ビショビショなパンツ


 オシッコしても大丈夫な脇道を目指すミツバは、エンカウントするモンスターをことごとく葬った。こういう時に限って、モンスターとの遭遇率が高かった。

 ずっと一本道だったが、ようやく、道が2つに分かれているのを発見。

「あっち、脇道だよね!」

 細い道に向かう途中で出会ったモンスターは一撃で屠った。お金になるので、急いでいる時でもコアは回収しておく。

「オシッコ~」

 脇道に入り、都合よくあった茂みに飛び込む。さっきまでの道には、草らしい草は生えていなかったのに。

 ミツバはパンツを下ろした。

 しゃがんだ。

 黄金の聖水(オシッコの事だよ)が地面を濡らす。

「はふぅ……」

 オシッコが黄色いのは、MP回復用ポーションの影響。HP回復用だと、そんなに黄色くならない。

 水たまりが大きさを増していく。

 ガサッと音がした──。

「ほえ?」

「おや」

 冒険者と思しき青年(イケメン)が現れた。

 ショロロロロロロ……。

 ミツバはオシッコをしている。

「きゃああああっ!?」

 何となく事態を理解したミツバは、立ち上がってパンツを穿いた。しかし、オシッコはまだ出たままだ。

「止まって止まって止まってよぉぉぉ!」

 結局、黄金の聖水(オシッコの事だよ)が全部出てしまうまで、止まってはくれなかった。

 オシッコは止まったが、今度は涙が出てきた。

「うわあぁんっ! オシッコしてるとこ、男の子に見られたー! アタシ、処女なのにー!」

「失礼。覗くつもりはなかったんだけどね」

 そう言う青年だったが、放尿するミツバに釘付けになっていた。前かがみになっている。

「お腹痛いの?」

「お腹よりも少し下の方がズキズキするかな」

「大変!」

「大丈夫。勝手に収まる痛みだから」

「そうなんだ? それより、アタシがオシッコしてるとこ見たんだから、責任取ってよ! アタシ、処女なんだよ!?」

「僕でよければ結婚しよう。ちなみに、僕はイケメンな上に金持ちだよ」

「結婚してください!!!」

 ミツバはお金が大好きなのだ。

「さあ、これを」と何かを差し出す青年。

「ハンカチ?」

「女の子用の新品のパンツだよ」

「なんで女の子用の新品のパンツなんて持ってるの!?」

「泣いている女の子にハンカチを差し出すように、お漏らししちゃった女の子にパンツを差し出すのが紳士なんだよ。多分」

「そうなんだ」

 よくわかんないけど、ミツバはパンツを受け取った。高級そうなパンツだった。

「ありがとう、紳士さん。でも、アタシはお漏らししたんじゃないから! オシッコしている最中にパンツはいただけなんだから!」

「ちなみに、僕の名前はシンジだよ」

「アタシはミツバ」

「ミヅハ?」

「ミヅハはオシッコ女神の名前だよ! アタシはミツバ! ミ・ツ・バ!」

「さあ、ミツバちゃん。パンツを穿き替えて」

「……あっち向いててよ」

「夫婦になろうってのに、恥ずかしがり屋さんだね。さっきは、オシッコするところを見せてくれたのに」

「見せたくて見せたんじゃないもん!」

「オシッコが出てくるところを見せてくれても良かったのに」

「やだよ! はずかしいもん……」

「夫婦になったら、もっと恥ずかしいところを見せる事になるじゃないか」

「まだ夫婦じゃないもん! あっち向いてて!」

「分かったよ」

「こっち見たらダメだからね!」

 新品パンツはポケットに入れといて、オシッコでビショビショになってしまったパンツを脱ぐ。

 すると、冒険者に見える謎のメッセージウインドウが空中に出現。

【錬成結果:ビショビショなパンツ】

「アイテムが錬成されてる!?」


 このパンツが性杯(誤字ではない)というトンデモアイテムの素材になる事を、この時の2人は知らなかった──。

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