第7章
オレに日常が戻った。
復讐を終えて、少し清々しい気分だったが虚しさもある。
オレが自白したことは事実だからだ。
ササガワリョウコは八島たちに殺された、そして自殺として処理された。
だからオレがなんとかしたいと思っても、できなかったわけだ。
自殺現場にいれば止めれたなんて思っていたオレだったが、
自殺なんかしていないのだから、止めようもなかった。
でもそれでも止めれるものだったら止めたかった、という事実は変わらない。
オレはササガワリョウコが好きだった。
けど、ササガワリョウコは佐久間零次に惚れてしまっていた。
オレがつけいる隙すらないほどに。
だから、復讐しようとしていた佐久間零次が死んだとき、オレは不謹慎ながらも笑っていた。
佐久間零次が彼女のためにできなかった唯一のこと。
それが、できる。ある意味、つけいる隙ができたことにオレは歓喜していた。
とはいえ、オレは佐久間零次の復讐計画によって、ササガワリョウコが自殺ではないと知っただけで、だれがササガワリョウコを殺したのかはわからなかった。
けれどそんなときにオレのもとに届いた手紙がオレに復讐を実行させた。
あれは誰からの手紙だったのだろう。
いや、復讐を終えた今、それは些細なことなのだろう。
オレは待ち合わせ場所に歩き出す。
「二江くん」
本田さんがすでに待っていた。
「ゴメン、遅くなった」
「大丈夫、私も今来たところだよ」
本田さんとオレは脱出に成功してから、頻繁に会うようになっていた。
付き合っているわけじゃないが、端から見たらカップルかもしれない。
でもオレは本田さんとは付き合えない。
オレの心は未だにササガワリョウコに惹かれているのだ。
だから本田さんに恋できない。
本田さんを愛することはできないのだ。
ササガワリョウコを殺した奴らにいともたやすく復讐できたのに、
オレは本田さんを傷つける一言を言えずにいる。
「人間って複雑だ……」
「そうかな、私は意外と単純だと思うよ」
オレの問いに本田さんが応える。
意味も分からず、オレは笑う。
すると本田さんも笑った。
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