第6部
戦局の変化を感じ取ったムーンフェイスは、本陣傍に停止させていた大型武装アーマーへと乗り込む。
「以外にも善戦するとは面白い。この【シュレディンガー】の遊び相手になってもらう!」
そう口にし、不敵な笑みを浮かべると、ムーンフェイスはコックピットから、シュレディンガーの下部に搭載されている反重力機関を起動して浮上させ、各部スラスターを吹かして戦線へと赴くのであった。
「まずはコイツからだ」
最初にロマンダイナへとターゲットを定めたムーンフェイスは、シュレディンガーの左右に配置された大型クローアームからクロー部分を射出する。
ワイヤーに繋がれ、小型スラスターを吹かしながら、重々しい爪がロマンダイナの装甲に突き立てられた。だが・・・・・・
『フン。そのような陳腐な爪で、余に傷をつけられると思ったかァッ!』
ロマンダイナである金太郎の怒りに呼応する様に、殺意漲る赤ずきんは、ロマンダイナの両眼からシュレディンガーへ向けて反撃の光線を放つ。
しかしシュレディンガーは、かつてパンドラが展開したフォースバリアと同様の、球体状の防護壁を機体周囲に展開すると、ロマンダイナから距離を取りつつ、射出した大型クローを引っ込めた。
そしてそれに対し、ロマンダイナが全身のスラスターを吹かして急接近を始めると同時に、ムーンフェイスはシュレディンガーの大型クローを再び射出。今度はその爪を目一杯に開き、ロマンダイナの両腕を掴み取ると、そのまま握り潰すべく握力を強める。
『これは! ロマンダイナと化した余にパワーで挑むとはいい度胸だ。此度は前のようにはいかんぞ!』
その金太郎の意思を反映するかの如く、ロマンダイナの全身から、甲高いパワーボルテージの上昇音がうなりを上げ、両方の前腕部が捕まれている中、左手で右腕を掴んでいるクローを引き千切りにかかった。
だがそこへ無数の鎧武者軍団が駆けつけると、地面に砲台を固定し、方々からロマンダイナへ向けてアンカーミサイルを射出して巻きつける事で、ロマンダイナの動きを更に妨害し始めたのである。
『グッ!』
その時、アリス&桃太郎組はというと、桃太郎が構えたクラヴィティハンマーから反重力波を放ち、ガトリング砲やミサイルランチャーから降りかかる攻撃を全て跳ね返していた。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・一体あとどんだけ・・ハッ!」
桃太郎がふと左側へ視線を向けると、そこに四方八方から、まるでガリバー旅行記の如く身動きを封じられているロマンダイナの姿を目にする。
「金太郎様!」
『えっ? ちょっ・・桃太郎さん!?』
突然、クラヴィティハンマーのままで放り投げられたアリスは、戸惑いの声をあげた。
「金太郎様が危ない! チッ、あの生意気娘がッ」
人間形態に戻ったアリスの方を振り返りながらそう答えた桃太郎は、コックピットに乗っているであろう赤ずきんへの毒を吐きつつ、ロマンダイナ救出の為、抜刀しながら駆け抜ける。
「ム? フン、煩いハエが一匹来たか!」
ムーンフェイスがそう言うと、シュレディンガーは機体左右後方から様々な大きさのマルチビットの大群を射出し、桃太郎に総出で襲い掛からせた。
「チイッ!」
その存在に気付いた桃太郎はすぐさまスピードを落とすと、真横に飛び、最初のマルチビットの攻撃をかわす。
直後に襲い来る後続のマルチビットも難なくかわす桃太郎だが、パンドラが【
「ヌウッ!」
更に桃太郎は、マルチビットの攻撃をかわすだけでなく、それらを抜刀した刀で斬り裂き、二つに裂けたビームを利用して、ロマンダイナを妨害するアンカーミサイルのワイヤーをも斬り裂く事に成功したのである。
『おぉ! 桃太郎よ助かったぞ!』
「金太郎様ァ~、こちらはおまかせあれ~!」
営業スマイルの様な満面の笑みを金太郎に見せた桃太郎は、マルチビット群に向き直ると雰囲気を一変させた。
「さぁて、とっとと片付けるか」
そう言って舌舐めずりした直後、一瞬で姿を消した桃太郎は次の瞬間、次々とマルチビットの死角に現れては、紙の如く斬り裂いていき、展開されたマルチビットを軒並み迎撃してみせる。
「コイツ・・・・・・」
その桃太郎を想定以上の脅威と見たムーンフェイスは、シュレディンガーから新たに、マイクロ誘導ミサイルを発射し、桃太郎に畳み掛けた。
当戦局において、童話主人公勢は【
『「「「!?」」」』
四人の後方から渦巻く突風が三本、鎧武者軍団とマイクロ誘導ミサイルを直撃した。
「今のは?」
アリスがその方向へ振り返ると、そこにはキタカゼとタイヨウを倒し、新形態【ミラージュドレス】へとドレスチェンジを遂げたパンドラの姿が顕現していたのである。
《北風と太陽編――最終部に続く――》
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