第15話 策

 翌朝。

 この時代の朝はどうやら早いようだ。まだ、空が暗いうちから起きていた。これが農村の生活かと思ったが、俺はどうやら神様だから何もしなくていいと言われた。朝起きた意味とは一体? ちなみに俺が起きたのはきくが俺の横を通り過ぎた際に起きてしまったのでそのまま田んぼまで来たのに由来する。

 これならもう一度寝れたか。

 ふぁー。

 大きな欠伸が出た。

 やはり現代人にはこういった生活はつらい。まあ、とりわけ俺は堕落した生活を送っていた自慢があるがな。自慢するほどのものじゃないのはわかっているが……

 疲れている。やはり。自分で言ったことをすぐさま否定する。なんてこった。

 しかし、それなりに疲れている理由が俺にはある。

 まず、今日は俺が戦国時代に来た2日目だということだ。よく、異世界転生した奴や過去にタイムスリップした奴はその時代の環境に慣れることができると思う。少なくとも俺にはできない。戦国時代は現代よりも若干寒い。小氷期とか確か言ったはずだ。そのせいで服を着ていても暑く感じられなかった。春の終わりだから大丈夫だろうと思っていた昨日の夜の自分に対して見事なブーメランが帰ってきた。

 寒かったぞ、昨日の俺。

 さて、そんなくだらない言い分はいい。

 俺が何を悩んでいるかというと忘れている人がいるかもしれないが、俺にはある話題が提供されていたのだった。それは村人が困っている隣村との争いを解決させるというものだ。

 俺に策が立てられるわけがないと昨日言ったが、確かになかった。一晩寝たものの俺には策というものを立る実力も頭もないということが見事に分かった。やはり、断って正解だった、と言いたいところだが、そんな簡単にはいかない話だ。何せ村人たちは俺のことをまだ神だと思っている。神といえば、願いを祈り信仰心を持てばかなえてくれる存在であると思っているはずだ。

 だから俺が不可能であるといくらいってもそのことを疑ってくれない。むしろ自身の進行が浅いのではないかと新宗教を作り出しそうな勢いだ。

 それだけはまずいと思う。

 この戦国時代は宗教的にはキリスト教が入ってきた時代でもあるが、既存の宗教仏教であると一向宗つまりは浄土真宗と法華宗つまりは日蓮宗が強い。この2つの宗派は対立し、とりわけ京都においては1536年に天文法華の乱という宗教戦争を起こすほどのものとなっていた。宗教とはそれほどおそろしいものだ。現在もそして過去も。

 俺のことを信じている村の人たちが新たに宗教的なものを作ってしまったら俺のおとなしく生活をして、この時代になじむということが完全になくなってしまう。

 だからこそ、そのことだけはふさがなくてはいけない。

 やれないとわかっていてもどうにかしてこの問題を解決することが必要だ。

 そう、策を今からでも考えなくてはいけない。

 現代においてこのようなことが起これば普通は裁判所などで仲裁をしてもらう。つまりは、領主様の元へ行けばいいのではないか。

 そうだ、うん。そうしよう。

 俺はこの提案をすでに村人が思い浮かんでいるかもしれないことを十分承知の上で提案してみるtことにした。

 だから、とりあえず今の俺がすべきことは何かというと……


 「二度寝しよう」


 俺は眠かったのでもう一度寝ることにした。

 第一きくと一緒で全然寝れなかったし、策を考えないといけないというプレッシャーもあったから仕方ない。

 何となく気分がよくなったのでそのあと俺は十分に寝ることができたのだった。

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