第4話 『幼馴染会議』

「では、私たちの今後の対策を考えていきましょう。このままでは去年の二の舞になってしまいます」

「そうだな。何かいい案が浮かんだら遠慮なく言ってくれ」

 ファミレスに着いて、全員がフリードリンクを注文し、一息ついて。颯太の一言で皆が考え出す。

「はい!」

「はい、夏希」

「私は、居留守を使えばいいと思うの!」

「というと?」

「クラスメイトに私たちはいつも屋上にいるよとか、そんな感じで嘘を言ってもらったら比較的楽になるんじゃないかなって」

 まさに名案言わんばかりのドヤ顔に、香凛が諭すように肩に手を置く。

「それを実行するとして、一時的に緩和するかもしれませんが、私たちは隠れていなければなりません。さらに、指定した場所にいないと分かれば、またクラスに戻ってくる可能性があると思いますよ、夏希さん」

「そっか~そうだよね~」

 がっかりする東條さん。

「ま、まあ、東條さんの意見も悪くないと思うよ。そういう香凛は何かあるのか?」

「私ですか? 私は春井君と司がそれぞれの彼女だと公式な見解を示すだけで少しはマシになると思うのですが、どうでしょう?」

「どうしたもこうしたもあるか!! お前は俺たちを殺す気か!?」

「名案だと思うのですが……」

「お前なぁ……。それやると、俺たち二人が標的になって、学校中を駆けずりまわらなきゃいけなくなるだろ。嫉妬に狂った男子生徒に殴られるのは目に見えてるぞ」

「そうですか? 流石に後輩が先輩である司と春井君に手を上げることはないと思うのですけれど」

「先輩もとち狂って参戦しないとも限らないだろ。四人とも安全に、かつ負担の少ない方法を考えようぜ」

「確かにそれは失念していました。申し訳ないです」

「分かればいいんだ。分かれば……」

 危うく俺と颯太の学校生活が紅に染まるところだった。

「颯太は何かいい案ないのか?」

「そうだな……」

 しばし唸った後──

「いっそのこと開き直って、放課後にでも受け取り会でも開いたらどうだ?」

「それはダメです! 絶対にダメです! 何のために私がこうして目立たない方法を模索していると思っているのですか!?」

「ご、ごめんなさい……」

「香凛。今のかなり注目集めてたぞ」

「はぅっ……。春井君が変なことを言うので、つい……。穴があったら入りたい……いや、いっそ掘ってしまおうか……」

「おい、ちょっと待てって」

 テーブルの下に潜ろうとする香凛を引っ張り出し、何とか座りなおさせる。どこまで目立ちたくないんだこいつは。

 と、そこで一ついい案が浮かんだので、みんなに向けて発信してみる。

「どっかにプレゼントボックスを設置しておけばいいんじゃないか?」

「確かにそれはいい考えだ。けどさ、ただ単純に見たいってやつはどうするんだ?」

「それは学校生活送ってれば見れるだろ。その点に関しては生徒指導部に掛け合って、何かしらのペナルティを課せばいいと思うんだけど」

「なるほど。その手があったか」

「それはグッドアイデアだよ秋月君!」

「私たちもあまり苦労しなさそうですし、名案かと」

「じゃあ、明日生徒指導部の先生に話してみて、大丈夫そうならそれを実行するってことで」

「了解!」

「らじゃー!」

「分かりました」

 三人の同意も得られたので、とりあえずの対策案は可決された。効果が出ればいいんだけど。

「何か早く終わったしさ、このまま今日の慰労会ってことで話しない? ほら、お互いのことまだよく知らないし」

「賛成です。これから共に戦う戦友なのですから、信頼関係は作っておいた方が賢明です」

「俺は大歓迎だぜ! 何せ学校で有名人の冬見さんとお近づきになれるんだからな!」

「おいおい……」

 呆れているように見せかけるけれど、机の下ではガッツポーズ。

 いつの間にか俺は東條さんの明るさに惹かれていたらしい。寝ても覚めてもいつも東條さんの笑顔が脳裏に焼き付いて離れないのだ。

 でも、今はまだこのままでいい。まだ新学期は始まったばかりだ。もっと彼女のことを知って、彼女に好かれるような人間にならなくてはいけない。

 なぜなら、もう二度と後悔したくないから。

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