第11話
四月十八日
配達用トラックがレッドの逃走に使われ、擂粉木は隠され、戦力が半減どころか、己の腕っ節のみが頼りになるパープルは悪戦苦闘の連続。
敵の甘言ゴールデンパラシュートによる社長経営で此方に寝返らないか?
と甘い誘惑に心は震度七強並にぐらぐらと揺れながら、強がりを見せ、娘ブラックの付き合いを許さないことから前日深酒し、麦酒、葡萄酒、ラーメンの重厚な三重奏のちゃんぽんは怠惰の極みとなり、容赦なくパープルの肝臓と胃袋に襲い掛かる。
やがて二日酔いの急激な運動をし、動作に煽られて戻してしまう始末。
遂には敵に囲まれ、孤軍奮闘及ばず大ピンチっ!
此処が俺の死に場所か。と覚悟を決めたパープル。
其処へ現れたのはブルー。パープルを庇い、敵の宿将都都逸の魔の手、赤字帳簿にかかり死んでしまう。
死ぬ間際に、やっぱりこんなことか……俺が居ないとお前ら駄目だな……養父さん、之をブラックに今までありがとう……と言い残し事切れるブルー。
涙ながらに遺骸を抱きかかえ、叫ぶパープルの手には婚姻指輪が残された。
次回に続くで終わりを見せた。最終回まで後二話。果たして結末や如何に?
……ふうぅっ。虹色戦隊戦場の思春期!
今回も面白いの一言でした。朝からテレビに齧り付いて正解でした。
後で祭子ちゃんと熱く語らないと。今日も一日仕事を頑張ろう。
今日は珍しく雑用が少なく丸一日暇でした。なので買出しに行くと言って久方振りにさぼってしまいました。皆さん此処だけの秘密ですよ。裏手のビルは最近工事中で建築音が忙しげに鳴り響いています。
春茂る季節になり始める神保町の町並みをぶらぶらと練り歩く僕。
神保町は古書薫る街。文化の街でもありますが、同時に路地裏文化が花咲いた区画でもあります。
普段は表通りをせかせかと歩く足並みをふっと立ち止めて一歩踏み外し、路地裏に勇気を出しながらふわりと踏み出すと、怪しげな裏道に迷い込みます。其処から先は異世界の幻想的な下町文化が咲き乱れています。
こんな路地裏が好きなんて以前の私は猫ちゃんでしょうかね? 思わずクスクスと笑いこんでしまいます。ですが僕はトナカイ。天敵は猫科の大型動物に熊に狩猟者ハンターなどです。生前が猫ちゃんなんてまっぴら御免です。悪しからず。震えが出てきたので肘を合わせて擦り暖めると元気を取り戻しました。
そんなこんなで何時しか僕は古書のつんと鼻孔を突き刺す書物の古臭い香に、飲食の生唾湧き出すふくよかな香りに誘われて、目的もなくついふらふらと蝶々みたいに彼方此方の路地裏に誘い込まれてしまいます。
路地裏でふらふらとしていたら、三太さんが昨日苛めた猫がみゃあみゃあと看板見詰めながら威嚇しているのに気付きました。
猫の視線の先には白壁の古い塀があり、塀の上では顔馴染みの大柄な三目小僧がチョコレートをもぐもぐと美味しそうに頬張っています。
おおぅいそんなところで何しているんだい? と尋ねてみると三目小僧は口元をべったりと黒く汚しながら答えます。
おおぅコメットじゃないか、このチョコは獏さんから貰ったんだよ、今朝方欧州観光から帰ってきたみたいだ、喫茶芭婆バーバーで骨休めがてら旅の土産話を語っているらしい。
ありがとう又今度ね。又今度なぁ。と互いに手を振り分かれました。
獏さんが旅行から帰ってきたんだ話を聞きに行こう。僕は久方振りに会う獏さんを考えると心が躍動しました。
獏さんは三太さんと同じ位有名な大妖の一人です。夢を食べる恐ろしい妖怪です。ですがとても面白い人なので僕は大好きです。
早く会いたいと思い僕はご自慢の脚力を駆使し、疾風の如く韋駄天顔負けで走り、急いで喫茶芭婆バーバーへと向かいました。扉を開けるなり松さんにこの間は来れなくてすみませんでした。と謝りなんでもお見通しの松さんは気にしないでいいのよ、コメットちゃんは忙しいもんね。と朗らかに笑いながら無言で珈琲牛乳を用意してくれました。
熱々の珈琲牛乳をちびちびと飲みながら、獏さんは帰ってきたんですか? と松さんに尋ねると今家で旅の垢を落としている所だと教えてくれました。
獏さんのお土産であるナッツ入りのチョコレィトを舌先で転がして、ほろ苦い甘さを堪能していた時です。店先で大声で罵り合っている声が聞こえてきてかと思っていたら、店内に三太さんと梅さんが言い争いしながら同時に扉を開けて、僕を間に挟んで二人一緒に同じタイミングで仲良く紫色のふかふか綿の西洋椅子に座り又もや口喧嘩を始めました。
ですが僕に目聡く気付いた三太さんが渋い顔を浮かべ舌打ちしながら、仕事せんかいコメット。
あんたこそ仕事しろよ糞爺。と梅さんがすかさず援護してくれました。ですが其処からは又もや皮肉の応酬合戦でス。僕は三太さんと梅さんの間でおろおろとし、原因が僕であると分かるので居た堪れなくなる僕です。開口し文句を言う方に向い話を聞き遂にはほろほろと涙が零れ落ちそうになった頃、松さんが助け舟を出してくれました。
梅さん獏さんはどうなさったの?
あ、いけない、家に忘れちまったよ。
ふん、耄碌婆あが。そんなこったから年取るんだよ。
はぁん、なんか言ったかい糞爺が? もごもご五月蝿くてなんだかよく聞き取れないよ入れ歯の不調かい?
畜生! 其処になおれい打ち首にしてやる。
ああ、いやだいやだ年は取りたくないもんだねえ、最近耳が遠くなって仕方が無いよ。あら嫌だっ! 米津斗ちゃんぢゃないかい、なんだい恥ずかしいところ見られちまったねえ、忘れてねぇ、一人で買出しかい偉いねえ、飴ちゃんあげようかい。
と急におばあちゃんチャラに変身してはあれやこれやと世話焼きをし出します。
――僕は子供じゃないんだけれどな……
暴れだす三太さんを必死になって押さえ込みながら心底では露骨に反骨する僕です。然しながらそんなことは知らずに、むしろ知られたら反抗期がきたのかい。と逆に喜ばれそうなので口元に突っ込まれた棒付き飴玉を舐めながら黙っておきます。
それにしてもこのお二方は喧嘩を生き甲斐にしている感じがあるので何とも可笑しなものです。そこに突然現れたのが獏さんです。獏さんは三太さんの白兎かぐやに凛と騎乗していました、いったいどこからかぐやを調達してきたのでしょうか?
疑問はさて置き、獏さんは見事な手綱捌きでかぐやを制しながら此方にたったっとした歩調で近寄りました。
初めて獏さんを見ると面食らう御方がいるかもしれません。獏さんは親指ほどのサイズに肌は不健康なまでに白一色で少々青みを帯びています。
とても薄化粧です。前髪は眉上でぱっつんと揃えられています。
小さな体に不釣り合いな黒のゴスロリ帽子はとても大きいです。円盤みたいです。黒い瞳は硝子細工みたいです。ちょっと不機嫌そうにお眼眼を吊り上げて、額に皺をこしらえて此方を睨んでいる顔に見えるのは、眼が悪いので苦労して見ているに違いありません。
皆さんのお顔を真正面から見たいに違いありません。全く最初から眼鏡をすれば良いのにね。
眼鏡が嫌だからコンタクトをする乙女の努力には感服ですよね皆さん。
かあいいです抱きしめたいですが抱きしめたら警察沙汰の悲劇が起こるのでぐっと堪えます。
然し時折男の娘になれる贋者の兄さんとは違い、獏さんは絶世の美少女です。お人形さんみたいです。
ですが長い睫毛にでんと何重にも乗っているマスカラは驚愕です少々怖い印象を与えます。
常に噛み煙草を荒々しく之でもかと吸っては白煙をもうおうと豪快に吐き出して唾と痰をぺっぺっぺっと交互に地面に吐き出しております。
時折その小さな喉の何処から漏れ出る声なのか親父みたいな声でえづき血反吐を吐くこともままありますが多分あれは違います。
血ではありませんよ内心にある己の濁った心を吐き出しているのですよ。
畜生! 糞ったれ! ばあろうめい! と誰かに対してなのか自分に対してなのか、兎に角罵倒し親父みたいに涎を袖でごしごし、と何事も無かったかのようにして拭きながら涙目で此方を見詰める様はかあいいの一言ですね。
一点物の年季が入り、雑巾一歩手前の薄汚れた藤色の肩掛け鞄の中には何に使用するのか分からぬとても大きな鋏があります。
きっと前髪を揃えるためのものですね女子の必需品ですよね?
こないだ語尾を延ばす若者の舌をきりてえ。
美味しいをおいひぃと語る女子の舌を切りてえ。
両手を叩いてウざいリアクションする人間の手首をきりてえ。
で其の話の落ちはと聞く人間の鼻を切りてえ。
既婚者の左手に輝く薬指をぽとりとこの愛刀雀鋏で切りたい。と独り言にしては長い言葉を聞いたのはきっと空耳です。
他にはちいさな桃色の水筒の中に蕎麦茶が、禍々しい蛇革のポーチ入れには向日葵の種とスパム缶を常に携帯しております。凄い抜群の栄養管理ですね、と褒めると恥ずかしそうにほらよ、と言いながら向日葵の種を一粒だけくれます。ちょっとおケチさんですね。
身長と比例しているのでしょうかね?
基本、夜行性の性質を持ち合わせているみたいなので心配してしまいます。梅さんはもっと外に出なさい、太陽を浴びなさい、野菜、特に鉄分を採りなさい、臓物系の食事も採りなさい、煙草は止めなさい、でないとどっかの誰かさんみたいに不健康になりますよ。と三太さんを一瞥しながら常々口を酸っぱくして注意しております。ですが五月蝿い婆あと言われてちょっと叱ると其の度にえんえんと僕みたいに泣かれてしまいとても手を焼かされてしまいます。
そんな時梅さんの七つ道具の一つである割烹着の大きなポケッツから、それはそれはとても大きなまあるい虹色の棒付き飴玉をあげて宥めます。
親指姫サイズの獏さんには元々大きい飴です。
自分の体よりも大きいのですから、途端機嫌が直り、おいちいおいちい、と言いながら瞳を輝かせてぺろぺろと舐める姿は微笑ましいものですね。
そんな獏さんですが御歳千年みたいです。
どひゃあ自称とは申せとも凄いですね!
1千年も生きるとはどんな人生なのでしょうか考えられません。嘘を語るその舌が信じられません。妄想する僕の脳内がお馬鹿さんなのです。
そんな可愛い獏さんは真っ黒な帽子を被っております。
帽子の下からはちょっと小生意気そうな黒毛の巻き髪がうねうねと風に揺れて、今にも此方に襲ってきそうな恐怖を抱かせます。
然し決してその様なことは無いのでご安心を。と僕はいつも申しております。
獏さんはそれが気にくわないのか、僕にだけにしか聞こえない微かな舌打ちを毎回し、初対面の方には必ずふてぶてしい態度を隠して、高貴なお嬢様風に膝を曲げながら会釈し、帽子に手を延ばしごきげんようよと挨拶します。
御機嫌ようよ、と相手が返し終えたら其処からが本当の恐怖の始まりなのです。
黒帽子を脱ぐのです。其処には元来あるべきものが具わっているはずの髪が無いのです。
常に剃刀で剃髪しております。青光りしててらてらと反射しています。
そうカツラなのです。
思わず皆さんあっ、と声を呑んでこんな天使の乙女が何故剃髪をと怯えてしまい、興味津々の眼で見入ります。
それを何事も無かったかのように立振舞い完全無視するのがお約束になっています。
そんな可愛いエルザちゃん。全身が黒ゴスロリ、相対的に背中から生えている翼は、何も描かれていないキャンパスのように真っ白ちろなの。それはね、こころが綺麗な証しよん、貴女は生まれたての子供みたいに無垢な赤子なのね。
実際は1千年のお婆ちゃんには見えないのねん。然しその手にいつも持ち歩いている日傘は面妖です。
表面は不安定な精神面を表すかのように紫。裏面は血のように真っ赤な紅日傘の尖った格好で一際目立ちます。
美男子のしゃれこうべの杯で猪の生き血が呑みたい。
恋の味がする食事を食してみたい。
竜の肝が食べたい火衣を着てみたい。
人間で作られた橋の上に立ち、尖ったヒールでこれでもか、と足腰が立たなくなるまで一晩中踊り狂い朝を迎えたい。
と腕白坊やも顔面蒼白で逃げ出す発言をすることが口癖です。
筆舌では形容できぬかあいさが存在しています。百万語の美辞壮麗では語り尽せぬ女の子です。
然し元来妖精さんとは悪戯好きなものなのです。だから皆さん温かい目で見守ってください。
この言葉内面妄想暴走も全ては獏さんの悪戯なのです。変わりに梅さんが妖精さんを叱って暴走する心を諌めてやろうと思いますので、之にて失敬しあす。
日傘を地面に深々と差込み、半ば親父みたいな仕草の、夏バテ気味のカンガルーみたいにごろりと寝転がり、漫画を読んでおります。
やや不貞腐れ気味で、頬杖を片手につきながら、残りの手で尻をぽりぽりと掻き毟り、くんんくんと匂いを嗅いでおります。
器用にも足指で向日葵の種を口元に運んでおります。
ちっ、面倒だな。と舌打ちし、此方に可愛いお眼眼をぎらりと怪しげに光らせ、白兎かぐやに騎乗しながらこちらを向き挨拶します。
御機嫌ようよ。と松さんに次いで三太さんと僕の順番に右手で帽子を脱ぎ、剃髪した頭を見せつけながら、スカートの裾を左手で掴み上げて、淑女風と貴族のごちゃ混ぜでいながら、どことなく優雅で気品を醸し出す挨拶をします。
三太さんは相手が下手に出ると、すこぶるご機嫌が麗しくなるので、調子に乗って紳士的に挨拶を返しました。僕も右に倣えの精神で挨拶を返します。
獏さんは満更でもない御様子でした。呵々。と一笑するや鞄から煙管を取り出し、スパスパとかぐやの頭上で紫煙を濛々と気持ちよさげに吹かしはじめます。
日本は随分と久しぶりだねえ。
……そうさねえこの地を離れて彼是七年になるかね。色々と変わっちまったみたいだね。でも安心したよ、お前達はなーんも変わっちゃいないから、何一つ変わってないから。
獏さんは邪眼とも思えるほどに、黒く大きな瞳を薄めさせ、過去と現在の遠く近い記憶をぼやかしながら、重ね合わせているみたいでした。
三太さんが、獏殿、長旅の疲れで大変だろうが少々我に話を聞かせてくれたまへ。と待ちきれなかったのか、土産話を催促しせっついています。
獏さんはぷかりと大きな紫煙をひとつ吐き出すと、あれやこれやと旅話を紐解き始めて、その都度三太さんは一喜一憂して喜んでおります。
でも僕は、その傍らで何となしに暗くなりました。
僕は少し大きくなったし、おとなになったんだけどなぁ。と思っていたからですが、それは又別の話。
三太さんが同席している以上否定されるのは目に見えています。それでも何か反論したい僕ですが、引っ込み思案の僕は言い出せない。自分にやるせない気持ちが強くなり、棒付き飴をがりがりと噛み砕き、黙ってチョコレィトを舐め、舌先で溶かしながら思慮してみました。濁流の如く激しく、それでいながらゆるゆると流れてくる思考の渦。
僕が幼い頃は未だ欧州に住んでいた記憶。
果てしない大草原にしんしんと冷えた空気。
夏場のカラッとした風に違う太陽と雲模様。
水も違えば食事も文化も人種の全てが違う世界。
覚えているトナカイとして駆けずり回った大地。
微かに、それでいながら確実に、心に刻まれていた、僕の古い思い出が鮮やかに蘇り始めます。
メランコリックな感傷に浸っているのが手に取るように分かっているのでしょうか。夢を見ていたのかいコメット、故郷の夢を。漠漠の故郷はどんな所なのか?
と獏さんが問い尋ねています。
その眼は透き通った漆黒の瞳で、真っ直ぐに射抜くように僕を見詰めています。僕の心根は恐怖のあまり奥底からぶるるっと震えが迸りました。
その恐怖の源とは、おぼろげながらたった一つの懐かしい真実の夢が、獏さんに食べられちゃうよおぅ。と思っていたからです。
獏さんは、笑いながらそれは無いから安心しな。と笑いながら言います。獏さんは僕の心でも読めるのでしょうか?
人生経験からくる差かもしれませんね。小首を傾げて謎の解決を放棄する僕です。
そうだ、今朝方主らの長男を見かけたぞ。
突然獏さんは、思い出したように手を叩き、言い出します。
僕達一同は水を打ったかのようにしんと静まり返り、先程の賑わいが消え失せ、しいんとした静寂が急に訪れました。
――今何と言った獏殿?
驚きの体で聞き返す三太さんに、同じ台詞を一字一句違えずに、獏さんも答え、更に言葉を紡ぎます。
相変わらず面妖な井出達であった。白いスーツに、洋杖片手に持ち、シチリア帽子を被り、包帯を顔に巻きつけて。颯爽と歩んでは、誰も見ていない方角を時折振り返る仕草は変わっておらんかったのお。どことなくぼおうっ、としているのも相変わらずじゃった。
顎を掻きつつ語る獏さんは、気付いたかのように語ります。
こりゃ失礼、阿奴は又ふらりと風のように旅立ってしまったのか?
座に連なる皆々は驚きのあまり声も出てきません。然し三太さんだけは悠々とお茶を啜り、ぽつりと洩らしたのを僕は聞き取りました。
――そうか帰ってきたのか、生きておって重畳だのお。
三太さん心配していたんですね。僕は三太さんを思わず凝視してしまい、視線に気付いたのか、虫でも追い払うかのような仕草で、ぶんぶんと僕の眼前の空気を撹拌させます。狂った仕草に、他の方々はいぶかしむ目付きを向けられて気恥ずかしいのか三太さんは、
失言ぢゃったかのお?
と、お茶目な言葉が飛び出てきます。
発言がいつも失言辞書みたいな方なので、なんだやっと気付いたのか。といった気配が濃く漂ったのに気付いていない当の本人三太さんには内緒にしておきましょうか。
皆さん其々の顔付きで考え込んでおります。三太さんは懐手し額に皺寄せて、銜え煙草で天井を盛んに燻しています。梅さんは煙草を吹かし渋面浮かべてしきりにうんうんと唸りこんでおります。松さんまでもが腕組みし眉間に皺寄せて天井を見上げておりまます。話を振った獏さんは煙管から紫煙を濛々と吐き出しながら、愉快そうに笑みを浮かべております。
僕とかぐやは干物になっちゃうよ。と悲鳴をあげそうになりながら少なくなり行く喫煙者に、一兎と一鹿の獣二匹はくりくり赤眼と涙目で潤んだ灰色眼にて非難の眼を向けることで抗議しますが、届きそうにありません。
――コメット
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