第81話 木曽での事1
塩尻に着いた。
しかし、塩尻では特に特筆した出来事はなかった。
あったとしたらこないだの諏訪でした真田への話が正式に決定した。何ともあっさりと決まってしまったため拍子抜けだ。
それ以外、塩尻での出来事はないため俺達は再び場所を移動した。
俺達は塩尻を出ると木曽方面へと向かっていった。東山道のちの中山道。現在で言えば酷道20号線にあたる道をひたすら歩いた。本当にひたすら歩いた。
まったく群馬からずっと歩いているが、車とか改めて本当に便利だと実感した。よく、この時代の人は徒歩で移動することが来たなと。まあ、車とか電車とか便利なものを知らないからこうして移動することに苦がないのだろうと思うけど。
「何だ、忠志ぶつぶつ言って?」
「疲れたんじゃない?」
俺が思っていたこと。それをずっとぶつぶつとどうやらつぶやいていたらしい。
それを2人にからかわれた。
むぅ。ちょっと、負けた感じが嫌だな。
「疲れてはいるけど、どうせ休めないだろ」
「あー、そうだな」
「このまま進軍は止まらないだろね」
俺の休みたいという願望は一瞬にして終わる。このまままた歩き続けるのか。本当に嫌だ。
「あーあー、さぼりたーい。車に乗りたーい」
俺は駄々こねる。
「駄々こねるな」
「本当。駄々こねちゃだめだよ」
駄々こねた俺を2人が注意する。
うぅ、別に駄々ぐらいこねったっていいじゃないかと俺は思うも文句を言わないでおく。ただ、顔には正直に出ていたようで2人とも何となくだが俺の気持ちを察してくれたらしい。
「……そんな顔しないでよ」
「ああ、駄々こねたから注意したんだぞ」
俺は文句を直接言わなかったが、2人は俺に対して直接苦言を言ってくる。あれ? 俺の方が大人な対応していないか。そんなことを思う。
「そこまで言わなくたっていいじゃないか」
俺は抗議する。
文句を言わなかったのにいろいろ言われたので文句を言うことにした。
その後は、どうでもいいような会話が永遠と続いた。
それが塩尻でのことだ。
とても、つまらなかった。
何事もなかった。
塩尻の次に向かったのは30km程度先にある木曽福島だ。中山道の宿場の1つである。木曽地域はとても山深い場所だ。現代においてもその山深さは変わらない。この地域は日本共通の最大課題過疎化に悩んでいる。その上、多くの自治体が存在している。それは現代の問題である。
では、戦国時代となればどうか。
戦国時代の日本の人口は今の日本より少ない。そんなこと俺でも知っている。
確か、竜也が前にその人数について言っていたような気がする。1000万人だったきがする。1000万人という人口を現在あてはめると東京都の人口が1300万人、神奈川県の人口が920万人であるからとても少なかったと考えることができる。
だから、木曽という山中に人がいるかと言われればかなり怪しい。
「しっかし、木曽は本当に山奥だな」
「だねえ、山賊とかいそうだね」
「ああ、いそうだな。あとは、戦で負けた側の武士が逃げた場所としての活用もありそうだな」
「このあたりって山深いから米の収穫とかなかなかできないよね」
俺の考えを横に竜也と佳奈美がかなり真剣に木曽地域について考察をしていた。俺にはそこまでの考えに至ることができない。いや、この時代が専門の人って本当にすごい。
「忠志、このあたりって何が有名か知っているか?」
竜也が突然俺に話を振る。
「有名って? 俺が知っているわけないだろ」
俺は、唐突に聞かれたので半ギレして答えてしまう。
「何言っているんだ。農作物の事だろ。お前は、農作物を見聞するために此度に付いてきているんだろ。忘れたのか?」
……忘れていた。
いろんなことがありすぎて自分の目的というものを見失っていた。確かに竜也の言うとおりだ。俺は、農業でこの時代を生きる。そう決めたのにまた自分がぶれていた。
やべぇ。
自分がダメダメだと思い知らされた。
さて、そんな自己嫌悪に陥るも、竜也から求められたことに答えることにする。
木曽地域の産物が何であったか。自分の知識を頼りに思い出そうとする。
米は少なかった気がする……野菜があった。キノコだったか。いや、キノコよりも何か有名なものがあった気がする。
蕎麦。蕎麦だった気もするが、え、ええーっと。
「蕎麦、キノコあとは……あっ! そうだ伝統野菜にこのあたりにかぶがあった気がする」
「かぶ?」
俺の言葉に佳奈美が疑問で返す。
「ああ、かぶ。確か、このあたりには伝統野菜にかぶがあったって前にどっかのサイトで見た気がする。木曽の農林センターとかそんなものでだったかな」
俺は自分のうろ覚えな知識を語る。
うろ覚えなので自身はない。だが、何かのヒントになればいいと思い話。
竜也は俺の話を聞いて「そうか」みたいな顔をした後に話す。
「かぶがあれば、漬物とかできるな。あればいいものだ」
竜也は、適切なアドバイスをくれるのではなく食べたい。そんなことを言い出しただけだった。
てっきり違うことを考えていた俺はガクリとしてしまう。
「……」
何とも言えない俺の思いが胸中にあったのだ。
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