしまう
えー皆さん、こんにちは
元気に異世界召喚されてますか?
俺は今、現在、明らかに異世界に召喚されました。
召喚された魔法陣っていうの?
その上から一歩も動いてません。だいたい直径10mくらいかな、結構でかい。
うん、でかいのはいいんだ。
でさ、
後ろに姫さんとか王様とかいるわけよ。魔法陣の外側だけど。
伝説の剣とか勇者の剣とかそういうのもなし。もしかしたら異世界召喚についてるオプションとして、所謂チートとか能力とか特殊な魔法とかあるかもしれない。
まあ、仮にあったとしよう。でも今Lv1なわけですよ。多分。
で、今目の前にいるのが魔王らしい。
そいつは金髪幼女。どう見ても、うさぎ柄のついたパジャマを着用してる人間に見えるんだが、後ろの王様やら姫やら兵士の皆さんが仲良くガクブルしてるわけでして。
召喚されて約3分。状況はよくわからん上に退路もなし。目の前には魔王。
あーつまりだ。つまりギャグ漫画の世界でなければ詰んでる?
『勇者様!魔王を倒してください!』
王様ぽい人やら兵士の言葉はわからんが、お姫様だけが言葉がわかる。
なんかしらの翻訳アイテムか魔法か何か使っているのだろう。
しかし倒せと言っても、見た目通り普通の幼女なら幼児虐待になるからやりたくない。ただの幼女なら負ける気はさらさらない。むしろお子様相手に何をムキになってるのかと、お姫様を諭すことだろう。
そして見た目通りじゃなく魔王なら死ぬ。間違いない。
戦う気はさらさら無いので話せば分かる的なことを言おうとしたが、ふと自分がファイティングポーズをとっている事に気づく。
体が勝手に動いた。いや、戦わなければならないと心のどこかで思っている。
なんで戦おうと思ったんだ?
そしてついに体が動き幼女な魔王に向かって走りだす。
意志とは関係なく?いや戦う意志はあるがなんだこれ。
『あぁ、強制魔法か。』
幼女がそう呟くと俺の体から何か青白いものがはじけ飛ぶ。
な、何かされたのか…もしかして俺オワタ?
足は止まり、戦う意志も霧散した。
『そんな!強制執行の魔法がこうもあっさり消え去るなんて!』
そんな声が後ろから届く。
「うへえ、召喚されて強制的に戦闘奴隷かよ、異世界まじ異世界。」
強制執行とやらの魔法をいきなり霧散させる手管、やはり魔王か。この幼女半端無く強いんだろうなぁ。
「ん、今のは日本語か」『今のは日本語だろうか』
だいたいおんなじような意味の言葉が耳と、脳に直接響く。
あれだ、普通の耳に入ってくる音声と翻訳がいっぺんに来る感じ。日本語吹き替えと日本語字幕がいっぺんに来る感じに近いか。
そして日本語ですよ、この幼女日本語が喋れる魔王さんらしい。
「お、おう、日本語わかるんだな。」
なんとか返事を返す。
「拉致被害者って奴だな、お気の毒様。」『拉致被害プギャー』
だいたい同じ意味なんだろうけど、やはり翻訳がヒドイ。
しかも魔王に同情された。
いやいや、もしかしたらこの魔王良い奴なんじゃないか。強制執行の魔法消してくれたし。
「あ、ども。そういえばあっちの姫さんが君のこと、魔王って言ってたけど、ほんと?」
適当に相槌をうちつつ、思った通りの疑問をぶつけてみる。
「ハァ?なんでそーなるの?」『ハァ?なんでそーなるの?』
おお、正副の音声が合ったぞ。なんかハモるかんじで良いなコレ。
「アハハ、デスヨネー。こんな可愛い子が魔王のハズがない。」
いや最近の風潮からすると、ソレもアリか。
「さて、ちょいと魔法陣から退いてくれ。」『魔法陣から速くどけ。』
俺は言われるがままに魔法陣から出る。そして幼女の隣に立つ。
なんだろう、副音声(ほんやく)はアレだ。本音とかニュアンス的なものが翻訳されたものなのかもしれない。
俺が幼女の隣に来ると、幼女が片手を前に出し、その手がピカっと光ったと思ったら、
え…
なんか轟音とともに魔法陣が吹き飛んだ。
余波で王様とか兵士とかも壁際まで吹き飛んでた。
「すげーぱねぇ~」
どうみても幼女だけど、パワー的に魔王のように思える。
魔王だったとしても拉致被害者に同情的だし、敵対しないなら安全かもしれない。
「さて、アレは召喚専用魔法陣だ。そしてこの国は送還の魔法陣は用意していない。」
なんと!今更ながら帰宅方法がないことに絶望した。
そうだよな、だいたいソレ系の小説やアニメでも、コトが終わるまで帰れないか、一切帰る方法が無いよな。
マジ参った。
いつまでもこのお子様魔王には助けて貰うわけにもいかんしなぁ~
なんかチートついてたりしないかな。
「まぁ、帰る方法は用意してあるから心配しなくていいが、また呼び出されても面倒だから魔法陣を壊してみた。」
ってマジか!
「おお!あなたが神か」
感激のあまりついつい言ってしまった。
「とんでもねえ、あたしゃ神様だよって、何云わせるんだよ」
おおっと、ボケを重ねた!そのうえ中途半端に自分にツッコんだ!
「そこでボケ切らないとは、まだまだお子様だな。しかも古い。」
「うっさい!」
「いやーでも帰れるのは嬉しいな。」
「まー帰るにはちと条件もあるし、時間もかかる。暇つぶしでもしよう」
ふむ、やはり世界を渡るだけあって、色々準備がかかるようだ。しかし、ん?
「暇つぶし?」
「ちょっと待ってて。」
準備に時間がかかるのか、何か手伝えることがあればいいのだが。
独りで暇つぶしするのもなんだしね。
「おい王様。そこの兵士の一ヶ月分くらいの給料を用意して持ってこい。」
何か幼女が王様からカツアゲをはじめたぞ。
いいのかこれ
「************************」
清々しいくらいにワカランが言うことを聞くらしく、隣の兵士に何か指示を出したらしい。
「****!」
涙目ながら、兵士は俺の隣を通って表に飛び出していった。
お金もってくるのかなぁ…
今更だが、ここって城の地下か何かかね。
「送還もどきだが、だいたい半日かかる。おおよそ夕方6時半ころだな。」
ほー。どうなることかと思ったが、日帰り異世界ですか。いや一生いなきゃいけない方もいるので、贅沢は言えないな。
帰れる時に帰らないと、とんでもない事になる。
「なんか助かります。」
「まあ半日城の中で過ごすのも嫌だし、表で観光でもしよー。軍資金はいま取りに行かせたし」
王様脅迫した資金で観光って…なんなんだろうなコレ。
まあいいや深くは考えまい。
「というか、君…王様とかかなりビビってるけど…何物なの?」
今一番ホットな話題。魔王じゃなきゃ、なんだって話。
「うむ。今からだいたい7~8時間くらい前に君と同じトコから召喚された拉致被害者一号かな。」
俺が拉致被害者二号だったらしい。
思いの外ヘビーだった。
じゃなくて…
「いや、魔法陣ふっとばしたり、強制の魔法っての?解除したりしたじゃない?同じとこから来たなら、出来るわけ無いじゃないか。」
日本人で同じことが出来る奴はいないてか地球上に存在せん。
そして金髪幼女はどうみても日本人じゃない。
外国産の幼女だ!
目だって紅いし…
紅?
どーいうことだコレ。充血してるわけじゃないよな。
うさぎさん?
「何と言われてもなぁ、うーむ、私は地球では、普通に主婦をしている身なのだがなぁ。」
『何と言われてもなぁ、うーむ。故郷では普通に魔王をしている身なのだがな。』
副音声(ほんやく)さんがなんか誤変換いや、まて主音声。
こんな幼女が主婦なわけがない。
ちょ…えっ!ちょ、待って、あれ?え、どういう事ですかコレ。
「よ、幼女は結婚できないんだぞコラ!」
なんかテンパッて変なこと言ってしまった。
「あーこの姿ね。エコモード?」『あーこの格好は、魔力消費を抑えるためだ。』
副音声(ほんやく)がエコモードの説明をしている…だと!
「なんどもしつこく召喚されたんだけど、いい加減腹が立ったので1%ほどの力で召喚されてみた。」
『なんどもねっとりした召喚だったので、怒って1%ほどの魔力だけ分離して召喚されてみた。』
何度も召喚?1%てなんだ!?
くそーどっからツッコめばいいんだ!
「つ、つまり99%な方は大人でアダルトな姿なんだな!?」
俺も釣られて変なこと口走ってしまったが、俺のせいじゃない!!
「概ねそんな感じ。」『巨乳なそんな感じ』
副音声(ほんやく)さんの翻訳が荒ぶってるな。概ね=おおむね=巨乳って翻訳かこれ。つか俺の脳内辞書のせいで誤変換してるんじゃないだろうな。
99%の方に会って巨乳じゃなかったら俺の脳が欠陥品ってことだなコレ。
「*********!」
そうこう話しているうちに兵士がジャラジャラと革袋の中身を鳴らしながら駆け込んできた。
金髪幼女は頷いて受け取ると、外に移動するよう促した。
道すがら会話を継続する。
「しかし主婦を翻訳変換すると魔王になるのか。主婦=魔王…言い得て妙だな。」
なんとなく納得してしまった。
「主婦が魔王に変換されるなんてどんなバグよ。」『魔王が旦那に変換されるなんて、どんな過ちだ。』
まって副音声(ほんやく)まってまって!
なんで魔王を変換すると旦那になるんだよ!おかしいよ!
きっと何かの陰謀だよ!
いやもしかしたら夜の魔王かもしれない…ちがうちがう破廉恥すぎるぞ俺!
いや俺の脳内辞書が悪いんだな。きっとそうだ。
だがよく考えると間違えでもないな。
魔力1%で来たり、色々魔法使えたり。果てしなく強そうなこの幼女はきっと魔王に最も親しいモノだ。
これは、深く考えてはいけない事だな、よし、せっかくの異世界だ、おもいっきり観光して、日帰り異世界旅行してやろうじゃないか。
そんな考えを巡らせていると、日本語は喋れるこの幼女が、日本にいる必然性を感じない。
日本語が使える外国人だって居るわけだし、彼女がそうでない理由もない。
「あーそういえば、地球っていうか故郷っていうかでは、どこに住んでるんです?俺は神奈川。」
「へえ神奈川かー私は千葉ね。」『へぇ、横浜かー私はチバラギね』
うん。あれだ、俺の脳に欠陥があるんだと今理解した。
こんな地名で変になるなんてありえない。
「そーいや召喚されたって聞いたけど、なんで王様達あんなに怖がってんの?」
まあ暴れたんだろうなぁとは予想がつくが。
「寝てるトコに呼び出されたから。ついカッとなって…」『我が眠りを妨げるものに死を!』
相変わらず副音声(ほんやく)が仕事するなぁ。
「まぁ眠いとそんなこともあるよね。」
「眠かったから暴れたのは仕方なかった」『反省はするが後悔はしない。』
毎回だが、どんな副音声(ほんやく)だよホント。本文関係ないじゃないか。
「俺もトイレ中に地面が光って回避不能だった。チャック閉めれたのは幸いだった。」
いやあ、焦ったねアレは。
おかげで回避不能でした。
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