言葉なき

やなちん

プロローグ

 夕日に染まる浜辺。寄せては返すさざなみの音。潮風に吹かれるたびに僕達は海の匂いに包み込まれる。

「パパ、ママ早く早く!」

 隣には小さな手で僕の手と彼女の手を引っ張る小さな命。その隣には、子供のように眩しい笑顔でこちらを見つめる彼女。僕は彼女に微笑み返す。


 今のような幸せがあるのは、当然ながら過去の出来事が今につながっているからだろう。だとしたら、その過去の出来事がどんなに辛い出来事でも、どんなに悲しい出来事でも、その出来事に感謝するべきなのだろうか。

 たとえば、とある地方のとある高校に、とある二人の男女がいたとして、彼女がこの世界から『 』を失ったとしても――。



 そんな過去は高校時代まで遡る。

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